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第54話 作戦開始

 次の日から、事態はさらに悪化した。水原の父親の会社に対する批判が強まり、メディアは連日大きく報じた。水原自身も、学校で白い目で見られるようになっていた。


「あれ、パパのお金で不正してたんだって」


「家族ぐるみでやってたんじゃない?」


「だから、パパ活の噂も本当だったのかも」


 陰口は再び広がっていった。水原は必死に耐えていたが、日に日に表情が暗くなっていった。


「水原、大丈夫か?」


 放課後、俺は心配そうに声をかけた。彼女は無理に笑顔を作る。


「うん、大丈夫……」


「無理しなくていい」


「でも……」


「いつものベンチで話そうか」


 俺たちは中庭の片隅にあるベンチに座った。秋の風が二人の間を通り抜ける。


「水原、率直に言うぞ。このままじゃダメだ」


「わかってる……でも、どうすればいいか……」


「白野のやつ、何か弱みを握ってるんじゃないか?」


 水原は少し考えてから、小さく頷いた。


「多分……お父さんが昔、白野家と取引していた時の書類かな。今考えると、白野先輩のお父さんがわざと残しておいたものかも」


「その証拠、取り戻せないか?」


「わからない……白野先輩が持ってるなら……」


 俺は真剣に考え込んだ。


「リセにも協力してもらおう」


「え?」


「三人で白野に立ち向かう。お前一人に背負わせるわけにはいかない」


 水原は驚いたように俺を見つめた。


「リセちゃんも……協力してくれる?」


「ああ、間違いない」


 水原の目に、わずかに希望の光が戻ってきた。


 ★


 その週末、俺とリセ、そして水原は作戦会議を開いた。リセの家のリビングで、三人は白野への対策を話し合った。


「白野のヤツ、水原の家の弱みを握ってるらしい」


 俺がリセに説明すると、彼女は真剣な表情で頷いた。


「わかった。じゃあ、それを取り戻さないと」


「でも、どうやって……?」


 水原は不安そうに言った。


 リセは考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「白野さんは、水原先輩に会いたがってるんでしょ?」


「うん」


「なら、一度会うふりをして……」


「おい、それは危険だろ」


 俺は反対したが、リセは続けた。


「もちろん、水原先輩一人で行かせるわけじゃないよ。私たちも近くにいて……」


 水原は少し考えてから頷いた。


「試してみる価値はあるかも」


「本当にいいのか?」


「うん。このままじゃ、家族も、川崎くんのお母さんも巻き込まれちゃう。あたしが何とかしなきゃ」


「水原……」


 水原の目には決意が宿っていた。覚悟を決めた彼女の表情に、俺は何も言えなくなった。


「わかった。でも、危険は冒させない」


 三人は計画を練った。水原が白野に会う約束をし、その間に俺とリセが白野の部屋や持ち物から証拠を探す。危険な作戦だったが、他に方法が思いつかなかった。


 水原は白野にメッセージを送った。


『明日、カフェで会いませんか?』


 作戦は動き出した。

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