【≪アルミちゃん≫早く! こっちです! すでに人用とネコ用の豚肉ステーキ300gずつ、バッチリ注文はしておきましたから、そろそろお料理が出てくる頃かと!】
……300gはだいぶ多くない?
【ライスも必要でしたか?】
いや……うーん。まあそうねー。ステーキにはライスがほしいかなー。
【そう言うと思って小ライスも注文しておきました!】
気が利きすぎていて怖い……。
でもちょっと量が……。
と、その時、メッセージの着信があった。
「あ、きっと次の依頼書だわ」
コンソール画面を開く。
どれどれー。
次はどんな人探しなのかな、と。
----------------------------------
種族 :獣人族(鰐獣人)
性別 :男
年齢 :38
職業 :
所属 :猫の眼ギルド
特徴 :ワニのような顔。
ヒント:すぐかっこつけるのじゃ。
----------------------------------
「これはわかりやすいね。サブマスの≪クロッシーダイク≫さんだよね」
【どうやらそのようですね。3番目でこれはラッキーかもしれません。3時間が追加されて残り7時間ですが、サクッと見つけて次に行けそうですね】
「そうだねー。誰なのかわからないところから始めるよりはずっと楽かな。どこにいるかは、きっとギルドハウスに戻れば誰かが知っているでしょうよ」
【お料理が来ました! 冷めないうちにいただきましょう!】
「……まあ頼んじゃっているのはしかたないね。急いで食べて急いで戻ろう。って、≪サポちゃん≫はネコなのにネコ舌じゃないの? フーフーしようか?」
やけどされても困るし?
【≪アルミちゃん≫がフーフー⁉ それはオプション料金ですか⁉ ケチャップでお絵かきもお願いします!】
「いや……わたしそういうお店の店員さんじゃないし……」
こういう時の≪サポちゃん≫って、なぜか急に≪オーラム≫さん臭がするんだよね……。≪オーラム≫さんってすごくかわいらしい天使の姿だったけれど、今思えばたぶんああいう見た目が好きでやっているんだろうね……。やたらと清楚なキャラクターで行くように指示してくるし。
【≪アルミちゃん≫すごくおいしいですよ! 脂身が少ないのにジューシーで味わい深い……】
「あ、ちょっと! いただきますもしてないのに勝手に!」
それにフーフーは? 喜んでいたわりに、しなくて良かったの? よくわっかんない人だなー。
「ホントだ、おいしい! シャリアピンソースだ。わたし好きなんだー♡」
【そう言うと思って注文しておきました。オプションです】
気が利くね……。
まあ、こういうオプションなら大歓迎かな。
んー、おいしい♡
【おなかいっぱいですね。もうしあわせ過ぎて動けません】
「……おい、コラ」
ネコ!
【何ですか、怖い顔をして】
「腹6分目のネコはどこ行った? 何を当たり前のように昼寝しようとしてるのさ」
【≪アルミちゃん≫、顔が怖いと視聴者が逃げますよ。食事をしたらしばらく横になる。
それはダメでしょ! わたしたちは時限クエストの真っ最中なの! 休憩している時間なんてないんだからね!
【≪アルミちゃん≫はまだブラック体質が抜けないんですか? もっとリラックスして臨みましょうよ。ギチギチに働いても、誰も褒めてはくれませんよ】
ブラック体質って……うーん。そうは言っても時限クエストだしなー。
できるだけ巻きでクリアしたいというか……。
【みんな≪アルミちゃん≫が楽しく配信しているところを見に来ているんですから、もっとかわいい笑顔を見せてくださいよー】
それはわかってるけどー。
でもさすがに昼寝をしている時間はないんじゃないかな……。
【このお店は昼寝用のスペースも無料で貸し出してくれるんですよ。なんと不審者が入らないように鍵のかかる個室です】
それはすごいサービスね。
その分客席にすればもっと稼げるのに、無料でスペースを貸してくれるの?
【もちろんお食事をした人限定ですけどね】
それでもすごいと思う。
【すみませ~ん。昼寝スペースお願いできますか? こっちの≪アルミちゃん≫と私の分で】
「あ、ちょっと勝手に!」
まだ昼寝OKしてないんだけど!
【まあまあ、良いじゃないですか。たまにはこういうのんびり配信をしても罰は当たりませんよ。同時接続数も90000を突破していますし。過去最高ではないですか?】
すごい……。
もうちょっとで10万も見えてきちゃう⁉
≪ニャンニャン姫≫が出演している時でも、90000までは行っていなかったのに。
【グルメは数字を持っていますからね】
まさかそれを計算してお店を渡り歩いて……?
【それもあります】
なんだ。やっぱりただ自分が食べたかっただけか……。
【次は≪アルミちゃん≫のかわいい寝顔配信で10万接続を狙いましょう】
お、おー!
寝顔配信って、結局昼寝する気なの……?