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第102話 さあ、行くよ! われら、ゴーストバスターズ!

 ≪サポちゃん≫と≪アサダ≫さんが『狂騒ポーション』とやらの調合をしている間に、『高位神官ハイプリースト』としての心得を少し伝授して差し上げましょう。


 これから基本的なことだけど、とっても大切なことを言うから、よく聴いてね?


「『高位神官ハイプリースト』にとってはね、ゴースト系のモンスターが現れたら超ラッキーなんだよ? だってさ、『高位神官ハイプリースト』の攻撃が通るモンスターなんてそんなに多くないからね。闇属性か不死属性を持ったモンスターか、不死種族のモンスターだけなんだからね」


 それ以外のモンスターは、ほかのJOBの誰かに攻撃してもらうしかないんだし、『高位神官ハイプリースト』が単独で倒せるモンスターが現れた時は、チャンスだと思って積極的に倒しに行かないと。

 まあ、もう1つはSTR≪筋力≫を鍛えて、メイス系の武器でぶん殴るって方法もあるにはあるけれどね。


「そう、ね……たしかに……」


 曖昧な相槌。

 まだ完全に納得はできていなさそう。

 それであれば――。


「こう考えてみて? ゴーストやアンデッドなんて、不死種族モンスターで不死属性まで併せ持っているんだから、有利種族・有利属性で倍々! 超特効状態だよね。なんならほんのちょっと触れただけでも倒せるでしょ」


 弱いレベルのゴーストだったら、スキルを使わなくても、目をつぶって適当に体当たりでもしておけば消し飛ぶんじゃない?『高位神官ハイプリースト』の職服に施された加護の効果ってけっこう高いし。やったことないから知らないけど。


「でも怖いわ……」


 んー、まだダメか。

 となると……。


「≪セリー≫がそんなに有利属性の相手に恐怖を感じるっていうのはさー、たぶんだけど、圧倒的に成功体験が少ないからじゃないかなって思うんだけど、どうかな?」


「成功体験……?」


「うん、成功体験。ゴーストが怖いのって、たぶん小さい頃のイメージを引き摺っているだけだと思うんだけど、≪セリー≫は実際にゴーストを倒したことある? 怖がっているだけでいつも誰かほかの人に倒させてない?」


 必ずしもトラウマを克服しなきゃいけないってこともないと思うけれど、成功体験の積み重ねは絶対必要だよ。理論だけじゃモンスターには勝てないからね。


「いつもママが……」


「まあそうだろうとは思ったよ。≪サリー≫さんは3次職の『大司教アークビショップ』だから、2次職の『高位神官ハイプリースト』よりもさらにゴースト系には有利だし。でもね、だからといってずっとお母さんに頼っていたら、いつまで経ってもお化けが怖いままだよ?」


 自分の手で倒さないと。

 どんどん倒しまくらないと!


「倒しまくって『なんだこいつら、わたしの足元にも及ばない雑魚じゃん』って思えるようにならないとね。そうなったら、さっきわたしが言った『ラッキー状態』になれるよ。ゴーストが現れたら、向こうから小銭と経験値がやってくるようなものだからね♪」


 何ならこっちから探しに行っちゃう!


「そういう……ものかしら……」


 まだ半信半疑といったところかな。

 頭では理解できているけれど、漠然とした恐怖が残っている。そんな感じだろうね。んー、あとは……力技かな。


「≪アサダ≫さーん! 調合中申し訳ないんですけど、ちょっと『聖水』を分けてもらえませんか?」


 地面にしゃがみ込んで≪サポちゃん≫の指示を受けている背中に向かって呼びかけてみた。ちょっとね、≪セリー≫のためにわたしも戦闘に参加する構えを見せないといけませんからね。


「おう。大丈夫だ。『聖水』ならたくさんストックがある。どれくらい必要だ?」


 ≪アサダ≫さんが体はそのままに、首だけひねって振り返ってくる。


「ちょっとで大丈夫です。小瓶1本分くらいかな」


「おう。ほらよ。受け取れ~」


 雑に小瓶を放り投げてきた。


「おわっととと。ありがとうございますー。お邪魔しましたー。あとはごゆっくりー」


 片手をあげて返事をする≪アサダ≫さん。

 新しいポーション作りがなんだかとっても楽しそう。



「はい、おまたせー。わたしも聖水を手に入れたし、≪セリー≫と一緒に戦うよー。いざとなったらこれを投げつければこの1階に出るゴーストくらいなら余裕で倒せるからね。背中はわたしに任せろっ!」


 さあ、≪セリー≫のお化け克服のための特訓スタートですよ。


「ほら、いつまで座っているの⁉ さっさと立ち上がって! 目をつぶって『ターンアンデッド』を唱えるだけの簡単なお仕事だからね!」


「目をつぶって……ターンアンデッド……目をつぶって……ターンアンデッド……」


 ≪セリー≫が杖を取り出してから、ゆっくりと立ち上がる。


「準備は良いね? さあ、行くよ! われら、ゴーストバスターズ!」


「が、がんばるっ!」


 おーし、やる気出てきたね。

 あれ? これなら『狂騒ポーション』なんていらないのでは……。


 まあいっかぁ♪

 その時はその時で♪


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