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第42話命を分け合う仲間

 旅の支度を整え、出発のために集合場所に向かうと、既にセイナ、フローラの両名が集まっていた。


「ぁ……うぁ」

「はわわ……か、格好いい……」


「少しは醜い姿は克服できたでしょうか」


「あ、あの。シビル殿。いつかの無礼な態度、お詫び申し上げる」


「お気になさらず。これからは命を分け合う仲間です。お互いわだかまりは水に流しましょう」


「感謝する。そして、先日の模擬戦で改めてあなたの強さに感服した。これからの旅、よろしく頼む」


「ええ、こちらこそ」


 セイナの態度が柔らかくなったのは、何も見た目が変わったからだけではない。


 この3ヶ月の間に彼女達二人との交流を深める為に色々と動いてきた。


 裏ダンジョンの攻略を優先してやっていたのだが、ある時思いがけずそのチャンスがやってきたので、それを活かした形だ。


 その辺の詳しい話はいずれするとしよう。


 簡単にいうと、彼女が訓練を行なっている騎士団の連中が彼女を泣かせた事を聞きつけて俺をリンチしようと呼び出ししてきたのだ。


『体育館裏って奴ですねぇ』


 例えが古いな。だがまあその通りだ。


 なので人間相手に武器スキルを試すのに丁度良いこともあって、その喧嘩を買ったわけだ。


 んで、詳細は省くがステータスカンストオーバーの俺が負ける筈もなく、実力を認められてセイナを任される事になった。


 一応言っておくとステータスで殴り飛ばした訳ではなく、ちゃんと剣技で戦ったぞ。


 どうやら妖精ミルメットが占領していた魂のスペースは相当に大きかったらしく、そこが解放された俺の剣技はベテラン騎士にも引けを取らないものだった。


 もちろん実戦経験はまだ浅いので、そこら辺の練りは足りなかったが、剣技の大会でもあれば、元のステータスでも対人戦では相当いいところまではいけそうだ。


 その辺の詳しい話はまた今度。


 ともかく、そんな経緯もあってセイナとは打ち解けるきっかけができ、約束通り痩せて見た目ブタゴブリンを卒業して今に至る。


 今日は約2ヶ月ぶりに二人と顔を合わせたのであるが、どうやら俺の痩せた姿はかなり好印象だったようだ。


――――――

【セイナ・グランガラス・(ハーフ龍人族ドラゴニュート)】女・職業 龍騎士

――LV 12 HP 320  MP 59

――友好度【普通】→【友好】

 腕力 50

 敏捷 30

 体力 80

 魔力 30


――――――


――――――


【フローラ・アルムデニーズ(魔人族)】女・職業 魔導師

――LV 9 HP 130 MP 120

――友好度【苦手】→【友好】

 腕力 20

 敏捷 23

 体力 25

 魔力 80


――――――



 二人とも好感度という意味では最初の頃より大分マシになったといえる。


 最悪の文字が鎮座していただけに、まともに接する事ができるようになっただけかなり前進したといえる。


 この3ヶ月での交流が功を奏したといえるけど、再会と同時に好感度がアップした。


『やっぱりなんだかんだ言って見た目が変わったのが大きいですねぇ』


 それはまさしく否定できないな。


 世の中見た目が大きなウェイトを占めているのは確かだ。


『見た目は中身の一番外側って言葉もありますけど、シビルさんの場合はそういう綺麗事が通じないレベルのアレな感じですからねぇ。申し訳ねぇです。ぶへへ』


 もうツッコミを入れるのも疲れるが、見た目で人からの態度が変わる事に否定的になるつもりはない。


 人間誰しも見た目で人の善し悪しを判断してしまう生き物であり、それをしないのはエミーのように審美眼に長けている者だけだ。


 俺だって同じ事ができるかと言われれば自信が無いしな。


「あなたの強さ、そして有言実行する行動力。とても感服いたしました。今日からは命を預け合う同士。どうかよろしくお願いします」


「こちらこそ。よろしくお願いします」



「あ、あの、ルインハルド様」

「なんでしょうか、フローラ様」


「私は今、自分の浅ましさに嫌気が差しています」


「え、どうしたんですか?」


「あんなに酷い事を言ったのに、痩せたあなたの姿を見て、凄く好感を抱いてしまいました……」


「確かに、私もだ……人を見た目で判断してしまった事を、恥じ入るばかりだ」


「いや、それはまあ、普通の事なので気にしなくていいと思います。これから私達は命を分け合う仲間。どうかそのように考えないでください」


「感謝する」

「ありがとうございます」


「みなさーん、お待たせしましたー」


 二人と和解が進んでところでホタルが待ち合わせ場所に遅れてやってきた。


 いよいよ俺達の旅が始まる。

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