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第59話 ライフラインの『テレフォン』を使いますか?

【≪クロッシーダイク≫さん以下、ランクAの冒険者たちは、3日前にギルドを出発し、ほかギルドと合同でレイドボスに挑んでいるため、現在不在です】


「マジで……」


 完全に終わったー!

 はい、このクエスト詰んだー!


 そもそも無理じゃん!

 絶対クリアできないクエストだったんだー!


 なんなのこれ……?

 ≪ニャンニャン姫≫はわかっていて3番目に≪クロッシーダイク≫さんを選んでいるんだよね? このクエストは絶対にクリアさせないぞってこと? もしかして性格悪い人なの?


【≪アルミちゃん≫、違います】


「何がよー」


【1人につき3時間の捜索ですが、足し合わせると5人分で15時間。全体で言えば半日以上あるんです】


「そうね?」


 2人目クリアのところで消費したのは2時間だけ。残りが4時間。3人目の捜索時間が足されて7時間になったところだったんだから、つまり15時間のうち13時間は残っていたはずだよね。


【≪クロッシーダイク≫さんの居場所自体はギルドメンバーの誰に訊いてもすぐにわかるはずです。レイドボス戦に挑んでいることは周知の事実ですから】


 たしかにそうかも。


【つまりその依頼書には、≪アルミちゃん≫も「レイドボス戦へ向かいなさい」という姫からのメッセージが込められているのではないかと】


 そうかなあ。

 わたしが行っても何もできないのに?

 下手したら即死しちゃうよ?


【あなたは死なないわ。私が守るもの】


 やかましいわ!


「でもまあ、たしかにそうかも……。あと1時間で行ける場所かな……」


 だけど肝心の場所がわかんない。

 今からギルドハウスに戻って誰かに訊くしかないかあ。それだけでもけっこう時間使っちゃうな……。


【ライフラインの『テレフォン』を使いますか?】


「テレフォン?」


【ファイナルアンサー?】


「ファイナルアンサーって、あのクイズ番組⁉ 懐かし過ぎでしょ! わたしが中学生くらいの時のやつだよ!」


【これをどうぞ】


「えっ、何これ……糸電話……?」


 紙コップから糸が伸びていて……ふざけてるの?


【『テレフォン』を使いますか?】


「残り時間的に言って、今遊んでいる場合じゃないんだけどな……」


 すっごい懐かしい話題でおもしろさはあるんだけどさー。

 ふざけるのはちょっと今じゃないよね。


【「テレフォンを使います」と言って、受話器を耳に当ててください】


 あくまでボケ続けるのね……。

 まあいいか。


「わかりました。『テレフォンを使います』……これで良い?」


 右耳に紙コップを当てため息を吐く。

 さすがにもう間に合わないかな……。


【プルループルループルルー。ガチャ】


 コール音を全部口で言っているし。

 ≪サポちゃん≫ったら、紙コップを咥えて……仮眠室のドアを開けてどこに行くの?


「おう。≪アルミちゃん≫に≪サポちゃん≫、こんなところでどうしたんだい? 紙コップ? 俺がこれを持てばいいのか?」


 ≪サポちゃん≫から紙コップを受け取った人物が姿を現した。


「≪アサダ≫さん。こんなところでどうしたんですか⁉」


【待っていました。≪アサダ≫さんはテレフォン要員に選ばれました】


「テレフォン要員ってなんだ? 俺はな、今家族と飯を食いに来ていたんだよ。そしたらお前さんたちのやかましい声が聞こえてきたんで様子を見に来たってわけだ。騒いでいる声が店内に響き渡っていたぞ?」


 それはお恥ずかしい……。

 わたし、そんなに大声出していたかな……。


【わざとです。店内にいるギルド員を呼び寄せるために、寝顔配信の時から音声のボリュームを上げてて反響するようにしておきました】


「なんでそんなことするの……?」


【いびきは聞こえないようにしてあげましたから大丈夫ですよ】


「いびき⁉ そんなの掻くわけないじゃない!」


 レディーに向かっていびきだなんて!

 失礼しちゃうわ!


【失礼。天使の寝息でした】


 言い方変えてもダメ。

 今後寝顔の配信はNGとします!


【『テレフォン』の残り時間がなくなってきました。≪アルミちゃん≫、とっとと訊きたいことを≪アサダ≫さんへどうぞ】


 訊きたいこと……。


「そうだ!≪クロッシーダイク≫さんはどこにいますか? 知っていたら教えてください!」


 同じサブマスなら知っていますよね⁉


「≪ダイ≫なら、3日前から留守だぜ」


「それは知っていますって。だからどこでレイドボス戦をやっているのかなと。できれば具体的な場所を地図で教えてほしいです!」


 お願いお願いお願ーい!


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