目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第81話 ≪サポちゃん≫すごーい! これがあれば夜のクエストもばっちりだね!

 ≪クロッシーダイク≫さん以下、レイドボスに挑んでいたみなさんは、まだダンジョン解体の残務処理があるとのことだったので、わたしと≪サポちゃん≫だけ先に失礼して街に向かってダッシュ中。


 時刻は間もなく0時。

 ド深夜ですね。


 ちなみにわたしはライティングの魔法を使えないので、≪サポちゃん≫に辺りを照らしてもらって走っていまーす。撮影用の照明なのかな?≪サポちゃん≫って何でも持っているねー。


【残り時間は45分です】


 いっそげー!

 って言っても、10分もあれば街に戻れるからよゆーよゆー♪


【フラグですか? そこの分かれ道を右に入れば、オーラムオンラインでもおなじみの『謎の積み石』がある場所ですよ。追加クエストを受注していきますか?】


「さすがに今そのクエストをやっている暇はないので……」


 またの機会にね?

『謎の積み石』のクエストでは、特殊な共通スキルの『石積み』スキルを手に入れられるから、レベルが低いうちにやっておくのは悪くないよね。なんだかんだいって汎用性のあるスキルだから、レベルが上がっても重宝するし。



* * *


「はい、ただいま帰還しましたーと」


 何のフラグも発生せず、ちゃんと『ウルティムス』の街に帰って来れましたよーと。


【配信的には盛り上がりゼロでしたね】


「手厳しいなあ。でもここまでだいぶがんばったと思うんだけど? なんて言ったって、わたしの一撃でアークデーモンを倒したんだからね?」


 レベル1のわたしが、レベル150のレイドボスを倒したんですよ? わりと配信的には取れ高十分なのでは⁉


【それはもう過去の出来事です。私たちは常に前を向いて走り続けなければいけません。目指せ、同時接続数1兆】


 それは目標が高すぎますよ……。

 せめてもうちょっと現実的な数値で……。


【銀河レベルで面を押さえていければあっという間ですよ】


 何そのざっくりした感じ……。

 今の視聴者数が1万だ10万だって言っているのに、いきなり地球のスケールを超えちゃってるじゃないの。


【地球? それはどちらのことでしたか?】


 何そのボケ?

 ≪サポちゃん≫って時々よくわからない……。


 なんかニコニコ笑っているし。

 変なの。



* * *


「さてさて、ギルドハウスに帰ってきましたよー。お姉さんただいまー! って不在かあ」


 元気よく挨拶してみたけれど、受付のお姉さんは受付にはいなかった。

 まあさすがにもう夜遅いし業務時間外だよね。

 あー、もうあとちょっとで0時回っちゃう?

 家に帰ってきたと思ったら、ホッとして急に眠くなってきた……。でもまだ4つ目の依頼の途中だし……。


【≪アルミちゃん≫、すでに寝ている方もいらっしゃるでしょうから、少し声のトーンを落としていきましょう。迷惑系配信者にはならないでほしいです】


「はいはい、気をつけましょうー。常識の鬼と言われた≪アルミちゃん≫ですからね。非常識な行動で積み上げてきた信用を失うわけにはいきません!」


 抜き足差し足で≪セリー≫さんのお部屋に向かいますよー。

 ってわたしの隣の部屋だけどね。



「到着! とくにトラブルもなし! ヨシ!」


【そろそろハプニングをお願いします。同時接続数も50000を切ってきました】


 ハプニングって……。まあ夜中だし、視聴者が減るのも仕方ないのでは……。


【アークデーモン討伐を超えるインパクトをお願いします】


「ギルドハウスの中で⁉ 何したらそんなインパクト出せるのさ……」


 時々無茶な要求してくるよね。


【それではライトをオフにします。ここからは暗視カメラでお届けしますので、そっと≪セリー≫さんの部屋に忍び込んでください】


「えっ、そういう感じで行くの? 普通にドアをノックしたら良いんじゃない?」


【≪セリー≫さんはどうせ引きこもりですし、居留守を使われるだけでしょう。ノックしても出てきませんよ】


「どうせ引きこもりって言うなし……」


 もしかしたら気分が変わって……まあないか。


【あとは≪リルちゃん≫のアドバイス通りに≪セリー≫さんを押し倒して、動けなくしたところで本人確認を行ってください】


「それ……大丈夫な映像になる? 普通に犯罪臭いんだけど……」


【肉親がOKしているのでセーフです!】


「ホントにぃ?」


【それではライトオフ】


 ≪サポちゃん≫がライトの電源をすべて切り、辺りは真っ暗闇に包まれた。


「ちょっと待って?」


【なんですか。もうクエスト終了まで時間がありませんよ】


「いや……真っ暗で何にも見えないんだけど」


【≪アルミちゃん≫は暗視のスキルを持っていませんでしたね。失礼しました】


 そんなの人族は誰も持っていませんよ?


【こちらを使用してください。撮影用のカメラに搭載されているのと同じタイプの『暗視スコープ』です】


 ゴツいヘルメット……。

 ああ、これがメガネね?


「おおー! 見えるようになった! この『暗視スコープ』ってすごいね。赤外線カメラみたいに、なんかぼんやりとしか見えないのかと思ったら、色もはっきり見えるんだ! まるで昼間みたい!」


【≪サポちゃん≫が作成した特別製ですから】


「≪サポちゃん≫すごーい! これがあれば夜のクエストもばっちりだね!」


【しかし1点だけ注意してください。周りに光源が認められた場合にはすぐに電源を切ってください】


「光源? ああ、光ってことね。電源を切らないとどうなるの?」


【網膜が焼ききれて目が潰れます】


「こわっ!」


【実際には網膜が焼ききれないように、即時痛覚とダメージはカットしますが、一定時間は視覚が失われた状態になるため、戦闘中に使用する際には十分に注意してくださいね】


「はーい」


 まあ、今は戦闘じゃないし平気でしょう。


【では改めて突入しましょう】


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?