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第92話 折りたたんだ紙を手で千切ったように見えますね。千切り取られた側の紙はどこにあるのでしょうか?

「あ、あれ……これなんだろう?」


 ≪ニャンニャン姫≫の机の下に落ちていた紙の切れ端を手に取ってみる。

 何も書いていないし、ただのゴミのようにも見えるけれど……。


「なんか変な破り方がされている気がする……」


 わざわざ何回もジグザグに切って……。


「もしかして、星の形?」


 六角形のように見えるし、星のようにも見える。

 でもメモ帳を無造作に破ったにしては複雑すぎる。ハサミのような刃物ではなくて、わざわざ手で千切ったような断面だ。


「お姉さま、何か見つけたの?」


 ≪セリー≫さんが近寄ってくる。


 ナチュラルに『お姉さま』呼び……。まあかわいい子に懐かれる分には悪い気はしないので良いですよ?


「うん、なんか変な紙を見つけた。≪サポちゃん≫もこれを見て」


 アップで撮影して視聴者のみんなにも共有しよう。


「何も書いてないわね……」


 ≪セリー≫さんが紙切れを手に取り、ひっくり返したり、ライトに向かってかざしたりして注意深く観察している。


「うん、そうなんだけど……なんでこんなふうに千切ってあるのかなって」


「そう言われると確かに変かもしれないわね……」


「ねー。違和感はあるよね。でもそれ以上の何かは……」


 なんか変だなーってだけで、「これが手がかりだ!」みたいに断言できるものでもないんだよね。ほかに何かないかなー。


【折りたたんだ紙を手で千切ったように見えますね。千切り取られた側の紙はどこにあるのでしょうか?】


「千切り取られた側?」


 ≪サポちゃん≫は何を言っているんだろう。


【この紙にはうっすらと折り目があります。それに沿って折り直してみてください】


「ただクシャクシャに破られたわけじゃないってことね。はいはい、折り紙みたいな感じかな」


 折り目に沿って畳まれた紙を見てなんとなくわかってきた。


「そういうことかー。これってもともと正方形の紙だったのを、4つ折りにして真ん中のところをジグザグに切り取ったものなんだね。切り絵みたいなものだわ。とすると、さっき≪サポちゃん≫が言っていた切り取られた側があるっていうのは頷けるね」


 ゴミ箱の中とか?

 んー、ゴミ箱の中には何も入ってない。きれいに掃除されているね。


「ねぇ、ちょっと~。その紙の反対側ってこれ~?」


 ≪セリー≫さんが部屋の隅っこのほうで大声で呼びかけてくる。

 手に持っているのは小さな紙切れ。


「見せて見せてー」


 机から離れ、≪セリーさん≫のほうへと走り寄る。

 ≪セリー≫さんもこっちへ走ってきたので、ちょうど中間地点で落ち合い、紙切れを確認させてもらった。


 正方形の紙。

 大きな星型のような六角形のような穴が開いている。

 白い部分をくり抜いて、パンの耳だけになった食パンみたいにな形だった。


「うん、断面が一致する。あっちの机の下にあった紙は、ここから切り取られたものだわ」


「何かのヒントかしらね?」


 ≪セリー≫さんが首をひねる。


「わからないねー。断面を合わせたら普通に1枚の紙になるけど……外側の紙にも何も書いてないし、紙の形からは何も読み取れないし……」


 なんだろうなあ。

 何かありそうなのに何もわからない……。


【なぜ1枚の紙が、部屋のまったく違う場所から発見されたのでしょうか?】


 ≪サポちゃん≫の問いかけ。


「それは確かに違和感……。≪セリー≫さん、この紙ってどこにありました?」


「あっちよ。そういえばさっき、お椀型の盃を持ち上げた時に、その下にあったのを思い出したの」


 盃の下……。


「もしかして、盃の下に隠してあったってこと?」


「隠してあった……? さあ、そこまではわからないわ」


 眉根を寄せて首を振る。


「その盃も調べてみたいな。どれですか?」


 そこら中にいっぱい盃が散らかっていてよくわからない……。


「もう片付けちゃったわよ。えーとたしか……25番だったかしら」


 棚のほうに歩き出して――。


「25番って何ですか?」


「盃の番号よ? 棚のほうにも番号が振られているから、そこに片づけているだけ~」


「えっ、そうなんですか⁉」


 適当に片づけていたわけじゃなくて、それぞれ決まった収納場所があるってこと?

 それは知らなかった。


 試しに床に落ちている銀のお皿を持ち上げてみる。


 あー、ホントだ。

 294番。

 裏に小さな伏せんが張ってあったわ。


 棚のほうの294番は……ここね。

 なるほど。

 つまりここに落ちている宝飾品たちは、きちんと管理されているものだ、と。


「25番のあったわ。これよ」


 ≪セリー≫さんが25番のお椀型の盃を持って戻ってきた。

 この盃のほうには何も違和感はなさそう。


 ということは棚のほうに何か――。


「あった」


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