これは、昔々の夢である。そのことについては、直感で理解出来た。
空を見上げると、どこか懐かしく見覚えのある曇天の戦場の風景。一つ、二つ、と戦闘機が飛んでいる。皆がボロボロで、快晴の空なんてものはどこにも見えやしない。完全なる灰色の世界だった。そんな中、足元に視線をやると、晴に背中を向け、無防備にしゃがみ混んでいる影が一つ。
それは、ええと――そうだ。GK-8だ。
彼は昔、晴――YM-200の相棒だった。だからずっと行動を共にしていたのだ。しかし、こんな景色は見たことがあったか。子どものように身を丸めているにも関わらず、シャンと背筋を伸ばしているようにも見えるその背中を眺め、逡巡する。
「なんスか、それ」
その結果、YM-200は問うた。彼らの足元には、この灰色の世界で、唯一無二である桃色と白色のグラデーションが綺麗な一輪の花が咲き誇っている。
「花、だ。ある時期に開き、多くは美しい色やよい香を有する。そんなものだ。この『花』の正式名称は――」
「それは知ってるスけど」
辞典に書いてある説明をそのまま口にするGK-8に、「舐めてんの?」とひくりと引き攣った笑みを見せる。彼はこちらに興味を示していないが。
「壊すことしか能のないアンタみたいな奴がそんなのに興味持ったってなーんの意味もないでしょ。それに、それももうじき潰される」
「そうだな」
嘲笑するYM-200を
こちらに向かってくる敵の軍勢の足音が、戦闘機と化してしまったGK-8の耳に届いたのだ。あれだけ興味を持っていたくせに、足元にある花を踏みつけんばかりに、体を反転させたGK-8は、己の業務に戻る。それを見て、やれやれと肩を竦めたYM-200は、GK-8があれを見て何を思っていたかなんて知る由もない。
「……ま、こんなこと思ってる時点で、俺も同じ穴の
ぽつりと呟くと、もうすぐ跡形も無くなってしまうであろう、可憐な花を見下して、「早く行くぞ」と前進し始めるGK-8の背中についていくのであった。