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第91話王都奪還の準備

 王子とのやり取りをなんとか切り抜けた俺達は、そのまま王城の客室に泊まることになった。


 安全を確保するためにはサッサと王都を脱出してサウブラ領に向かうべきだが、恐らくこのまま王様達を放置してもいい事はない。


 まずはこの国に巣食っている邪神の一派を討伐して地盤を安定させてからにする方がいい。


 戦争の道具にされるのは御免被る。それでなくともガイスト公爵の軍隊と戦う事になっては大変どころの話ではない。


 なんとしてもあと数日でこの王都は奪還しなくては。


 黄鬼の話から推測するに、お互いに連絡を取り合って情報を共有しているだろうから、青と黄が俺に倒されている事は知っている筈。


 なのにあの場で何も仕掛けてこなかった事には理由がありそうだ。


◇◇◇


「まずは一手。国王様や姫様の居場所を探し出そう。サーチ魔法を強化したからイメージを思い浮かべるだけで実行可能なはずだ」


 アーシェとレネリーが本格的に加わったことでスピリットリンカーの能力が向上し、使える魔法は強化された。


 そうしてまずは国王様が幽閉されている場所を突き止め、安全を確保してからサイモン王子の洗脳を解除する。


 あるいはここにいるであろう四鬼衆を引きずり出す。




「いました。城の地下牢。あっ、アナスタシア姫とスーリア姫も一緒です。王族達は軒並み同じ地下牢に捕らえられているようです」


「でかした。さすがフローラだな。俺の魔法を更に高い精度で使えるなんて」


「シビル様の魔法があればこそです」


 俺の二次創作で創造した魔法は、俺自身が使うよりも、魔力を貸与したフローラが使った方が精度が高い事が分かった。


 伝説の魔導師フレローラの末裔である彼女の精密な魔法操作によって、姿を思い浮かべた人物の居場所を特定することに成功している。


 そうしてまずは透明化の魔法を発動。フローラにも伝授して個別で発動できるようにしている。



(よし、皆、聞こえるか?)

(バッチリだよシビル君)


(うむ、ちゃんと聞こえているぞ、我が主よ)

(こちらも大丈夫です)


(作戦開始だ)


(((了解ッ)))


 ◇◇◇


【side黒鬼】


 私はルゲイエ。四鬼衆の1人である黒鬼のルゲイエ。


 ベルクリフト王国を攻略していた黄鬼との連絡が途絶えた。


 我々四鬼衆には誰かが死ぬとそれが分かる繋がりがあるのだが、黄鬼の死を感じとり、すぐに青鬼と同じように救出に向かった。


 だがそれは敵わなかった。黄鬼は完全に消滅してしまい、青鬼にしたように再生することはできなくなっていた。


(これは完全に想定外だわ。一体何があったのかしら)


 あの日、黄鬼の気配が消えて、私は救出に向かった。


 しかし、そこには何の気配もなく、完全に消滅させられてしまった事を予感させたのだ。


 だから何が起こったのか調べるべく、時空魔法【リーディング・メモリー】を発動させてその場で起こった出来事を発動させる。


 そうして覗き見た現象は、私を驚愕させるには十分だった。


「想定外だわ……。まさか女神の力? こんなに早く邪神様の力を退けるなんて。それに、勇者に乗り移った魔王はどうなったの?」


 リーディング・メモリーはそこで起こった状況を調べるのは便利だけど、声までは再生できない。


 口の動きで会話を読むことはできるものの、勇者の中にいる魔王がどうなっているかは推察できなかった。


「サイモン王子」

「はっ……」


 私は洗脳したサイモン王子を呼びつけ、命令を下す。


 青鬼は洗脳することなく、自分達の意志で生け贄を選ばせていたようだが、私はそんなまだるっこしいことはしない。


 一番邪神様の適性が高かった第一王子のサイモンをすぐに洗脳し、この国を支配した。


 それにしても、全員に同じ洗脳を施したのにもかかわらず、第一王女も第二王女も何故か洗脳が効かなかったのはどうしてだろうか……?


「生け贄はルルナ姫にするわ。サウザンドブライン領のアルフレッドに連絡しなさい」


 ともかく、調べた限りもっとも生け贄の適性が高い第3王女を生け贄に捧げ、目的の遂行を果たさなければ。


「それが、ルルナ姫は現在行方を暗ませたとのことです」


「なんですって? エミリアは捕らえたんでしょ?」


「はい。報告ではエミリアは自ら戦いの場にいたそうですが、その前に重要な人物を軒並み避難させたと思われると」


 当てが外れたか……。まさか、こちらの動きを読んでいた?


 この国は簡単に堕ちた。あとは帝国を焚き付けて戦争を引き起こすだけ。


 と思っていたのに……。想像以上にサウザンドブライン領がしぶとい。


 赤鬼が操っているアルフレッドがエミリアに執着しているため、思うように計画が進んでいないのよね……。


 赤いのは何を考えているのかしら?


 邪神様の目的を遂行するのは我らの使命。

 だのに奴ときたら、サウザンドブラインの攻略を操った男に任せて自分では動かない。


「何考えてるのよ赤いのは。これじゃ計画が大幅に遅れちゃうわ……」


 サウザンドブライン公爵家のエミリア。


 女1人に手こずって計画を送らせるなんてあってはならないのに。


 アルフレッドとかいう小僧が気に入ってるのかしら。


 実力が一番高いだけに、自由奔放すぎるのが厄介ね、あの男は。


「まあいいわ。私は私の仕事をするだけよ」


 この王都の陥落は既にほとんど完了している。


 王族は皆殺しが手っ取り早いけど、器の完成には魔力の大きな人間が1人でも多くいたほうがいい。


 我らの願いが遂行されるためには、邪神様の計画を成功させなければ。

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