深夜、俺はアパートのベッドの上に座りながら、プリントアウトした記事と、メモ帳に書き連ねた情報を眺めていた。
水原の“本当”が、少しずつ形を持ちはじめている。
執着だったかもしれない。でも、それは“異常”だったか?
想いが強すぎた。過去に誰にも信じてもらえなかった。だから、今度こそ──って思っただけじゃないのか。
スマホが震えた。
水原からだった。
『今日は、ごめんね。ほんとは、すごく会いたかった』
その一文に、俺は何も返せなかった。
机の上で震えていたもう一枚の紙──それは、白野がリセに渡した例の封筒から抜き取っていた“ある写真”だった。
俺の部屋の近くで撮られた一枚の写真。
写真のピントは甘く、誰が撮ったものなのか、明確にはわからない。
ただ、構図が妙だった。まるで──“誰かが撮らせた”かのような。
……まさか。
疑念が、確信に変わりかけていた。
プリントアウトした新聞記事、ネット掲示板のログ、そして封筒に入っていた写真──。
すべてをテーブルに並べて、俺は一つずつ検証していった。
白野がリセに渡した“証拠”の数々。その中には、明らかに水原が不利になる情報ばかりが選び抜かれていた。本人が認めたSNSの投稿もあれば、否定した“盗撮写真”もある。
けど──何かが引っかかっていた。
“雑すぎる”んだ。
もし本当に水原が執着の果てに人を追い回していたのなら、もっと痕跡があるはずだ。日常の中で見える奇行。学校生活での問題。教師からの警告。だが、図書館のアーカイブや口コミを洗っても、水原が問題児扱いされていた記録はない。
なのに、白野は“完璧すぎる量の証拠”を持っていた。
まるで──“作り物のシナリオ”を用意したみたいに。
プリントアウトした新聞記事、ネット掲示板のログ、そして封筒に入っていた写真──。
すべてをテーブルに並べて、俺は一つずつ検証していった。
白野がリセに渡した“証拠”の数々。その中には、明らかに水原が不利になる情報ばかりが選び抜かれていた。本人が認めたSNSの投稿もあれば、否定した“盗撮写真”もある。
けど──何かが引っかかっていた。
“雑すぎる”んだ。
もし本当に水原が執着の果てに人を追い回していたのなら、もっと痕跡があるはずだ。日常の中で見える奇行。学校生活での問題。教師からの警告。だが、図書館のアーカイブや口コミを洗っても、水原が問題児扱いされていた記録はない。
なのに、白野は“完璧すぎる量の証拠”を持っていた。
まるで──“作り物のシナリオ”を用意したみたいに。
俺はふと、写真のひとつに目を留めた。
それは俺のアパートの前で、こっちを見ている俺と水原を、やや遠くから撮ったものだ。水原が俺の袖を掴んでいる瞬間だった。
構図が不自然だった。そもそもこの角度、住宅の脇の通路に入らなければ見えない。
──あんなところに、通行人がいるはずがない。
つまりこれは、“通りすがり”の撮影ではない。
俺は写真の端、ファイルのプロパティを確認した。
そこには、ご丁寧に撮影日時と、ファイル名に『kt_photo_17』という文字列。
『kt』……イニシャルか?
もしかして、誰か“撮る専門の奴”がいるのか?
思い当たる節があった。以前、白野のSNSを見たとき、写真に一緒に写っていた後輩。名前は確か──海斗。
カメラが趣味。映研所属。
──あいつか?
俺はスマホを開き、SNS検索で「海斗」「映像研究会」「白野」でタグを絞る。
数分のうちに、それらしいアカウントが引っかかった。
プロフィール欄には《映研所属/ポートレート撮影受付中/DMどうぞ》の文字。
俺は咄嗟に、別アカウントを使ってDMを送った。
『撮影依頼をしたいのですが、相談できますか?』
すぐに既読がつき、数分後には返信が来た。
『明日、秋葉原のルノアールで17時なら空いてます』
俺は「了解です」と返し、スマホを伏せた。
海斗。お前がもし、白野に協力して水原の写真を撮ってたとしたら。
俺はその真相を、ぜったいに聞き出す。
真実を知って、水原の目に浮かんでいた“あの諦め”を、否定してやる。
──あのとき、言えなかった言葉を、俺はまだ抱えているんだ。
プリントアウトした新聞記事、ネット掲示板のログ、そして封筒に入っていた写真──。
すべてをテーブルに並べて、俺は一つずつ検証していった。
白野がリセに渡した“証拠”の数々。その中には、明らかに水原が不利になる情報ばかりが選び抜かれていた。本人が認めたSNSの投稿もあれば、否定した“盗撮写真”もある。
けど──何かが引っかかっていた。
“雑すぎる”んだ。
もし本当に水原が執着の果てに人を追い回していたのなら、もっと痕跡があるはずだ。日常の中で見える奇行。学校生活での問題。教師からの警告。だが、図書館のアーカイブや口コミを洗っても、水原が問題児扱いされていた記録はない。
なのに、白野は“完璧すぎる量の証拠”を持っていた。
まるで──“作り物のシナリオ”を用意したみたいに。
俺はふと、写真のひとつに目を留めた。
それは俺のアパートの前で、こっちを見ている俺と水原を、やや遠くから撮ったものだ。水原が俺の袖を掴んでいる瞬間だった。
構図が不自然だった。そもそもこの角度、住宅の脇の通路に入らなければ見えない。
──あんなところに、通行人がいるはずがない。
つまりこれは、“通りすがり”の撮影ではない。
俺は写真の端、ファイルのプロパティを確認した。
そこには、ご丁寧に撮影日時と、ファイル名に『kt_photo_17』という文字列。
『kt』……イニシャルか?
もしかして、誰か“撮る専門の奴”がいるのか?
思い当たる節があった。以前、白野のSNSを見たとき、写真に一緒に写っていた後輩。名前は確か──海斗。
カメラが趣味。映研所属。
──あいつか?
俺はスマホを開き、SNS検索で「海斗」「映像研究会」「白野」でタグを絞る。
数分のうちに、それらしいアカウントが引っかかった。
プロフィール欄には《映研所属/ポートレート撮影受付中/DMどうぞ》の文字。
俺は咄嗟に、別アカウントを使ってDMを送った。
『撮影依頼をしたいのですが、相談できますか?』
すぐに既読がつき、数分後には返信が来た。
『明日、秋葉原のルノアールで17時なら空いてます』
俺は「了解です」と返し、スマホを伏せた。
海斗。お前がもし、白野に協力して水原の写真を撮ってたとしたら。
俺はその真相を、ぜったいに聞き出す。
真実を知って、水原の目に浮かんでいた“あの諦め”を、否定してやる。
──あのとき、言えなかった言葉を、俺はまだ抱えているんだ。