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第114話 ぷぷぷぷぷ! ノートなのに! ノートなのにぃぃぃぃ!

「ねぇねぇ、これどうするの……」


『そないなことワイに訊かれてもやな……』


 うーん。


「あ、またあった。これで10個目?」


「お姉さま、12個目です」


 うーん。

 まさかね……金属プレートが、2mおきくらいに落ちているとは思わなかったね。どうやらわたしたち、12個目の金属プレートを拾ったところらしいですよ。


「さすがにねー、この展開は予想外だったなあ」


『せやな……』


 ノートなのにおっさんが困惑している様子が目に浮かんでくる……。

 まあ、実際わたし自身も困惑していますし。


「全部同じに見えるわね。本物はどれなのかしら……」


 ≪セリー≫が金属プレートを代わる代わる見比べている。


「掘られている古代文字的なのは、全部同じに見えるね。おそらく金属の材質も同じ。全部本物か全部偽物か……」


 ま、普通に考えたら、全部偽物なのかもねー。

 やっぱり本物だったら、しばらく持っているとノートに閉じ込められる呪いが発動するんじゃないかなあ。


 ≪セリー≫が拾ってしばらく所持していても何も起きなかった。

 それは偽物だから。

 そう考えるほうが自然かもしれないよね?


 だけどこの金属プレートたちが偽物だとしても、無視してこのまま進むわけにはいかないから、一応全部拾っておくけれども……。


「これも罠なのかなあ」


「罠?」


「だってさ、風が強くなって、ちょっと歩いたら急に金属プレートが大量に落ちているっておかしくない? しかもだいたい等間隔に。誰かが『こっちこいよー』って言っているみたい」


 こっちが進む方向ですよってあからさまに示している感じだよね。


『姉ちゃん、気ぃつけて進んでや……』


「いや、何をどう気をつければ良いのよ? どんな呪いなのかも、どんな発動条件なのかもわかっていないのに……」


 もちろん周囲はちゃんと警戒してますよ? 今のところゴースト1匹出てこないしなあ。


『ワイ、こう見えても昔は「聖騎士パラディン」やってん。いざとなったら姉ちゃんたちを守ったるわ』


「ふーん? どうやって?」


『どうも何も……せやった。今のワイやと、手も足も出えへん』


 ノートだけに?

 それはノートおっさんギャグかな?

 もしかして今の笑いどころだった?


【\ドッ/】


「≪サポちゃん≫、SEを口で入れないで。急に安っぽいお笑い番組みたいになっちゃうから」


「手も足も出ないって! ぷぷぷぷぷ! ノートなのに! ノートなのにぃぃぃぃ!」


 わたしの配信の字幕を読んだのか、≪セリー≫が若干遅れて笑い出す。

 笑い過ぎて床を転げまわってるじゃん……。

 今そんなおもしろいところあった? もしかして、これが箸が転がってもおもしろいお年頃ってやつなのかな?


【≪アルミちゃん≫が遥か大昔に忘れてしまった青春ですね】


「わたしの人生にそんな青春はもともとなかったけれどね? でも時期的にはつい最近ですぅ。なんなら今も青春真っただ中ですぅ」


 あー、ノートギャグおもしろーい。

 HAHAHAHAHA。


『違うんや……ワイはギャグを言ったつもりは……いっそのこと……』


「いっそのこと燃やしてくれ? はいよー」


 手間が省けて良かったよ。

 この風の中でうまく火がつくといいな。


『少しは躊躇せんのかい!』


「えっ、だっておっさんのほうから燃やしてほしいなんて言われたら、急いで火をつけちゃうけど? 渡りに船? 鴨ネギ? 猫に小判?」


『ワイ、一度もそないなこと言うてへんで?』


「私は空気が読める大人だからね。おっさんの言葉の裏にある気持ちもわかるよ? もうノートでいることに疲れちゃったんでしょ? そういうこともあるよねー。今まで大変お世話になりました!」


 少しだけ淋しくなるね。


『勝手に裏を読んで別れの挨拶せんといて? ワイは人間に戻りたいんや。ノートとして燃やされて終わるんわ、いややで?』


「ちっ。じゃあ先を急ごーっと」


『おい姉ちゃん! 舌打ちすんなや』


 反省してまーす。

 さっさとこのうるさいおっさんと離れたいなー。


「手も足も出ないって! 手も足も出ないって!」


 いや、≪セリー≫……さすがにそこのリアクションは取れ高十分だから!

 もう良いから立ち上がって歩いて!

 どんだけおっさんのギャグにハマってるのさ……。


「って、あれ? みんなちょっと見てよ! そこに落ちている金属プレート……なんか色が違くない⁉」


 これまでは鉄かステンレスか、なんかそれ系の銀色のプレートだったのに、今見つけたのは、ちょっと色味が金色っぽい!


「もしかして、これが本物では⁉」


 あ、でも、これがもし本物だったら……触るの怖いな……。


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