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第32話 この小説、新キャラを出すとき、なぜかドキドキするんですよね

「いやあ、見事な完全犯罪ですね。証拠が無ければ逮捕のしようがないですからね」


「貴様、全部見ていたのか?」


「見ていましたよ。でも安心してください、誰にも口外するつもりはありません。まあ、話したところで証拠もないので信じてもらえないでしょうけどね」


 俺たちは混乱していた。

 サクラ氏が暴れた現場だけでなく、転送装置を使うところまで見られたとなると、かなりマズイ状況だと思う。


「悪く思うなよ……」


 カトー氏はそう言うと、その男に飛びかかった。

 だが、その男はカトー氏の攻撃を受け止めたのだ!


「おいおい、いきなり襲ってくるなんて、穏やかじゃないですね。同じ異星人同士、仲良くやりましょう」


 異星人!?


 地球に、俺たち以外の異星人がいるなんて……。

 いや、でも俺たちだって、こうして地球に来たのだから不思議なことではない。


「カトー、もうやめろ。この人の話を聞いてみようじゃないか」


「そうだな、なぜ俺たちが異星人だと分かったか、話してもらおうか」


「別に不思議なことはないでしょう。そちらの女性が出している凄まじい闘気を感じて来てみれば、圧倒的な強さに、テレポーターみたいなオーバーテクノロジーまで出てきた訳ですから。異星人以外ありえないと思いますよ」


 そうだ、この男の戦闘力を見てみよう。

 エラーが出たあと、スイッチを切っていたので、スイッチを入れ直してみた。


 ……『25万』だと……。

 カトー氏の攻撃を、なんなく受け止めたのも理解できる。


「なるほどね。ところであなたは相当強いみたいだけど、私とどっちが強いかしら?」


「言うまでもなく、あなたの方が強いですね。ですが、こちらの男性となら、私の方が強いと思いますけどね」


「なんだと、この野郎!」


「カトー、やめておけよ。この人、本当に強いぞ。さっきのやりとりで分かってるだろ?」


「くっ、どうなってやがる……」


 カトー氏にとっては堪らない状況だと思う。

 自分より強いのがサクラ氏だけじゃなく、他にもいたのだから。


「私は、あなたたちと仲よくなりたいと思っているのです。話せる範囲で構いませんので情報交換をさせていただけませんか」


「そうね、私もあなたに聞きたいことがあるので、ご一緒に焼肉でもどうかしら?」


「えっ、お前まだ食べるのかよ……」


「うるさいわね……支払いだってしてないし、どっちにしても戻る必要があるんだからいいじゃない。あんたは水でも飲んでればいいのよ」


 サクラ氏はずいぶんと乗り気なようだけど、大丈夫なのだろうか。

 もし、何かの罠だったらどうするつもりなのだろう。


「では、決まりですね。店まで案内してもらえますか」


 ――


「お客様! 大丈夫でしたか」


 俺たちが店内に戻ると、店長らしき人がやってきた。

 この様子を見ると、あの男たちは以前からこのような行為を繰り返していたのかもしれない。


「大丈夫だよ。ちょっと懲らしめてやったから、もう二度と来ないんじゃないかな」


「本当ですか! なんとお礼を言ったらいいのか……あの連中には、ずっと困っていたんです」


「お礼なんて別にいいのよ。それより続きを楽しみたいのだけど、よろしいかしら」


「もちろんです。VIP席にご案内します!」


 焼肉屋にVIP席? と思ったけど、どうやらちょっと豪華な個室の事らしい。

 でも、これはありがたい。

 個室であれば、これから話すであろう内容も聞かれる心配がなさそうだし。


 ――


「では、私から自己紹介しますね。地球名では二階堂進(にかいどう すすむ)と申します。地球に来て5年、探偵業を営んでおります」


 二階堂氏は俺たちに名刺を配った。

 これで、彼に対する連絡手段を入手できたことになる。


「私はサクラ。まだ地球へ移住はしていなくて、戦闘を担当しているわ」


「俺はカトー。同じく戦闘を担当している」


 2人が自己紹介をしたので、俺の番だ。なんて言ったらいいんだろう、俺……雑務だし。


「俺はイチローです。その……雑務全般をやってます」


 二階堂氏は俺のことを笑わず、真剣に聞いていた。


「なるほど。私は1人で生活しているのですが、皆さんは仲間と一緒なのですね。他にもいるのでしょうか」


「その辺りは答えられないわね。あなたの方こそ、仲間はいないの?」


「私の仲間は……全員亡くなりました。私の星は殺人ウィルスと殺人兵器によって、ほぼ全てが死に絶えたのです。たった一人で宇宙船に乗り込み、コールドスリープで長い間眠りながら地球にたどり着いたのです……」


 コールドスリープを使って宇宙を航行していたとすれば、彼らの星の技術力ではワープ航法を実現できていなかったのかもしれない。

 それでも凄い技術力を持っていることに、変わりはないのだけど。


 って……殺人ウィルスだと!

 カトー氏、サクラ氏もやはり驚いた顔をしている。


「これは偶然なのかしら……」


「どういうことですか?」


「私たちの星も殺人ウィルスで絶滅をしたのよ……」


「なんと! まさか同じ境遇だったとは……では、皆さんも地球への移住を考えているのでしょうか」


「その質問も、今は答えられないわね。私たちのリーダーであれば答えられると思うので、そのつもりがあれば聞いてみるけど。あとね、あなたの血液を採取させてくれるなら、同じウィルスか調べることができると思うわよ」


 サクラ氏も、ボス氏に確認が必要だと判断したようだ。

 うかつに色々話してしまい、その結果ハカセが人質に取られでもしたら……大変だ。


「是非、皆さんのリーダーに会わせてください。もちろん、血液の提供もしましょう。私の願いは同志を得ることなので、皆さんが地球に移住してくれるなら、最大限の協力を約束します」


「分かったわ、伝えておくわね。すみませーん、特上ハラミを味噌ダレで20人前お願いしまーす」


 ずっとシリアスな話をしていたはずなのだけど、サクラ氏はずっと食べ続けていた。

 驚いたのは、二階堂氏も大食いなのか、すごい勢いで食べていたことだ。


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