詐欺師!!
うっわーー!
いきなり騙されていた。少し前に誰とも組まないようにして、絶対騙されないぞ!
と思っていたのにもう騙されてしまった……。
何を企んでいるのかまでは解らないが、ダンジョン内で何か仕掛けてくるのだろう。
思えば銀貨1枚っていうのが安すぎる気がする。これが餌でそれくらいなら良いかなと思わせる手なのだろうか、とにかく怖いから早めに断っておこう。
「ガイドさん、やっぱり今日は時間がないので入り口だけみて終わりにしておきます。なのでガイドは必要ないです」
「え? そんなこと言わずに少しでも見ていこうよ。たったの銀貨1枚だよ」
「いやあ、残念ですけどガイドは必要ないです」
もうパーティーからも外しておく、そしてガイドの男を追い抜きダンジョンの入り口に向かう。
もうダンジョンの入り口は見えている。
石造りの神殿の様なものがおそらくダンジョンなのだろう。
周りにも人がドンドン増えてきた。
「兄ちゃんガイドいるだろ?」「ダンジョンのガイドしてやろうか?」
何人かに声を掛けられるが「結構です」の一言で断って歩く。
こいつらも詐欺師なのだろう。この辺の探索者風の男達は全員が裏で組んでいる詐欺師に見えてきた。きっとこの付近では騙される奴が悪いという考えが多いのだろう。
朽ちた白い石の神殿の入り口に何店か露店が並び、その少し離れた横にはテントなどで野営している人もいる。
「ご主人様、ガイドはいらないのですか? 私は入った事がないので案内できません」
「まあ今日はちょっと覗いてみるだけだから」
後ろを振り返ってみても誰も俺たちをつけてきては居ないようだ。
おそるおそる神殿の中に入ってみるとすぐに下に降りる階段が見える。
階段も神殿の石と同じ白い石で出来ており、石が発光しているのか日が届かない場所でも暗くない。
特に危険を感じないので階段も降りてみたが、降りた先も白い石の壁で囲まれており明るいという程ではないが暗くて見えないという事はない。
「これは探索に明かりはいらないな」
もっと奥に進もうか迷っていると後ろから話声が聞こえてきた。
他の探索者のパーティーが来たようだ。端によって他のパーティーが通るのを待つ。
ちょうどいいので他のパーティーの装備などを参考に見ておこうと思う。
やってきたパーティーは6人組、明かりは持っていない、剣を持っているのが2人、槍が1人、メイスが1人、杖を持っているのが1人、弓が1人となかなかバランスが良さそうだ。
彼らはジロジロ見ているこちらをチラッとみるとそのまま奥へと進んでいった。
こちらの事など気にしていないようだ。後を付いていこうかと思ったが、警戒されたら嫌なので辞めておく――。
少し時間を置いてからもう少し奥へと進む。
ダンジョンの中はゲームで言う3Dダンジョン風の見た目だ。
直線だけの道が続き、道の広さは人が余裕ですれ違える程度の広さ、いくつかT字路や十字路もあるがそんなに頻繁ではない。
曲がる時は全て左に曲がってきたので、まだ入り口には簡単に戻れる。
あれから他のパーティーには会っていないが魔物にも会っていない。そろそろ魔物見てみたいなと思いつつまたT字路を左に曲がると、
何かいる!
中型犬くらいの大きさの芋虫がこちらに這ってきている。こちらに気が付いているのかどうか解らないが一定の速度でこちらに近寄ってくる。
しばらく観察しているとグッと体をへの字に曲げだした。
「ご主人様、下がってください」
ブタちゃんが前に出ると、同時にへの字に曲がった芋虫がビョン!と伸び、真直ぐこちらに飛んできた。
ブタちゃんは解っていたのか飛んできた芋虫に向かって、冷静にこん棒を振り回す。
*バチン*
芋虫は壁に叩きつけられ弾ける。体液が辺り一面にまき散らされ、ちょっと臭い。
どうやらこの芋虫が魔物で体当たり攻撃をしてきたようだ。しかし、倒したからといって何か得があるようにも思えない。
芋虫は壁に当たって飛散したが、かろうじて一部の死体は残っている。
しかしこの死体が何かの役に立つとも思えない。
「ブタちゃんはこの芋虫知ってる?」
「初めて見ました。森の中にはいませんでしたね」
「そうか……」 ダンジョンでお金を稼ぐってどうするのだろうか?
とてもこれでは稼げそうにない。ダンジョンの状況は解ったので来た道を戻る。
とりあえず明かりは必要ないのと、まだ一匹だけだが魔物を倒してもお金やアイテムは落とさないという事が解った。さすがにゲームとは違うようだ。
もっと奥に行って強い魔物を倒せば良いのだろうか? 例えばシルバーウルフを倒せば毛皮が取れるからそれを売って…………。
何処に売るのだろうか? その売る場所が大事なのではないか?
ダンジョンの外にでると少し暗くなってきていた――――。