「雑食の
「さては諸星先生のお父さんを誘拐したのはあんたらだな!? 地球では、誘拐は重罪なんだぞ!」
「いやいや、宇宙でも誘拐は重罪ですよ?」
「え……そうなの……? それを承知の上で、あんたらはそんなことをしてるの……?(ガン引き)」
「まともな思考回路では、真の芸術は生み出せないのですよ」
「あんた俺の彼女にそっくりだよ!!」
「ちなみに私はどちらかと言えば琴男×堕理雄派ですが、もちろん逆もイケます」
「唐突に何!?」
「何してるの堕理雄? あっちで面白いことやってるわよ。私達も行きましょ!」
「あ、ああ」
何だ面白いことって?
例によって嫌な予感がするな。
「さあさあみなさん、奮ってご参加ください! 只今より、ミス湘南ビーチコンテストを開催いたしまーす!」
「!?」
ミスコンだって!?
まさか沙魔美のやつ、これに参加しようってのか!?
いつの間にかビーチのど真ん中に特設ステージが作られており、その上で、金髪のオールバックでサングラスをかけた、黒スーツの天下一武道会アナウンサーみたいな格好をした人がマイクを握り締めている。
「優勝賞品は10万円分の商品券と、副賞としてネズミーランドのペアチケットが贈られまーす!」
ほう。
一般人が飛び入りで参加できるミスコンにしては、なかなかの賞品だな。
「あ! お兄さん! 私があれに優勝したら、私と二人でネズミーランドに行ってくれますか?」
「え!?」
真衣ちゃんが曇りなき
い、いや、それはちょっと……、沙魔美が何て言うか……。
「フフフ、マイシスター、いつもの私なら怒髪天になってるところだけど、今日はせっかくの海水浴日和だし、どうせ私が優勝するだろうから、その勝負受けて立つわよ」
「オ、オイ、沙魔美!?」
「ヨッシャー!! 女に二言はないですね悪しき魔女!? いざ勝負です!!」
「まあ、残念ながら胸の大きさでは、マイシスターの圧敗みたいだけど」
「クソがああああ!!!!」
実家のような安心感。
最近真衣ちゃんの『クソがあ』が聞けてなかったから、真衣ちゃんには悪いけど、ちょっとだけお兄さんは嬉しいよ。
「では、優勝した人は、誰でも好きな人とネズミーランドに行ける権利を有することにしましょう」
「沙魔美!?」
それを言い出すと、また話がいろいろとややこしくなるだろ!?
「たまにはエエこと言うやんけ魔女! もちろんウチは優勝したら菓乃子と行くで! 菓乃子もウチと行きたいやろ?」
「え!? わ、私は……その……」
菓乃子は俺のほうを伏し目がちにチラチラ見てきた。
ん? 何?
助け船を求められても、俺には上手いフォローなんてできないよ?
「ハッハー! ではボクが優勝した暁には、マイレディ沙魔美を、夢の国にご招待しよう!」
「勇希先輩……!」
玉塚さんはバックに百合の花を棚引かせながら、沙魔美の手を強く握った。
やっぱりこの人、まだ沙魔美のこと諦めてなかった!!
やがて君になるつもり満々だ!!
「そしてその日の夜は、二人だけのエレクトリカルなパレードを開催しようじゃないか」
「キャッ」
キャッ、じゃねーよ!?
そろそろ夢の国から怒られるぞお前ら!!
「琴子は誰と行くつもりなんだい?」
「え、俺ですか!? いや、俺は参加しませんよ! 俺、男ですもん!」
「アラ、こうなったら琴男きゅんも参戦しないとツマラナイわ。それともネットの海に、琴男きゅんの女装写真が放流されてもいいのかしら?」
「グッ…………で、出ます……」
娘野君!!
マジで君の無念は、俺が今夜晴らすよ!!
「私はパパと行くー!」
「アタチもアタチもー!」
「さーて、私は誰と行きましょうかねー」
……。
何が凄いって、みんな自分が優勝する前提で話をしてるところだ。
まあ、このメンツならこの中の誰かが優勝する可能性は高そうだが、プロのモデルの人とかもエントリーしてるかもしれないし、イロモノな水着を着てる人も多いので、そう簡単には優勝できないと俺は思うのだが。
さて、どうなることやら。
「それでは参加者の9名の方々に、それぞれ自己紹介をしていただきましょー!」
と、思ったら、結局沙魔美達しか参加者は集まらなかった。
どうやら他にも参加表明を出してる人はいたらしいのだが、沙魔美達を見た途端、全員参加を辞退したらしい。
まあ、よく考えてみると、沙魔美達は美貌はワールドクラスだし、格好はシュールレアリズムだしで、プロの立場から見たら勝てる公算が低い上に、敗けたらイロモノよりも下に見られるから、ハイリスクローリターンな大会ということになってしまったのか。
これではサークルクラッシャーならぬ、ミスコンクラッシャーだな。
こうなった以上は、沙魔美達にはなるべく穏便にこの大会を終わらせてほしいのだが、どうせ荒らすんだろうなあ(諦観)。
ゴメンね開催者の方達。
魔女に踏まれた……間違えた、犬に嚙まれたと思って、諦めてください。
「では、エントリーナンバー1番の方から順にどうぞ」
「ハーイ! にゃんにゃにゃーん! ぷにぷにくきゅう星から来た、にゃみのにゃまみだにゃー。うー! にゃー!」
「……」
のっけからクソイテーのキターーー!!!
ち、違うんです!
あれは俺の彼女じゃないんです!(逃避)
みなさんそんな眼で見ないでください!
早くも沙魔美のやつ、ミスコンをクラッシュしやがった!
そりゃ、爆乳女が白スクで出てきて、ぷにぷにくきゅう星語で喋り始めたら、司会者の方もあんな、「特別手当、欲しいな……」みたいな顔になるわ!
「……えー、はい、エントリーナンバー1番、病野沙魔美さんでしたー」
流した。
流石数々の激闘を実況してきた、天下一武道会アナウンサーの方(違う)。
この程度のアクシデンツでは、取り乱すことはないらしい。
だが、果たしてその
「続いてエントリーナンバー2番の方、どうぞ」
「ラーメン・つけ麺・オジャパメーン! ハッハー! 肘川の団鬼六こと、ユウキ・タマヅカとはボクのことっさー! ウィーアーエーックス!!」
「……」
やりたいこと全部やりやがったこの人!!
流石に爆乳白スクに続いて、FUNDOSHI一丁のイケメン美女という、二連続おイタさんが来るとは司会者の方も夢にも思っていなかったらしく、「秋田のお袋、元気かな……」みたいな顔をしている。
残念ながら、この後にもまだまだ伝説ポケ〇ンが控えてますんで、SANチェックはこまめにすることをオススメしますよ(経験談)。
「……え、えー、では続いて、3番の方ー」
「バニーガール先輩に代わって、おしおきよ! バキューン! 肘川が生んだ、お兄さん大好きセクシー&ダイナマイト美少女戦士・マイラームーンこと、夜田真衣でーっす!」
「……うぅ」
三連続は耐えられなかったかー!
特にデーハーなマイクロビキニを着用していて、セクシー&ダイナマイトとか言っておきながら、実際はツルペタ&ロリポップキャンディだったのがこたえたらしく、「セクシーDVDのジャケットと中身が、全然違うじゃねーか!?」みたいな顔をしている。
お気持ちはわかりますが、後6人残ってるんで、まだ3分の1しか終わってませんよ?
ポケ〇ンセンターで、一回全回復してきますか?
「……次、4番の方……」
「は、はい。あの、千葉県から来ました、娘野琴男……じゃなかった! 琴子です! よ、よろしくお願いしまひゅっ!」
「……キュン」
噛んじゃった!
そして司会者の方も、キュンときちゃった!!
三連続おイタさん――通称ジェットストリームおイタさん(俺命名)の後ということもあって、今のところ唯一まともで、且つ恥じらいもあり、その上ちょっとおドジさんという、
でもなあ…………『だが男だ』。
「さあ! 張り切って次の方参りましょう! 次は5番と6番の方が、同時に自己紹介されるそうです!」
「この世の悪を吸い寄せる!」
「正義の磁力で吸い寄せる!」
「「私達放課後電磁波クラブ! 見! 参!」」
「……」
「放課後電磁波クラブがお送りする」
「ショートコント」
「「『ママ友マウント合戦』」」
「……ハァ」
司会者の方のメンタルが、タワーでオブなテラー並みに乱高下している!
あとさっきから、放課後電磁波クラブのコントがどれも、ネタ的に笑い辛いよ!
そもそも
「……では次、7番の方、どうぞ……」
「お、いよいよウチの出番やな。せやかて工藤! 伝説の宇宙海賊ギャラクシーエキセントリックエッセンシャルパイレーツの元キャプテン、ピッセ・ヴァッカリヤとはウチのことや! せやかて工藤! あと、
「……フフフフ」
何回『せやかて工藤!』言うんだよ!?
お前の関西弁アピールで思い付いたの、それしかなかったのか!?
ちなみに『せやかて工藤!』は、原作では一回も言ってない台詞だからな!?(豆知識)
ついに司会者の方のSAN値がゼロになって、「パト〇ッシュ、僕はもう疲れたよ……。でも最後に一回だけ、風俗行ってくるね」みたいな顔になっちゃったじゃないか!
もうこれ以上の続行はドクターストップだよ!
「…………次、8番」
「はい。みんなと同じく千葉県から来た本谷菓乃子です。よろしくお願いします」
「……オォ」
奇跡のメンタルV字回復キターーー!!!
やっぱこういう時は菓乃子だぜ!!
よく考えたら、9人も女性がいて(一人は男だが)、まともなのって菓乃子しかいないんだよな。
マジでこのメンバーに菓乃子がいなかったらと思うと、冷や汗が止まらないぜ。
「あー、菓乃子氏、ちょっとそれじゃあ面白味に欠けるわね。はいこれ」
急に沙魔美がしゃしゃってきて、菓乃子にコップに入った謎の液体を渡した。
あ、あれはもしや!?
「え? 沙魔美氏、何これ?」
「ただの烏龍茶よ。ささ、グイッといっちゃって」
「う、うん」
マズい!!
この展開、ぐらん〇るで死ぬ程観たぞ!?
グイッ
「…………」
「おや? 8番の方、どうかされましたか?」
「アァ~ン?」
「!?」
「どうかされましたかじゃねーだろーがこの〇〇ヤローが!!」
「えー!!!」
ジーザス。
遅かったか。
「さっきからオレらのこと、ピンサロの待合室で写真指名してる仕事帰りのサラリーマンみてーな眼で見やがって、オレらはお前の〇〇〇じゃねーんだぞ、この〇〇〇〇がー!!」
「す、すいませんでしたー!!」
見せられないよ!
マイガッ!
司会者の方、逃げて超逃げて!!
「まあまあ、菓乃子氏、この〇〇〇〇には、後でタップリ〇〇しましょ? 今は抑えて抑えて」
「チッ、しゃーねーな。その代わり沙魔美、お前のパイオツ揉ませろやゴルァ!」
「え!? そ、そんな、それはダメ……ひゃあぁん」
「菓乃子! ジブンどないしたんや!? まさかジブン、そない酒乱やったんか!?」
「うるるるせーぞピッセェェ! お前のも揉んでやるから、文句言うんじゃねえ!」
「ちょ!? か、菓乃子! ウチはこない人前では……あひぃぃん」
あーもうめちゃくちゃだよ。
「で、では最後に9番の方、どうぞー!!」
「どうも、私が伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンです」
「誰か警備員の人来て―!!!」
来年はもう絶対に、海には来ないようにしよう(決意)。
「アッハハー、では私はひと泳ぎしてきますんで、終わったら呼んでください」
「未来延ちゃん!? ちょっと待ってよ未来延ちゃん! 未来延ちゃああああん!!」
結局この大会は、消去法で娘野君が優勝しましたとさ。
めでたしめでたし(?)。