さてさて、5人目の依頼書の内容は――。
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種族 :元猫獣人じゃ。
性別 :今でも女なのかのぉ。
年齢 :1000は優に超えておるのじゃ。
職業 :一応、『
所属 :『猫の眼』ギルドのギルドマスターじゃ。
特徴 :普通の妖じゃ。
ヒント:わらわがどこにいるのか見つけるのが最後の依頼じゃ。
そこにいる≪セリー≫と一緒に探すのじゃ。
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「何これ……」
まさかね、こう来るとは思いませんでしたよ……。
「どう見てもこれ、ギルマスのことよね……」
依頼書を覗き込んだ≪セリー≫さんが言う。
「ですね。『ギルドマスターじゃ』ってはっきり書いちゃっているので……」
これまでの4人とは、依頼書の系統が違う。
【最後の依頼は、「誰」の部分ではなく、「どこにいるか」の部分にフォーカスされていますね】
「そうだね。5人目だし、相当難しい場所に隠れているってことなのかな……」
果たして、たった2時間半くらいで見つけられるのか……。
ある程度見当をつけて動かないと厳しそうだよね。
ヒントはないかなあ。
「依頼書には≪セリー≫さんと一緒に探すように書いてありますね。≪ニャンニャン姫≫の居場所に、何か心当たりがありますか?」
≪セリー≫さんに頼るしかなさそうだよね。
最後の依頼の同行者に選ばれたってことは、≪ニャンニャン姫≫と仲良しだったりするのかな? 人付き合いが苦手な≪セリー≫さんと、誰でも手のひらの上で転がしていそうな≪ニャンニャン姫≫。どんな関係性ないのかさっぱり見当もつかないけれど。
「知らないわよ……。ギルマスとなんて、ほとんどしゃべったこともないし……」
渋い表情を浮かべる。
「そんな……。≪セリー≫さんがわからないとすると、どうやって探せば……」
いきなり当てが外れてしまった。
普段の2人にはまったく接点がない。
これはかなりマズい状況かもしれないね……。
んー、控えめに言って詰んだ?
【まずは≪アルミちゃん≫と≪セリー≫さんそれぞれが、姫について持っている情報を出し合って、現状確認してみてはいかがでしょうか】
「なるほど! そうしましょう!」
≪サポちゃん≫ナイスアドバイス!
「まずはわたしが持っている情報……。≪ニャンニャン姫≫とは今日の昼間に顔を合わせてー、特別クエストを依頼されたんだよね。5人分の依頼をクリアできたら、≪ニャンニャン姫≫の秘密や故郷のことを教えてもらえることになっているの」
4人までは何とかクリアして、あと1人!
ここまでがんばったんだし、絶対クリアしたい!
「私が知っているのは、ギルマスは月の半分くらいは外に出ていてこの街にはいないってことかしら。この街にいる時は、大抵ギルマスの執務室に籠って何かやっているってことくらいしか知らないわ」
んー、わたしが知っていることと大して変わりない……。
「どこに住んでいるとか、そういうのってわかったりしませんか?」
「知らないわ」
きっぱり。
使えねー!
と叫びたくなったけれど、わたしは大人なのでそういうことは言わないでおきますよ?
「さすがに深夜の時間に執務室にいるとは思えないですけど……とりあえず行ってみますか」
ほかに思い当たる場所があるわけでもないし。
意外と残業していたりする可能性も?
わたしと≪セリー≫さんは連れ立って、静まり返った深夜のギルドハウスの中を歩いて移動する。
ギルドハウス全体が石造りで建てられているので、夜はなんだか冷たい印象を受けるね。壁に触ってみると、実際ひんやりしているし。
ところで、≪セリー≫さん、どうしたんですか? わたしの背中にぴったりくっついちゃったりして。
「≪セリー≫さん……怖いんですか?」
さすがにそれはないですよね。≪サポちゃん≫のライトに照らされていて昼間並みに明るいし。
「あああ、あんたがついてこいっていうから!」
震える声。
まさかホントに怖いの?
「あんたじゃありませんってばー。≪アルミちゃん≫ですよ」
いい加減名前くらい覚えてくださいよね?
「≪アルミちゃん≫がついてこいって言ったんでしょ! だからこうしてついてきてあげているんだから、感謝しなさいよねっ!」
ついてきてとは言いましたけど、背中に張り付いてという意味では……。まあ、わかりました。怖いんですね。普通にアンデッドとかゴーストとかがいる世界なのに、何を怖がっているのか……。
でも美少女に頼られるのは悪い気はしないのでヨシ!
このことを貸しとして、今後の関係を有利に持ち込めば……。
【リル×サリにあてられたんですか? 百合展開は……思いのほか視聴者のみなさんの反応が良さそうですね。ある程度までは許可します】
リル×サリって……。
あの人たち、どこまでの関係なの……。
でも百合はニヤニヤしながら観察するものであって、自分が当事者になるのはちょっと……。