「さっきから何よ? 私のことをチラチラ見たりして。ニヤニヤしたりため息吐いたり……文句あるなら直接言いなさいよ」
はい、≪セリー≫さん、ケンカ腰ー。
見た目の美しさも相まって、相当苦労しているんだろうね。
「文句は別にー。≪セリー≫さんは美人だなーって」
「ママのほうがずっと美人よ」
無感情に。
ホントにそう思っているんだろうな。
ひどく自己評価が低い。
「ほら、すぐに≪サリー≫さんと比較するー。まずは自分でお母さんと比較して勝手に落ち込むくせをやめないとダメですよ?」
自分の良さを伸ばしていかないとね?
≪セリー≫さんにだって、お母さんに勝てるところはあるはずですよ?
たとえばなんだろう……。
「うん……そう、よね……」
「んー、比較と言えばですけど、≪セリー≫さん、胸のサイズは遺伝しなかったんですね」
さっき背中にピッタリ密着したけれど、弾力的にはあんまりな感じだったし。まあ、まったくないわけじゃないけれど、微妙なサイズですよねー。
「あれ? 急に立ち止まったりしてどうしました?」
「う……」
「う?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
ちょっ! まさかのガチ泣き⁉
「ひどい~~~~~~~! 自分だって小さいくせに~~~~~~~~!」
もしかしてめっちゃ気にしていたんですか⁉
なんかごめんなさい……。
「いや、わたしは……自分でこういうデザインに……」
清楚な感じが良いなって思っていたので胸のサイズはあえて控えめにしているんですよ? まあリアルなわたしのボディも別に取り立てて大きくはないですけれども、さすがにもうちょっとはありますよ?
「私だってママみたいになりたいよ~~~~~~~~~! ママ~~~~~~~~~~!」
「ほら、≪セリー≫さんはまだ16歳ですし、これから成長を……」
身長とは違って、20歳超えてから急に大きくなる人もわりといますから、 望みは捨てたらダメですよ。遺伝的なポテンシャルはあるわけですし?
「ママ~~~~~~~~!」
どうしよう、手が付けられない……。
≪サポちゃん≫何とかして……。
【問題ありません。周辺にお住いのみなさんにご迷惑が掛からないように、特殊な吸音マイクで周囲に音が漏れにくくしてあります】
いや、そういうことではなく。
【配信のほうも絶好調です。姫から大量のギフトをいただいておりますし、≪サリー≫さん、≪リルちゃん≫もとても楽しんでくださっています】
そういうことでもなく。
って、みんな配信見ているんだ。そりゃ見ているか……。
≪サリー≫さん、娘の痴態が配信で晒されているんですが、それはOKなんですかね? 娘が「自分の胸のサイズが小さい」って泣き叫ぶ様子を楽しめる親の感覚はわからないな……。
「えーと、≪セリー≫さん? あとでわたしの国に伝わるバストアップ法を伝授しましょうか?」
さすがに配信には乗せられないからプライベートでね。
お隣さんだし、それくらいの近所付き合いは合っても悪くないかなー。
「ホント……?」
「はい、ホント。リンパのマッサージとか、食べ物も教えますよ」
≪セリー≫さんはそもそも痩せすぎなのが原因じゃないかなー。
基本的なことを忘れがちですけど、胸は脂肪ですからね。体に脂肪がないのに、バストサイズがアップすることはありえませんからね?
「ホント……?」
「はい、ホントです。今は特別クエストの最中だから、これが終わったら教えますよ」
「ホントのホント……?」
「だからホントですって。……首を絞めるのやめてもらえます?」
また抱き着いてきているし、この人、やっぱり他人との距離感おかしいな。
「一生ついて行くわ!」
「それは困ります……」
こんな短時間でそんなに懐かれるとさすがに……。
【それではこのまま、
「そういうどこかで見たような百合っぽいのはちょっと……。≪サポちゃん≫そのロザリオはどこから取り出したのよ」
ついさっき、濃厚な百合路線はまだ解禁しないとか言ってなかったっけ?
「お姉さまぁ♡」
≪セリー≫さん、キャラ変早いな⁉
さっきまでのクール系美少女はどこ行った⁉
なんかもう、≪リルちゃん≫だけが喜んでいそうな展開になってしまっているんだけど、これで正解なのかな……。
「お姉さまはやくぅ♡」
ロザリオに首をねじ込んでくるんじゃないの。
うーん、早くギルマスの執務室に行きたい……。
≪ニャンニャン姫≫がいてくれると良いんだけど。