『あそこですシビルさんっ! アルフレッドの野郎、逃げようとしてますぜっ』
「逃がすかッ! 見つけたぞアルフレッドッ!」
サーチ魔法を全力で発動し、エミリアの場所を特定して直ぐさま飛んで行った。
文字通り、飛んだのである。
ルルナ姫加入によって俺の二次創作スキルがパワーアップし、今まで制限が掛かって作れなかった魔法を作れるようになった。
具体的に言うと古代魔法の中でも難易度の高いとされていた飛行魔法だ。
索敵の魔法は精度がアップし、姿をイメージするだけでどこにいるのか分かるようになった。
それでなくとも元々エミーを探そうと発動はしていたが、アルフレッドが何か妨害をしているのか、今まで不可能だった。
それらを看破してエミーの場所、近くにアルフレッドの気配も感知することができ、敵陣営の真上を通ってアルフレッドの待ち構える本陣まで一足飛びで突入を仕掛けた。
ルルナ姫は現在サウザンドブライン領主邸から王国本土に向けて通信魔法を行使してもらっている。
国王に無事を知らせ、既に戦争は終結間近である情報を共有するためだ。
「見つけたぞアルフレッド」
「貴様、シビル・ルインハルド。よくここが分かったな。飛行魔法を使えるなんてズルいじゃないか」
「ほざけよ。エミーを返してもらおうか」
「動くなよ。俺に危害を加えれば、この馬車に仕掛けた魔石によって大爆発。エミリア嬢もろとも木っ端微塵だ」
エミリアの反応は鉄格子の中からだ。サーチを阻害する魔法が掛かっているのか今まで分からなかった。
だが今はハッキリ分かる。
どうやら気絶しているらしいが、生命の反応はしっかりと伝わって来た。
奴め、俺のエミーに何をしやがった……。
「お前ら何をしているッ! 敵襲だッ! やれガイストッ! シビルを殺せッ」
「ッ、ガイスト公爵ッ」
野郎、ガイスト公爵を操って俺の邪魔をしようとしやがる。
「だが、それも対策済みだ。ディスペルカーズッ!」
「な、なにっ」
ガイスト公爵の首に填められた鉄製の首輪がガチンッという音と共に外れて落ちる。
「はっ……こ、これは……」
「な、なんだとっ!」
俺は直ぐさまガイスト公爵のそばに駆け寄り、回復用のポーションを振りかける。
「ぬぅ、どうやら正気を失っていたようだ。ようやく頭がスッキリしたぞ」
「ご無事ですか、閣下」
「どうやら助けられたようだな、小僧」
よかった。相変わらずのふてぶてしい態度。もはや安心感すら覚えるぜ。
「おのれっ」
「さあアルフレッド。エミリアを解放すればそれで良し。さもなくば、この場で征伐の対象となる道を選ぶか」
「ほざけっ! エミリアは俺の手の中にあるって事を忘れるんじゃないぞっ! 俺がこの魔石を発動する魔力を解き放てば、たちまち馬車は大爆発だっ!」
「いいぜ、やってみろよ」
「な、なに?」
「やってみろってんだ。そんなものじゃエミーは殺せない」
「いいのかっ⁉ エミリアが死ぬんだぞッ!」
「いいからやれよ。その代わりテメェ」
「な、なに?」
「この俺がエミリアを傷つけた奴を生かしておくと思うなよッ」
「ぐっ……、ば、バカにしやがってっ! もういいっ! 殺してやるっ! エミリアもろとも吹っ飛びやが――」
斬ッ!!!!!!!
「……へっ?」
アルフレッドの……両腕が、吹き飛んでいた。
一瞬。ほんのコンマ数秒の間に、アルフレッドは両腕を斬り飛ばされて、一拍遅れて血飛沫が噴水のように舞い上がる。
「いぎゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!! あぁ、あああああああああっ! 腕がッ、俺の腕がぁああああっ!」
ガイスト公爵であった。
俺に注目していたアルフレッドは、ガイスト公爵が一瞬にして剣技を発動し、超俊足の抜剣技によって腕を斬り飛ばしたのを自覚したのである。
『シビルさんっ! こいつが鉄格子の鍵ですっ!』
ミルメットが悶え苦しむアルフレッドの懐に入り込み、
そう、ルルナ姫と繋がった事でスピリットリンカーがパワーアップ。
それに伴ってとうとうミルメットが実体を持つに至ったのだ。
「ナイスだミルメット!」
俺は即座にアルフレッドを放置して鉄格子を開く。
すると中には鎖に繋がれたエミリアがグッタリしているではないか。
「エミーッ!!」
「シ……ビル、ちゃん」
助けだしたぞっ。
「こんなモノに繋ぎやがってッ。ふんぬぅうううううううっ!」
エミリアの手首に填め込まれた鎖を引きちぎり、填められた首輪を左右に引き裂く。
ステータス全力で握り絞めた鉄の首輪は、魔力抵抗の電撃を加える一瞬の発動前に引きちぎり、紙粘土のように変形して地面に投げ捨てられる。
『シビルさんシビルさん。この牢屋の鍵が首輪の鍵なんですって』
「知らんわ。そんな事はもっと早く言え」
そんな悠長なこと言ってられるかってんだ。
「公爵、エミリアは救出しましたよっ!」
「お、おのれぇええっ」
叫ぶアルフレッド。
さあ、こっから反撃開始だぜ。