「やってられないわよおおおお!!!!」
「うおお!? どうした沙魔美!? 落ち着けよ、みんなこっち見てるぞ」
今日から10月。
そして長かった夏休みが終わり、大学二年の後期が始まった。
俺達の通っている
むしろ作中での時間も、夏休みになってからのほうが長いくらいだ。
沙魔美は後期の講義は全て俺と同じものを履修するつもりらしく、これからは大学でも常に沙魔美と一緒だと思うと、嬉しくて涙が出そうだった(血涙)。
俺達は午前の講義を終えて大学の食堂でランチを食べていたのだが、そこで何故か突然、沙魔美が冒頭の様に騒ぎ出したのだ。
「一体どうしたんだよ。何か嫌なことでもあったのか?」
「あったなんてもんじゃないわよ! 何なのよここ最近の展開は!? 誰も興味がないヒモドラゴンにスポットを当ててみたり、菓乃子氏視点にしてみたり、挙句の果てには堕理雄がまたピー〇姫になったりして、全然私と堕理雄がイチャイチャしてないじゃない!! 読者は私が堕理雄を、延々と監禁し続ける展開が見たいのよ!!」
「それも見たくはねーよ。てか、俺のことをピー〇姫って言うのはやめろよ」
気にしてんだからさ。
そもそも最近のピー〇姫は、昔ほどは攫われなくなってるんだぞ。
「とにかく私はもう我慢できないわ。今から私に付き合ってちょうだい」
「ちょ、待てよ!(キム〇ク)午後からも講義があるんだぞ。それに俺まだラーメン食べてるし……」
「ハッ、何よ、『ドカ食いダイスキ! ふつざわさん』とでも言いたいの!? 流行に乗ればいいってもんじゃないのよ!!」
「別にドカ食いはしてねーよ。一人前のラーメン食ってるだけだよ」
頼むからもう、呼吸以外のことはしないでくれないか?
「いいから堕理雄は私に付き合うか、私に監禁されるかの二つに一つよ。どっちを選ぶの?」
「それ最終的には、どっちを選んでも同じ結末を迎えそうなんだけど……」
ハァ、結局こうなるのか。
ハイハイわかったよ、わかりましたよ。
付き合えばいいんでしょ、付き合えば。
やれやれ、やっぱり俺ってMなのかな?
読者の声「……」
……遂に読者すらも、何も言ってくれなくなってしまった。
ちょっと寂しいぜ。
「じゃあ午後の講義までには戻って来るって約束するなら付き合うよ。それでいいか?」
「前向きに善処するわ(魔法の言葉)。では行きましょう、こっちよ」
「あ、ああ」
俺って女だったら、絶対悪い男に引っ掛かるタイプだよな。
俺は大学内の、あるトイレに連れて行かれた。
「? 沙魔美、このトイレに何の用なんだ?」
「堕理雄は1話で私が、このトイレを異空間の監禁部屋に繋げたのを覚えているかしら? せっかく繋げたんだから、今日はここで堕理雄を監禁しようと思って」
「あの監禁部屋まだ残ってたのかよ!? よく今まで問題にならなかったな!? てか、やっぱり監禁じゃないか!(憤怒)」
「大丈夫大丈夫。今日のはゆる〇ャン△ならぬ、ゆる監▲だから」
「ゆる監▲って何だよ!? 監禁にゆるいもクソもねーよ!」
久しぶりのメイン回だからってアクセル踏みすぎだろ!
さっきから読者はずっと真顔だよ!
「いいから黙って監禁されなさいよ! 抱きしめるわよ!」
「やだ……イケメン」
しょうがないなあ。
こ、今回だけだからね(赤面)。
「中身はただのラブホじゃねーか!?」
監禁部屋に入ってみると、内装は完全にラブホのそれだった。
しかも装飾が全体的に古臭い。
ピンクを基調とするギラギラした照明に、ベッドは今では珍しい回転ベッドだ。
挙句、テレビに繋がっているのはプレ〇テ2だった。
今時2て!?
「何なんだよ沙魔美、ここは……」
「だから言ったでしょ? 今回はゆる監▲だって。さ、良い思いさせてあげるから、とりあえずベッドに座りましょ」
「お、おう」
何だ、結局監禁ってのは建前で、本当はただ二人でイチャイチャしたかっただけか。
まったく、それならそうと素直に言えばいいのに。
俺と沙魔美は、ベッドの縁に並んで座った。
「じゃあまずは耳かきね。はい」
「え?」
沙魔美は自分のふとももをポンポンと叩いた。
もしかして、膝枕で耳かきをしてくれるというのだろうか。
……しょうがない、本当は嫌だけど、付き合ってやるか!(ふんす!)
俺は横になり、沙魔美のふとももの上に頭を乗せた。
「はい、じゃあ左耳から耳かきするから、動かないでねー」
「……うん」
沙魔美のふとももは柔らかくて、程よい弾力があり、まるで巨大なマシュマロに包まれているかの様だった。
その体勢で耳かきをされると、こそばゆいながらも心地良く、天国があるとすればここに違いないと、文献に書き記したい衝動に駆られた。
「はーい、終了。次は右耳ね」
「あ、うん」
俺は起き上がろうとして一旦仰向けの姿勢になったのだが、その時目に入った光景が、何とも圧巻だった。
沙魔美の胸が大き過ぎて、沙魔美の顔が完全に隠れてしまっているのだ。
「ん? どうしたの堕理雄?」
「あ……何でもないよ」
「? 変なの」
まるで胸と会話してるみたいだ。
今度から雨が降ってきた時は、この場所で雨宿りさせてもらおう(名案)。
俺は起き上がるために頭を上げようとしたが、それを沙魔美から止められた。
「堕理雄、わざわざ身体を反対側に持っていくのは大変でしょ? 顔だけを私の方に向けてくれれば、右耳が上になるからそうして」
「え……」
でも、それは絵面的にマズくない?
「何してるのよ。早くしてよ」
「お、おう」
俺は顔を沙魔美の方に向けた。
ファッ!?
俺は目が点になった。
沙魔美は超ミニのスカートを穿いているので、この体制だとパンツが丸見えなのだ。
……赤のレースだった。
ガンダーラ(意味不明)。
「ちょ、ちょっと堕理雄! 鼻息が当たってくすぐったいわよ」
「ああ! ごめんごめん!」
「もう、じっとしててよね」
「……はい」
これ絶対わざとだよな!?
このために超ミニのスカート穿いてきたんだよな!?
からかい上手の病野さんなんだよな!?!?(錯乱)
これはキツい。
ある意味どんな監禁よりもキツいぞ。
「はい、終わりー。どう? 気持ち良かった?」
「うん……まあな」
まだ網膜に赤のレースが焼き付いてるけど。
「じゃあ交代ね。次は堕理雄が私にご奉仕してちょうだい」
「え? 俺が沙魔美に耳かきするのか?」
「耳かきはいいわ。その代わりマッサージして。あちこち凝ってるのよ」
「え」
沙魔美はベッドの上にうつ伏せになった。
……そうきたか。
まあ、マッサージくらいならね?
別にやらしくはないよね?
俺は沙魔美の腰辺りに跨がった。
沙魔美の乗り心地は、まるでフワフワの雲の様で、
ガンダーラ(目的地)。
「……どの辺が凝ってるんだ?」
「うーん、肩から腰にかけて全般かしらね。最近また胸が大きくなったみたいで、凄く肩が凝るのよ」
「……そうなんだ」
……それは俺も感じていたよ。
最近の沙魔美の胸は何て言うかこう……いや、これ以上はやめておこう。
読者の声「オイ!」
ごめんごめん。
でも今はマッサージに集中しないと。
俺は肩甲骨の付け根辺りを親指でグイッと押した。
「ひゃあぁん」
「うお!? 何だ? どうした?」
「ご、ごめんなさい。あまりに気持ち良かったものだから、思わず声が出てしまったわ。いいから続けて」
「あ、ああ」
何だろう。
凄くイケナイことをしているような気になってきたぞ。
いや、そんなことはない。これはただのマッサージだ。
俺はさっきと同じ場所をグイグイと押した。
「んんん~! ……堕理雄……堕理雄ォ」
「だから変な声出すなよ! 読者が勘違いするじゃねーか!」
言っとくけど本当にマッサージしてるだけだからね!?
大学で何やってんだよってツッコミは、この際野暮ってもんだぜ(キメ顔)。
俺は指を段々と、腰のほうに移動させていった。
「ああ、いいわ……堕理雄、そこよ……堕理雄……アン……堕理雄…………ニャッポリート!」
「ニャッポリート!?」
何それ!?
「ニャッポリートは私が考えた造語で、特に意味はないけど、気分が上がった時とかに使うの。若者が使う『卍』みたいなものよ。よかったら堕理雄も使ってね」
「いや、使いどころがまったくわからないよ……」
「ハアァ、でもありがとう。大分楽になったわ」
「そうか、ならよかったよ」
「トウッ!」
「うわっ!?」
突然沙魔美は180度回転して仰向けになった。
俺はバランスを崩して、沙魔美の上に覆い被さりそうになったが、すんでのところで手を突いて堪えた。
結果、俺と沙魔美の顔が、お互いの鼻が付きそうなくらい、超至近距離まで近付いた。
「……急に動いたら危ないだろ」
「ウフフフ」
沙魔美は妖艶な笑みを浮かべながら、俺の肩に手を回してきた。
「オ、オイ! ここは大学だぞ! それに午後の講義までには戻るって約束したろ!」
「大丈夫よ。堕理雄には黙ってたけど、この空間は時間が360倍の速さで経過するから、時間はまだまだあるわ。外の1分は、この中では6時間相当よ」
「精神と時の部屋かよ!?」
ニャッポリート!