「ねぇねぇ、これどうするの……」
『そないなことワイに訊かれてもやな……』
うーん。
「あ、またあった。これで10個目?」
「お姉さま、12個目です」
うーん。
まさかね……金属プレートが、2mおきくらいに落ちているとは思わなかったね。どうやらわたしたち、12個目の金属プレートを拾ったところらしいですよ。
「さすがにねー、この展開は予想外だったなあ」
『せやな……』
ノートなのにおっさんが困惑している様子が目に浮かんでくる……。
まあ、実際わたし自身も困惑していますし。
「全部同じに見えるわね。本物はどれなのかしら……」
≪セリー≫が金属プレートを代わる代わる見比べている。
「掘られている古代文字的なのは、全部同じに見えるね。おそらく金属の材質も同じ。全部本物か全部偽物か……」
ま、普通に考えたら、全部偽物なのかもねー。
やっぱり本物だったら、しばらく持っているとノートに閉じ込められる呪いが発動するんじゃないかなあ。
≪セリー≫が拾ってしばらく所持していても何も起きなかった。
それは偽物だから。
そう考えるほうが自然かもしれないよね?
だけどこの金属プレートたちが偽物だとしても、無視してこのまま進むわけにはいかないから、一応全部拾っておくけれども……。
「これも罠なのかなあ」
「罠?」
「だってさ、風が強くなって、ちょっと歩いたら急に金属プレートが大量に落ちているっておかしくない? しかもだいたい等間隔に。誰かが『こっちこいよー』って言っているみたい」
こっちが進む方向ですよってあからさまに示している感じだよね。
『姉ちゃん、気ぃつけて進んでや……』
「いや、何をどう気をつければ良いのよ? どんな呪いなのかも、どんな発動条件なのかもわかっていないのに……」
もちろん周囲はちゃんと警戒してますよ? 今のところゴースト1匹出てこないしなあ。
『ワイ、こう見えても昔は「
「ふーん? どうやって?」
『どうも何も……せやった。今のワイやと、手も足も出えへん』
ノートだけに?
それはノートおっさんギャグかな?
もしかして今の笑いどころだった?
【\ドッ/】
「≪サポちゃん≫、SEを口で入れないで。急に安っぽいお笑い番組みたいになっちゃうから」
「手も足も出ないって! ぷぷぷぷぷ! ノートなのに! ノートなのにぃぃぃぃ!」
わたしの配信の字幕を読んだのか、≪セリー≫が若干遅れて笑い出す。
笑い過ぎて床を転げまわってるじゃん……。
今そんなおもしろいところあった? もしかして、これが箸が転がってもおもしろいお年頃ってやつなのかな?
【≪アルミちゃん≫が遥か大昔に忘れてしまった青春ですね】
「わたしの人生にそんな青春はもともとなかったけれどね? でも時期的にはつい最近ですぅ。なんなら今も青春真っただ中ですぅ」
あー、ノートギャグおもしろーい。
HAHAHAHAHA。
『違うんや……ワイはギャグを言ったつもりは……いっそのこと……』
「いっそのこと燃やしてくれ? はいよー」
手間が省けて良かったよ。
この風の中でうまく火がつくといいな。
『少しは躊躇せんのかい!』
「えっ、だっておっさんのほうから燃やしてほしいなんて言われたら、急いで火をつけちゃうけど? 渡りに船? 鴨ネギ? 猫に小判?」
『ワイ、一度もそないなこと言うてへんで?』
「私は空気が読める大人だからね。おっさんの言葉の裏にある気持ちもわかるよ? もうノートでいることに疲れちゃったんでしょ? そういうこともあるよねー。今まで大変お世話になりました!」
少しだけ淋しくなるね。
『勝手に裏を読んで別れの挨拶せんといて? ワイは人間に戻りたいんや。ノートとして燃やされて終わるんわ、いややで?』
「ちっ。じゃあ先を急ごーっと」
『おい姉ちゃん! 舌打ちすんなや』
反省してまーす。
さっさとこのうるさいおっさんと離れたいなー。
「手も足も出ないって! 手も足も出ないって!」
いや、≪セリー≫……さすがにそこのリアクションは取れ高十分だから!
もう良いから立ち上がって歩いて!
どんだけおっさんのギャグにハマってるのさ……。
「って、あれ? みんなちょっと見てよ! そこに落ちている金属プレート……なんか色が違くない⁉」
これまでは鉄かステンレスか、なんかそれ系の銀色のプレートだったのに、今見つけたのは、ちょっと色味が金色っぽい!
「もしかして、これが本物では⁉」
あ、でも、これがもし本物だったら……触るの怖いな……。