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第20話 町 4

*グ――!*


 ブタちゃんの腹が鳴った。

 おそらく今は18時と言った所か、ブタちゃんに何か食べさせる必要がある。


 辺りを見回すと近くの露店が肉の串焼きを焼いている。おそらくこの匂いにブタちゃんは反応したのだろう。


「2本くれ」 「2本で銅貨4枚になります」


 銅貨を渡しながら、ちょっと勇気をだして聞いてみる事にした。


「今ダンジョンから出てきたんだが、買取は何処だ?」


「素材の買取なら探索者ギルドでやってるよ」


 おお、ギルドがあるのか貴重な情報をゲットだ。


「探索者ギルドの場所は?」


「北門入ってすぐ左の大きめの建物がそうだ。ランタンの絵の入った看板がでている」


「なるほど、ありがとう」


 串肉を受け取り、1本をブタちゃんに渡す。


「聞いてた? 食べながら探索者ギルドに向かってみよう」


「はい!」


 肉串を一口齧ってみると何の肉かは解らないが、塩もスパイスも強めに利いていてなかなか美味い。


 ブタちゃんはもう食べ終わって、こちらの肉を見ながら串をしゃぶっている。


 そうか1本で足りるわけないか……。


「ブタちゃんお腹空いているなら干し肉食べててよ」


「はい! 串肉美味しかったですね。また食べたいです」


「ダンジョンで稼げるようになればお腹いっぱい食べれるようになるんだけどな」


 北門とはおそらくさっき町からでた門の事だろう。ダンジョン側から町に入ってすぐ探索者ギルドはあるはずだ。


 北門に近づくと門番はいるが、南門から入った時と同じように何食わぬ顔で門番の方を見ない様にして通り過ぎようとする――――。


「待て待て、お前が奴隷のオークだな。南門の奴から聞いてるぞ――。なんだちゃんと奴隷の首輪を付けてるじゃないか、それなら行って良し!」


 なにやら知らない間に話が回っていたようだが、首輪さえ付けていれば問題ないようだ。


 最優先で首輪付けて良かった。


 さて門は無事に通過できたので、左側のこの建物が探索者ギルドかな? 木造だけど大きな倉庫ぐらいある。看板はランタン? に見えなくもないか?


 看板の下のドアから中に入ってみる――――。


 中は広めで奥にカウンターが並び、手前にはいくつか粗末なベンチがあり、まばらに人が座っている。横の壁一面に張り紙がしてあり文字や数字が並んでいるが――――。


 読める!


 特に問題なく文字を読むことができる。どうやらこのリストは買取表の様だ。


 一番値段が安いのが『ジャイアントキャタピラーの角:銅貨1枚』と書いてある。


 さっき倒した芋虫がそのままジャイアントキャタピラーだったのだろうか、でも角なんてあったかな?


「ブタちゃん、さっきの芋虫に角なんてあったかな」


「大きい角はなかったと思います」


「そうだよなあ」


 まあ良く見てなかったから解らない。小さい角があったのかもしれない。

 さらにリストを見てみると次は『ウッドフォークの葉:銅貨2枚』と書いてある。


 もっとダンジョンの奥に進むと出てくるのかも? 

 次は『ポイズンスパイダーの毒腺:銅貨3枚』などと続いている。


 この場所が探索者ギルドで間違いなさそうだ。


 きっとあのカウンターで魔物から取った素材を買い取ってもらうのだろう。しかしさっきの芋虫倒して素材を運び込んで銅貨1枚じゃ大して儲からない。


 もっと奥に進んで強い魔物を倒す必要があるとは思うが、ダンジョンについて良く解らないうちは無理をすべきではないだろう。


 探索者ギルドの事は解ったので、次は宿屋を探したい。

 広場にそれらしきベッドの看板が付いている建物があったのでそこに向かう事にする。


「魔物の相場が解ったから次は宿屋に行ってみよう。それにしても芋虫1匹倒して銅貨一枚って安すぎると思わない?」


「ご主人様、明日は芋虫10匹でも100匹でも倒せばよいのです。そのお金で美味しいものを食べましょう」


「100匹もいるかなあ」


 だいぶ辺りは暗くなってきたが広場の辺りは明るく、まだ人も歩いている。ひときわ騒がしい一角に向かってみると、そこは酒場のようだ。


 その隣にはベッドの絵の看板がある建物があった。看板の下の扉から中に入ってみる。


「いらっしゃい!」 元気なエプロン姿の女将に声をかけられた。


「こんばんは、ここは宿屋ですかね、1泊いくらですか?」


「1泊一人銀貨3枚だよ。2人部屋なら2人で銀貨5枚、食事は朝と夜で一人銀貨1枚ね」


 という事は食事付きだと、2人で1泊銀貨7枚は必要だな。

 芋虫だと70匹か……。


「解りました。また来ます」


 今は銀貨7枚も持っていない。こっちの世界に来てから初めてベッドで寝る事ができるかと思ったが、考えが甘かったようだ。


 今夜も野宿決定。


「ブタちゃん、申し訳ないけど今日もテントで寝ることになったよ」


「そうですか、私はご飯さえ頂ければ何でも良いですけどね。何処でも寝れますし」


「俺は嫌だなあ、早くベッドで寝たいよ……。風呂にも入りたいし…………」


「風呂ってなんですか?」


「水浴びみたいなものだよ。お湯だからお湯浴び? 湯浴みかな」


「あの宿ではそんな事も出来るのですか?」


「風呂はないかもしれないけど、お湯で体を拭くぐらいは出来ると良いなあ」


「それは気持ちが良いかもしれません。最近水浴びもしていないので、ちょっと体が匂うような気がします」


「まあ実際二人とも臭いよね。はやくお金を稼いで身なりを整えないと、今日はダンジョン前でテントはって明日の朝一からダンジョンで少しでも稼ごう。装備も整えないといけないし」


「はい! 頑張ります」


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