「うおおおおおおおおっ、あがぁあ、はぁああああああっ」
アルフレッドの体がドンドン変化していく。
凄まじい巨躯とへ変貌していく肉体は、まるで魔王の最終形態のように悪魔の翼と大きなツノ、青白い体の至る所に禍々しい紋様が浮かび上がっていた。
これって確か、裏ダンジョンで登場する『グランドデビル』ってモンスターと同じ姿じゃないか。
地下80層のボスモンスターで、巨体に見合わぬ素早さと多彩な魔法を使ってくる厄介な敵だ。
パーティー戦闘においてエミリアの精霊魔法による弱体化と、フローラによる身体強化魔法を施してセイナなどの火力に全振りした組み合わせでないとかなり苦労する。
さて、単体で相手にできるかどうか。俺のレベリングの腕の見せどころだな。
(ミルメット、コイツは俺に任せろ)
(がってんっ! 赤鬼が変なことしないように抑えておきますねっ!)
四鬼衆相手にミルメットがどこまで出来るか分からない。
だけどアイツは今まで俺の旅のサポートをしまくってくれた頼りになる奴だ。
アイツが任せろと言った以上、俺はそれを信じる事にしよう。
「はははっはっ!! 素晴らしいぞ、この力が溢れる感覚ッ! もはや俺に敵はいないっ。どいつもこいつもぶっ殺して、この国を支配してやるっ」
言ってることめちゃくちゃだな。強さに飲まれて頭がイカれたか。
「ディスペルカーズッ」
「ぬがっぁああっ! ぬぅう、なんだっ、体が崩れるッ……」
呪いの解除が効いた。やはり邪神の一派が用いる力には女神の浄化が有用らしい。
「一つ聞く。エミリアに何をした」
「くかかかっ! 俺の花嫁になる女だ。どう扱おうが、グハッ⁉」
土手っ腹に蹴り一発。
怒りに任せて思い切りぶち込んだ。
「俺のエミリアになんてことしやがるっ」
エミリアはボロボロだった。そんじょそこらの奴に殴られてどうこうなる女じゃない。
なにより、どんな理由があろうと、俺の女を殴ったのはゆるせねぇ。
「刺突・八翔発破ッ!」
エボルウェポンを槍に変化し、連続刺突をお見舞いする。
「かああああああああああああああああああああああああっ!」
「ぎゃぁああっ! くそっ、何故だッ。何故貴様はここまで強いッ」
「お前に虐げられ続けてきたから強くなりたかった、なんて言うつもりはない。何故と言われても困るな」
「くそぉおおっ! 俺は貴族だっ! 貴様なんかより立場が上なのだっ! なのにどうしてエミリアは俺を相手にしないのだっ!」
「知るかボケ。そんな選民思想みたいな考え方してる男を好きになる女がいるとは思えねぇけどな」
「黙れぇええっ、黙れッ、黙れッ、黙れぇええええっ」
奴の目は完全に狂気に染まって赤く光っている。
姿は悪魔そのもの。人間らしい要素はほとんど残っていない。
「ぐぁあああっ」
「むっ」
アルフレッドの体が不気味に光り、視界が潰されてしまう。
「そこっ」
「ぐがぁあああ」
だが邪悪な気配は消えていない。体がデカいのでそこにいるのは分かっている。
槍の武器をそのまま突き出し、確かな手応えを覚える。
「ぐわぁあっ、ぐぅぬうがああっ」
見えないが苦しげな声を上げて暴れているのが分かる。
邪悪な気配というのは形そのものを捕らえることができ、心眼でも獲得したかのように相手の動きが分かる。
パワーアップする前だったらもうちょっと苦戦したかもしれない。
「さて、殺す訳にはいかないから浄化させてもらうぞっ。浄化ノ光ッ!」
「ぐおおおおおおっ!」
神力を武器に纏わせ、袈裟斬りを喰らわす。
大上段からの一撃は確かな手応えがあった。
出てきてそうそうであるが、こいつにはサッサと退場してもらおう。
目眩ましをして更なる変身をしようとしていたのが、開けてきた視界の奥で垣間見えた。
口が裂け、牙が大きくせり出してきている。
「極限奥義ッ【極・一閃】」
トドメの一撃。剣に変化させたエボルウェポンを腰だめに力を込めて横薙ぎに払う。
「ギョエエエエエエエエエッ!!!!!!」
神力の一撃は邪神に染まった部分のみを斬り裂き、アルフレッドの体を魔物から人間へと戻していく。
黒い煙が全身から抜け落ちて蒸発し、元の姿に戻ってその場に倒れ込んだ。
(ミルメット、こっちは決着がついたぞ)
(ナイスですっ。こっちももうすぐですよ)
どうやらあっちもあっちで激戦だったようだ。
俺はすぐにミルメットに加勢しにいった。