次の日から、事態はさらに悪化した。水原の父親の会社に対する批判が強まり、メディアは連日大きく報じた。水原自身も、学校で白い目で見られるようになっていた。
「あれ、パパのお金で不正してたんだって」
「家族ぐるみでやってたんじゃない?」
「だから、パパ活の噂も本当だったのかも」
陰口は再び広がっていった。水原は必死に耐えていたが、日に日に表情が暗くなっていった。
「水原、大丈夫か?」
放課後、俺は心配そうに声をかけた。彼女は無理に笑顔を作る。
「うん、大丈夫……」
「無理しなくていい」
「でも……」
「いつものベンチで話そうか」
俺たちは中庭の片隅にあるベンチに座った。秋の風が二人の間を通り抜ける。
「水原、率直に言うぞ。このままじゃダメだ」
「わかってる……でも、どうすればいいか……」
「白野のやつ、何か弱みを握ってるんじゃないか?」
水原は少し考えてから、小さく頷いた。
「多分……お父さんが昔、白野家と取引していた時の書類かな。今考えると、白野先輩のお父さんがわざと残しておいたものかも」
「その証拠、取り戻せないか?」
「わからない……白野先輩が持ってるなら……」
俺は真剣に考え込んだ。
「リセにも協力してもらおう」
「え?」
「三人で白野に立ち向かう。お前一人に背負わせるわけにはいかない」
水原は驚いたように俺を見つめた。
「リセちゃんも……協力してくれる?」
「ああ、間違いない」
水原の目に、わずかに希望の光が戻ってきた。
★
その週末、俺とリセ、そして水原は作戦会議を開いた。リセの家のリビングで、三人は白野への対策を話し合った。
「白野のヤツ、水原の家の弱みを握ってるらしい」
俺がリセに説明すると、彼女は真剣な表情で頷いた。
「わかった。じゃあ、それを取り戻さないと」
「でも、どうやって……?」
水原は不安そうに言った。
リセは考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「白野さんは、水原先輩に会いたがってるんでしょ?」
「うん」
「なら、一度会うふりをして……」
「おい、それは危険だろ」
俺は反対したが、リセは続けた。
「もちろん、水原先輩一人で行かせるわけじゃないよ。私たちも近くにいて……」
水原は少し考えてから頷いた。
「試してみる価値はあるかも」
「本当にいいのか?」
「うん。このままじゃ、家族も、川崎くんのお母さんも巻き込まれちゃう。あたしが何とかしなきゃ」
「水原……」
水原の目には決意が宿っていた。覚悟を決めた彼女の表情に、俺は何も言えなくなった。
「わかった。でも、危険は冒させない」
三人は計画を練った。水原が白野に会う約束をし、その間に俺とリセが白野の部屋や持ち物から証拠を探す。危険な作戦だったが、他に方法が思いつかなかった。
水原は白野にメッセージを送った。
『明日、カフェで会いませんか?』
作戦は動き出した。