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第87話 やだ……来ないで……ママ!

「≪セリー≫さんの立ち回りが未熟すぎるから、早く『大司教アークビショップ』のお母さんくらいの立ち回りができるようになってくれ、って意味です!」


 このままだとヤバいですよ⁉


「ガーン」


 ≪セリー≫さんは、わたしの言葉によほどショックを受けたのか、一瞬足元がふらついてよろめいてしまった。だけどなんとか握っていた杖に寄り掛かり、床に倒れ込まずには済んだ模様。


 そういえば、≪セリー≫さんについて尋ねた時、≪ライノット≫さんが持って回ったような言い方をしたのも繋がってくるなあ。


高位神官ハイプリースト』として……一生懸命がんばっているとは思うよ。


 一生懸命がんばっている、ねぇ……。

 ≪ライノット≫さんはたぶん人の陰口とか言わなそうな人だし。≪セリー≫さんの良いところを伝えようとしてくれたんだろうね。これは地雷濃厚だわ……。


「そうですねー。わたし、『大司教アークビショップ』のスキルはわからないので教えられませんけど、『高位神官ハイプリースト』の立ち回りなら多少覚えがありますからね。『高位神官ハイプリースト』の先輩として、少し指導してあげましょうか!」


「ちょっとそれは……自分で試行錯誤してみるわ……。ありがとうね、じゃあおやすみなさい」


 再び部屋に逃げ込もうとする引きこもりさん。

 だけど、わたしは≪セリー≫さんの部屋に自由に出入りできる身分なわけで。


「そんな遠慮しないでくださいよー。タダで教えてあげますって♪」


「ちょっと! なんで勝手に部屋に入ってきているの⁉ 鍵は掛けたはず⁉」


 いくら調べても、部屋の鍵は壊れていませんよ。

 わたしもこの部屋の認証パスをもらっているだけですから、何もおかしいことはないのですよ?


「やめて……近寄らないで……」


「なんでですかー。仲良くしましょうよ?」


 恐怖するそのお顔もかわいいですね……ふふふ。

 ちょっと視聴者サービスに、そのシーツみたいなスカートでも捲ってみましょうかね?


「やだ……来ないで……ママ!」


 半泣き状態の≪セリー≫さん。

 いくら泣いても≪サリー≫さんは助けに来ませんよ? わたし、≪サリー≫さんにも頼まれていますからね?


【≪アルミちゃん≫、冗談もそれくらいにしておかないと、クエストの時間がなくなりますよ。そろそろ5人目を】


「おっとそれはまずい。残り時間はどれくらい?」


 ≪セリー≫さんで遊ぶのは、とりあえずこれくらいにしておきましょうか。


【残り時間は、2時間30分です】


「OKOK。まだ余裕がありそう。ウェーイ! ちょっと眠気も消えてきたし、深夜のテンションになってきたー! イエイイエイ♪ アゲー♪」


「……急になに?」


 ≪セリー≫さんが部屋の隅っこで震えながらこっちの様子を伺ってくる。

 ホントかわいいな、この人。

 お隣さんだし、これから毎日無断で遊びに来ようっと♪


【≪アルミちゃん≫は、SとMの使い分けが秀逸ですね】


「どういうことよ……。わたし、そんな趣味ないよ?」


 ノーマルよ、ノーマル!


【≪アルミちゃん≫が本棚の後ろに隠していた同人誌のタイトルを1つずつ読み上げて行っても良いんですよ?】


 大変申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!

 わたしが悪かったですぅぅぅぅ!

 このチャンネル諸共消えていなくなりたくはないので、それだけは勘弁していただけないでしょうか……。


【ちなみに、あのどぎつい百合モノの同人誌はどちらの女の子に感情移入して読んでいたんですか?】


 どぎついって……。

 ≪サポちゃん≫が言っているのが、どれのことかは存じ上げませんが、ノーコメントでお願いします。


【ここで追及しても、アカウント凍結のリスクでしかないので、プライベートでお聞きすることにしましょう。あとで鬼畜BLモノについても教えてくださいね。それではクエストに戻るということで、5人目――最後の依頼書の内容を確認してください】


「≪サポちゃん≫が怖い……。一生プライベートな時間なんて来なければ良いのに……。はいはい、そんなに睨まなくて依頼書を見ますって。さーて、最後の人はどんな人かなー。あ、せっかくなので≪セリー≫さんもご一緒にー」


 どうせこの後、5人目の人物についてのヒントを訊くことになりますから、一緒に目を通してくださいね。時短時短。


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 種族 :元猫獣人じゃ。

 性別 :今でも女なのかのぉ。

 年齢 :1000は優に超えておるのじゃ。

 職業 :一応、『調教師テイマー』じゃ。レベルという概念はないのぉ。

 所属 :『猫の眼』ギルドのギルドマスターじゃ。

 特徴 :普通の妖じゃ。

 ヒント:わらわがどこにいるのか見つけるのが最後の依頼じゃ。

     そこにいる≪セリー≫と一緒に探すのじゃ。

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「何これ……」


 まさかね、こう来るとは思いませんでしたよ……。



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