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第80話 ≪アルミちゃん≫の婚期が遅れている最大の理由は――

【人の性的嗜好はそれぞれですから】


 AIプログラムなのに知ったようなことを言うじゃん?


【あらゆるデータパターンを集めていますから、≪アルミちゃん≫よりは詳しいと思いますよ】


 ふーん?

 じゃあ、これから会いに行く≪セリー≫さんと打ち解けるにはどうしたら良いの?


【それは≪リルちゃん≫に訊いたほうが早いのではないでしょうか】


 なんだよー。教えてくれないんじゃん。ケチー。

 でもまあいっか。≪セリー≫さんとパジャマパーティーをするくらいだし、≪リルちゃん≫のほうが詳しそうね。



「たぶんクエストの残り時間があと1時間くらいしかないだろうし、わたしそろそろ≪セリー≫さんに会いに行こうかなーって思います。みなさんは≪セリー≫さんがどこにいるかわかりますか?」


【残り時間は55分です】


 1時間切ってたわ。

 ずいぶん長いこと話し込んでしまっていたのね……。


「ギルドハウスにいると思いマス」


「ギルドハウスよね♡」


「ギルドハウスだな」


 3人の答えが完全に一致!

 じゃあギルドハウスだね!


「≪セリー≫は引きこもりなので、クエストと狩り以外でギルドの外に出ることはないデス」


「なるほど……」


 人嫌いもそこまで行ってしまわれているんですね……。

 いきなり訪ねて行って会ってくれるかが心配になってきた……。

 残り55分で打ち解ける自信がないよ……。


「えっと……クエスト達成のためには、この依頼書を本人に見せて、『これは自分のことだ』って感じに本人確認の会話をしないといけないんですけど……」


 どうしたら良いですかね?


「≪セリー≫ちゃんの攻略は簡単よ♡」


 自信ありげな≪リルちゃん≫。

 その攻略法を教えてください!


「≪セリー≫ちゃんは押しにものすご~く弱いから、押し倒しちゃえばいいの♡ こんなふうにね♡」


 強烈なタックルからの激しい揉みしだき。

 地面に倒れ込んだまま、されるがまま状態の≪サリー≫さん。


「≪メリル≫、こんなところで……やめるのデス」


 口では多少抵抗しているような素振りを見せるものの、体は……こんな映像を流したらBANされるのでは?


【モザイクが掛かっていますから大丈夫です】


 それ、大丈夫なの……?

 逆にエロくない?


【その辺りのさじ加減は≪サポちゃん≫にお任せください】


 うん。

 まあ……任せるけど。


 あとでモザイクなしverの切り抜き動画をちょうだいね!


【高級ネコ缶1つ】


 このネコ……ここぞとばかりに賄賂を要求してきやがる……。


 わかりました。それくらいなら良いでしょう!


【交渉成立ですね。それにしても≪アルミちゃん≫の性的嗜好は幅が広いですね】


 ……なんのこと、かな?


【BLもGLもNLもいけますし、おねショタ――】


 ストップだ!

 さすがにわたしでもそれ以上言うと泣くよ?

 そういうのは知らない振りをすることも大事なんじゃないかな?


【人の性的嗜好はそれぞれですから】


 そう、それ!

 みんな違ってみんな良い!


【ずっと変わらない≪アルミちゃん≫でいてくださいね】


 どういう意味よ……。


【≪アルミちゃん≫の婚期が遅れている最大の理由は、性的嗜好が取っ散らかっているせいですから】


 ホントどういう意味……?


【言葉の通りですよ。好きのアンテナが広く浅く全方位に向いていて、良く言えば好奇心旺盛。悪く言えば熱しやすく冷めやすい。毎クール変わる俺の嫁】


 ぐぬぬ……。

 否定できない……。


【人を愛するということは、狭く深く、その人のことだけを考える必要がありますから、それをしない≪アルミちゃん≫に婚期が訪れる可能性はとても低いということになりますね】


 なんかすっごく正しいっぽい……。

 わたしに恋人ができないのって、わたしがかわいくないからじゃなくて、わたしの性格に問題があったってことなの……。


【もちろんそれも大きな要因の1つですが、相手側にも問題はあります。その辺りも≪サポちゃん≫にすべてお任せください。ちなみに一次面接通過者は今のところ0人です】


 一次面接?


【≪アルミちゃん≫にふさわしいスペックを持っているのか、遊びではなく本気なのかなど、多角的に調査を行い、良き人物がいればしっかりと後押しをする所存です】


 何を言っているのかちょっとよくわからないです。


【これまでもこれからも、≪アルミちゃん≫のサポートは、すべてこの≪サポちゃん≫にお任せください】


 う、うん? よろしくね?


【はい、お任せください】



「これでよ~し!≪アルミちゃん≫が≪セリー≫ちゃんのお部屋に出入りできるように、認証パスを書き換えておいたからもう安心だよ~♡」


「と言いますと?」


「引きこもりの部屋にノックせずに入って~、あとは強引に押し倒しちゃえばOK♡」


 えっと……それで良いの?


「≪セリー≫のことをよろしくお願いしマス」


 お母さんからもお願いされちゃった……。


「≪セリー≫は少し難しい子だと思うけど、がんばって打ち解けてね。≪アルミちゃん≫ならできるさ!」


 すっごい良い笑顔だけど、≪ライノット≫さんは打ち解けられていない側の人でしょ。


「いろいろありがとうございます。ところで……≪セリー≫さんのお部屋番号はどこですかね?」


 わりともう時間がないので、ダッシュで部屋に向かいたいのですが。


「言ってなかった?≪アルミちゃん≫のお隣さんだよ~♡」


 マジですか。

 何度引っ越しのご挨拶に行っても、ずっと留守だと思っていたお隣さん……。


 つまり、≪セリー≫さんはいつも部屋の中にいたってこと?


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