依頼書を開いて改めて確認――。
すると、≪アサダ≫さんと≪クロッシーダイク≫さんも覗き込んでくる。
----------------------------------
種族 :人族
性別 :女
年齢 :16
職業 :
所属 :猫の眼ギルド
特徴 :無口。
ヒント:戦闘マシーンのように見えるが、打ち解けるとかわいらしいのじゃ。
----------------------------------
「こんな感じの人なんですけどー」
2人はもちろん知っていますよね?
「アイツか……」
「アイツだな……」
2人が揃ってめちゃくちゃ渋い顔をしている。
この2人にこんな表情をさせる人っていったい……。
「えっと……ヤバい人……?」
「悪いな、この特別クエストで俺たちができるのは、≪アルミちゃん≫が依頼の人物を推測して、その人物がどこにいるか尋ねてきた時だけなんだ。その人物がどんな人物なのかという質問には答えられない決まりになっている」
≪アサダ≫さんがどこか楽しそうに笑いながらわたしの肩を叩く。
「そういえば受付のお姉さんも似たようなことを言っていたかも……。ギルマス、サブマス、受付のお姉さんが教えちゃうと簡単にクリアできちゃうから、ヒントを与えるのは禁止って」
でも裏を返せば、サブマス以外のほかのギルドメンバーに話を聞ければ良いってことだよね。ここには≪クロッシーダイク≫さん以外の『猫の眼』ギルドのメンバーがいるはず!
「じゃあ質問を変えます。ここにいる『猫の眼』ギルドのメンバーを紹介してください!」
「良いだろう。ついてきなさい」
≪クロッシーダイク≫さんは頷くと、いくつかできている冒険者の輪のうちの1つに近づいていく。
「みんな、改めて紹介しよう。我がギルド期待の新人、『
≪クロッシーダイク≫さんの声に反応し、小さな輪がほどけ、私のほうに視線を向けてきた。
「よ、よろしくお願いします!≪アルミちゃん≫と言います! 高評価とチャンネル登録よろしくー♪」
輪を作っていたのは3人。
口々に、「姫に言われてもう登録しているよ」「実物もかわいいわね♡」「昼寝配信見たかったデス」とすでに歓迎ムードが漂っている、かもしれない?
でも誰が誰なのやら。
ランクAの冒険者だし、『猫の眼』ギルドの中では有名な人たちなんだろうけども。
「おいおい、≪アルミちゃん≫が困っているだろ。お前たちもちゃんと自己紹介しろよ?」
と、≪アサダ≫さんが助け舟を出してくれた。
「これは失礼。ボクは『
右手を差し出し握手を求めてくる。
声が渋い……。
見た目あどけなさの残るかわいらしい容姿なのに、声だけめっちゃ渋い……。
「よ、よろしくお願いします!」
さすが前衛職! 握手の力も強い!
【ああっ! 握手はご遠慮ください……】
≪サポちゃん≫たら、すっかりアイドルのマネージャー気取りなんだから♪
それにしても『
「キョロキョロしてどうしたの?」
「えっと、ドラゴンはどこかなーって」
「ドラゴン? アハハハハ。ごめんごめん、そうだよね、ドラゴン……アハハハハ」
≪ライノット≫さんが急に笑い出す。
わたし、何かおかしなこと言いました……?
「そんなに笑ったら失礼でしょ。新人ちゃんなんだから、ちゃんと説明してあげないとわからないわよ? 私は『
≪ライノット≫さんのことをゴツイ杖で後ろから小突いている、魔職のお姉さん。黒いローブなのに胸元がざっくり割れていて、とってもセクシー……。目元の泣き黒子も相まって、なんかちょっとエロい雰囲気……。
「『
「素直でかわいい♡ 次の戦闘の時は私もギフト贈るわねん♪」
「それは助かります! 応援お願いします!」
やったね、これで視聴者を1人ゲットだ♪
「ワタシは『
少し訛りのあるしゃべり方をする女性。小さく頭を下げると、腰まで伸ばした銀色の髪が揺れ、ライトを反射してキラキラと輝いた。
「うぉー! ありがとうございます!『
地味な顔立ちでたどたどしい口調とは裏腹に……胸部の主張が激しいっ!
すごく! すごく胸が大きいデス!
まさか、≪メグ姉≫を超える逸材がこんなすぐそばにいるなんて!≪リルちゃん≫の妖艶なセクシーさとは違う、素材だけで暴力的に殴ってくる感じ……すごい……。
「≪アルミちゃん≫、見過ぎよん♡ でもそうよね~、≪サリー≫のおっぱいは男女問わず吸い寄せられちゃうのも仕方ないわ♡ こんなふうに~」
≪リルちゃん≫が自分の顔を≪サリー≫さんの胸に埋めていく。
す、すごい……顔が跳ねている! なんて弾力なの……。
「ちょっと、≪リルちゃん≫! 人前ではやめてって言っているデス!」
≪サリー≫さんが顔を真っ赤にして目をつぶる。だけど引き剥がすでもなく、ただ受け入れて――2人はそういう関係⁉
「あの~、ボクの『
取り残された≪ライノット≫さん。
やれやれ、と無言で首を振る≪クロッシーダイク≫さんと≪アサダ≫さん。
どうやら『猫の眼』ギルドではおなじみの一幕、と言ったところなのかもしれない?