目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第115話 おじさんは……裸なのかしら……?

「ちょっと見てよ! そこに落ちている金属プレート……なんか色が違くない⁉」


 これまでは鉄かステンレスか、なんかそれ系の銀色の金属プレートだったのに、今見つけたのは色味が金色っぽい!


「もしかして、これがおっさんが持っていた本物のプレートなのでは⁉」


 もし本物だったら触るの怖いな……。


「おおおおおお姉さま! 危険だからスルーしましょ!」


 そう言って、≪セリー≫が腰のロープを引っ張ってくる。


「うーん、そうは言ってもねぇ……。見るからに怪しいけれど、拾わないわけにはいかなくない? どう見てもヒントですよーって色しているし?」


 でもやっぱり触るのは怖い……。


「あ、そうだ。おっさんで挟んでみよう!」


 ノートのページを開いて掬い取るように拾えば、素手で触らなくて良いし!


『ちょいちょい! ワイで挟んだらワイがノートになるかもしれないやんけ!』


「いや、おっさんはもうノートだから、実質ノーダメージでしょ」


 自分の姿を思い出して?


『ノートの中でノートにされてまうかもしれないやんけ……』


「ノートの中でノートに……? ごめん、どういう状態か想像できないんだけど」


『すまん、自分で言うてて意味わからんかったわ……』


「適当に言ってると……千切るよ?」


 寝ぼけているなら、おっさんはちょっと黙っておこうか?


「お姉さま怖い……」


『お姉さま怖い……』


 おっさん調子乗ってるな……。

 よし、ちょっと千切っておこう。


『おい! 何して……やめ~や! 痛い! 痛い!』


「えっ、おっさん、痛覚あるんだ?」


 適当に選んだページの端っこを5mmくらい破っただけなのに。


『ほんま勘弁してや……。足の小指の爪が割れてもうたやんか……』


「爪? それは別に痛くはないでしょ。ていうか、ノートのここが足の小指の爪なの? ちなみに右足? 左足?」


『右足や』


「ほぇー。じゃあここは?」


 別のページを開いて、端っこをクシャッと丸めてみる。


『ちょ~! 急にそないなとこ触らんといて~や! こしょばいやんか!』


「今のはどこの部分なの?」


『それは……言えへん……』


「なんでよ⁉」


『……姉ちゃんのスケベ』


「えっ⁉ ちょっと今のどこなの⁉」


 わたし、おっさんのどこに触っちゃったのさ⁉


『……チクビや』


「ふざけてると、マジで千切るよ?」


『ほんまやねん』


「おおおおお姉さまのエッチ!」


 顔が真っ赤じゃないのさ。


「≪セリー≫まで……。おっさんの乳首くらい別に何でもないでしょ……」


 千切って捨てればノーカンでしょ。


「まあ、これ以上おっさんがふざけたら、千切るんじゃなくて燃やしてしまえば良いとして」


『ぜんぜん良くないで⁉』


 はいはいムシムシ。


「今のでわたし、わかっちゃったことが1つありまーす」


 ふふふ。世紀の大発見かも⁉


「お姉さま、何がわかったの? おじさんの乳首の位置?」


 かわいらしい顔して、「おじさんの乳首」とか言わないの。

 ≪セリー≫がそんな単語を口にしたら、視聴者の人たち(の一部)が喜んじゃうでしょ。


「いや……まあ、それもわかっちゃったけどさ……。わかりたくなかったけどさ……。そうじゃなくて、もっと重要なこと!」


「重要……?」


 小首を傾げる。

 どうやら≪セリー≫には見当がついていないらしい。


「じゃあ、大発表しちゃおう!≪サポちゃん≫、カメラどこ?」


【こちらです。カメラ目線をどうぞ】


 そっちかー!

 謎解き解答編の感じでー、キメ顔で行くよー!


「ふっ。わたしにはね……わかっちゃったんですよ。真実はいつも1つ! なんと……おっさんは呪いによってノートに閉じ込められたのではなく、ノートそのものにされてしまったのだということがね!」


 ここでSE。

 ババーーーーン!

 的なやつをお願いしますよ!


「……どういうこと?」


 ≪セリー≫は小首を傾げたままだった。

 ……あれ?


「え……わたしの今の話、わからなかった?」


 わかりやすく言ったつもりだったんだけど。


「あまりよくわからなかったわ……」


『ワイもわからんかったわ……』


 んー、説明が足りなかったのかな。

 キメ顔で発表したのにちょっと恥ずかしいな……。


【≪アルミちゃん≫。今のは視聴者の方々には大ウケでしたから大丈夫です。「急なキメ顔がかわいいのじゃ」ということでご祝儀ギフトをいただきました】


 絶対それ、≪ニャンニャン姫≫じゃん……。

 急なキメ顔をしたわけじゃなくて、謎解きの探偵っぽい感じだったんだけどな……。


「もう一度ちゃんと説明するから……」


 それともう、キメ顔はやめます……。


「えっとね、ノートの一部を破ったりクシャクシャにしたら、おっさんの体……たぶん人間の時のね? 体のどこかの部位に繋がっていたでしょ?」


『小指の爪とチクビやな』


「たぶんほかのページはほかの部位に繋がっていると思うのね。そこからわかることがあるんだけど、何かわかる?」


 ≪セリー≫はポカンと口を開けたまま、ハシビロコウのポーズ。

 回答は望み薄。


 おっさんはどうかな?


『ワイが姉ちゃんにセクハラされてまう?』


「マジでとりあえず燃えとく? それとも、まだ寝ぼけているみたいだから水でもかけて目を覚ます?」


『どっちもボロボロになってまうから堪忍してや……』


 堪忍って何よ。まるでわたしがひどい人みたいに聞こえるじゃないのさ。

 本気で水をかけてやろうかな。


「んー、2人ともわからないみたいだから、正解を発表しちゃいまーす」


 ドラムロールスタート!

 ドロドロドロドロドロドロドロドロ、ドン!


「ノートのページがおっさんの体に繋がっているということは、『ノート=おっさん』であるという式が成り立つわけですよ。ノートにおっさんの魂が閉じ込められている魔法とかそういうことではなくて、おっさん自体がノートに変化させられているのだということを意味しているわけです。これ理解できる?」


『ワイはノートになってたんか……』


 そうやでー?

 自分がノートの自覚出てきた?


「ということは……お姉さまがノートに触ると、おじさんの体に触っているのと同じ……?」


 恐る恐ると言った具合に、≪セリー≫が尋ねてくる。


「そうだね。たぶんそうなんだと思う……よ? 主題はそこではないんだけど……」


「おじさんは……裸なのかしら……?」


「それは……ちょっとわたしにはわからないけれど……それも主題ではなくて……」


 気にするところってそこなの?

 もっと大事なところがあるでしょ?


『さっきな、直接チクビを触られた感覚があったやんか……。たぶんやけどワイ、上半身は裸やな……』


 それは死ぬほど興味ないですけどー?


「お姉さまのエッチ」


 いや、なんでよ⁉


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?