何度目かのスイッチ。
スピアスタブによる攻撃を加えていた時だった。
「範囲攻撃、来るぞ! 防御態勢!」
≪クロッシーダイク≫さんが叫ぶ。
自分の巨大盾の下に入れという指示だ。
わたしと≪アサダ≫さんは攻撃を中止し、慌てて≪クロッシーダイク≫さんの大盾の下に滑り込む。
【緊急回避を申請します。承認。『Wish List SP』をアンロック】
アークデーモンの咆哮。
魔力が高まり、その頭上に巨大なファイヤーボールが作り出される。
これはヤバいやつー!
【『Wish List SP』選択――マジックレジスト】
「マジックレジスト⁉『
マジックレジストって、『
【緊急回避用の特別スキルです。使用してください】
特別! そういうのもあるんだ⁉
「マジックレジスト!」
アークデーモンのファイヤーボールが放たれた瞬間、≪クロッシーダイク≫さん、≪アサダ≫さんまでを覆うようにして、マジックレジストが展開される。
おお、ホントに使えた!
「おお、≪アルミちゃん≫なかなかやるな!」
「マジックレジスト助かった。これならすぐに立て直せるな!」
2人が手放しに喜んでいる。
“<≪アルミちゃん≫やるのぉ。追加のギフトなのじゃ[@ギフト・2人掛けのソファが10個贈られました]>”
“ギリギリの戦いは盛り上がるな~”
“3人でレイドボスは熱い!”
“騎士でマジックレジスト使えるのは掟破りw”
“ストリーマーいいじゃん”
“<すてきです>”
“<ファンになりました>”
“<おうえんしています[@ギフト・スターが10個贈られました]>”
今のわたしは『
「≪アルミちゃん≫、ぼうっとするな! スイッチ!」
「は、はい!」
またチクチク攻撃しなきゃ!
「スピアクイッケン! からのーーースピアスタブ! スピアスタブ! スピアスタブ!」
「ハッハッハ! 火炎瓶ならいくらでもあるぞ! それそれ~!」
≪アサダ≫さんもノリノリだ!
細かいことを考えても仕方ないよね! ランクが低くてもがんばれるってところを見せよう!
それから5度のファイヤーボールを回避し、スピアスタブでのチクチク攻撃を繰り返した時だった。
3回連続でアークデーモンが咆哮する。
これは――。
「最後の攻撃パターンチェンジだ! いよいよ終わりは近いぞ! 気を引き締めていけ!」
≪クロッシーダイク≫さんが盾を握り直す。
と、その時だった。
【攻撃、来ます。≪アルミちゃん≫、避けてください!】
「えっ?」
完全にタイミングを外された一撃。
わたしは反応が遅れてしまった。
まさかの溜めなしで放たれたファイヤアローが目の前に迫っていた。
あ、これダメなやつだ――。
当たれば即死。
そしてどう考えてももう回避不可能なタイミング――。
ごめんね。みんなたくさん応援してくれたのに、わたしの冒険はここまでのようだよ。
≪アルミちゃん≫の次回作にご期待ください。
覚悟を決めて目をつぶる。
あれ?
わたし、気絶を通り越して即死しちゃった?
衝撃も痛みもなく、そのまま異世界転生しちゃうのかな?
「あああ……≪アルミちゃん≫……無事……か」
恐る恐る片目を開けると、目の前は真っ暗だった。
やっぱりわたしは死んだのね。
って違う!
≪アサダ≫さんが、わたしの目の前で両手を広げるようにして立っていた。
「≪アサダ≫さん?」
「無事か……それなら……良いんだ……」
まさかわたしの身代わりになってファイヤアローを⁉
「なんでこんなことを!」
「お前な……。サブマスがルーキー1人守れなかったら……一生笑われるだろ……」
めちゃくちゃ辛そうだ。
≪アサダ≫さんの防御性能で、マジックレジストもなしにあのファイヤーアローを受けたら……。
「『確率回避ポーション』は⁉」
「どうやら10%の女神は……俺には……微笑んでくれなかったらしい……」
そんな……。
「≪アサダ≫!」
≪クロッシーダイク≫さんが走り寄ってきて、膝から崩れ落ちる≪アサダ≫さんをなんとか抱き留める。
「≪ダイ≫……あとは……頼む……」
「もうしゃべるな……。非戦闘職が無茶しやがって……。言われなくても敵は取ってやる……」
気を失った≪アサダ≫さんを地面に寝かせ、≪クロッシーダイク≫さんが立ち上がった。