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第3曲目(12/14)ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜

 「おーい!甘子!5番テーブルのお客さんの料理が出来たぞ!運んでくれや!」


 厨房の方から、甘子さんを呼ぶ大将の声が聞こえてくる。


 「私、もう行かなきゃ。来夢ちゃん。大丈夫?」


 「グス……。あ、は、はい!大丈夫です。急に、ごめんなさい。それじゃ失礼します」


 「またね。来夢ちゃん」


 そう言って甘子さんは、店に戻った。


 更衣室兼荷物置き場として、使わせてもらってる2階の応接室で着替え終えた私は、居間でテレビを観てるミラを迎えに行く。


 「ミラ、お待たせ。さあ、行くわよ」


 「はーい!あれ?ライ様。目が赤いのだ。もしかして、泣いてたのか?」


 「な、泣いてなんかないわよ!こ、これはあれよ、〝鬼怪獣オニオンのタマネギガス〟を浴びちゃったのよ。アハハ」


 「ライ様、オニオンって何じゃ?」 


 「オニオンってのは『ウルトラマンレオ』第27話『強いぞ!桃太郎!』に登場する怪獣の名前よ。鬼みたいな姿をしてて、口から涙が止まらなくなるタマネギガスを吐くのよ」


 「えー?そんなガス浴びたくないのじゃ」


 「ミラも良い子にしてないと、オニオンがタマネギガスを浴びせに来るわよ〜!?オニオンだぞー!!ガオーッ!」


 ミラに余計な心配をさせたくない私は、怪獣オニオンのモノマネをして戯けてみせる。


 「アハハ!ライ様。全然怖くないのだ」


 ミラは、そんな私を見て楽しそうに笑った。ありがと!あんたの笑顔のおかげで、少し元気出てきたわ。


 私たちは、お店の裏口から外に出る。えーと、時間は19時50分か。ちょうど約束の時間にファミレスに着きそうだな。


 「あー、ミラ。帰る前に寄るところあるんだけどいい?」


 「え?別にいいけど。どこ行くのじゃ?」


 「駅前のファミレスの〝シャイゼリア〟よ。友達と会う約束あるんだ。ケーキとかアイス食べていいからさ」


 「本当!?やったー!行く行くのじゃ」


 ケーキやアイスの事を聞いた途端、ミラはバンザイしながら喜んだ。この辺はまだまだ子供なんだな。


 「あー、あとさミラ。もしかして、私の友達は怒り出すかもしれないけど、ビックリしないでね」


 「え?どうしてなのだ?」


 「ま、まあ、ちょっと色々あってね」 


  そんな事を話してるうちに、集合場所のシャイゼリアに着いた。店内に入ると、入り口付近の席に座っていた菜々子が、私を見つけて手を振ってくる。皇も菜々子の隣に座っていた。


 「菜々子、皇。お待たせ。待った?」


 そう言って、私達は席に着く。


 2人とも私より大分前に到着していたらしく、菜々子はピザとサラダとドリンクバーを、皇はソーセージの盛り合わせと赤ワインを飲み食いしていた。


 「来夢ちゃん、その子誰?」


 菜々子が、キョトンとした顔でミラを見つめる。


 「ら、来夢?いつの間に、そんなデカいガキを産んでたんだよ!?」


 皇も驚いた表情で、私とミラの顔を交互に見つめる。


 「私の子供じゃないわよ!〝かくかくしかじか〟……ってな訳よ」


 私は、大将達に説明したのと同じ理由を2人に話す。


 「そうだったの?やーん♡ミラちゃーん可愛い♡お姉ちゃんは七海菜々子って言うの。よろしくね!来夢ちゃん、頭をナデナデしたいから席を少し代わって?」


 「あ、ああ。いいわよ」


 ミラの隣に座った菜々子は、嬉しそうに頭を撫で回したり、抱っこしてあげたりしてた。


 「キャー!可愛い♡可愛過ぎる♡が一緒に暮らしたい!」


 「アハハ!〝ナナ様〟くすぐったいのだ!」


 菜々子、中学生と間違えられるくらい見た目が幼いからな。こうして、2人並ぶと姉妹みたいだ。


 あれ?菜々子って、いつから自分の事を〝ナナ〟って呼ぶようになったんだっけ?確か、昨日(※1)は〝私〟って呼んでたような……?ま、いいか。


 「アタシは、昴皇さ。よろしくな!ミラだっけ?ま、挨拶代わりに一杯飲むか?」


 皇は、そう言って飲みかけのワイングラスをミラの口元へ向ける。


 「いや、この子は5歳なんだから飲ませんなって!久々に本編に登場した途端、事案になりそうな事をすんなよ!」


 「何だよ〜♪第2.5曲目とか、第3曲目(1/14)にも登場したろ?」


 「ありゃ、番外編や夢の中だからノーカウントなの!」


 「えー?そうなのかい?」


 「そ、そんな事よりも、来夢ちゃんはバイト中だったから知らないかもしれないけど、今度の〝超鳴井界町ちょうないかいちょう祭り〟内の「ご当地ヒーローショー」イベント内の「ミュージックフェス」にスーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズが出演する事になったの!」


 はい!やっぱり今日はその話でしたか。よーく存じてますよ菜々子様!私も大事な話……というか〝オキシジェンデストロイヤー〟(※2)クラスの爆弾発言があるのよ!


 「おっ、アタシも昼間見たぜ!確か開催日は△△月▲▲日だから、約1ヶ月半後くらいか。セトリはどうするか?ラッキーなのは、ライブハウスじゃないから、チケットノルマが無いんだよな♪アタシらの場合は、売れないから毎回自腹で買い取ってたからさ。キャハハ!」


 「皇ちゃん、それ笑えないからね。スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズもチケットノルマくらいは、そろそろクリア出来るようにならなきゃ。来夢ちゃんもそう思うでしょ?」 


 「あ、ああ。そ、そうね」


 〝ドクン!〟、〝ドクン!〟、〝ドクン!〟


 自分の心臓の鼓動が聞こえてくる!い、言わなきゃ!言わなきゃ!言わなきゃ!


 「来夢ちゃん?大丈夫?顔色悪いわよ?」


 〝ガバ!〟


 「ラ、ライ様……?」


 「あん?どうした来夢?いきなり、土下座なんかして?やめろよ!他のお客さんとか店員さんが見てるから恥ずかしいじゃないか?」


 「皇!菜々子!ごめん!ごめん!私、とんでもない事をしちゃって!じ、実は〝かくかくしかじか〟なのよー!自分勝手な事をして本当にごめんなさい!!」


 私は、土下座しながら昼間のバイト先での出来事を2人に話した。


 「えー!スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズが、ダイヤモンドブレイカーズとバンド解散を賭けた〝対バン決闘〟ですってー!?う、ウソでしょ?そ、そんなの絶対に向こうが勝つに決まってるじゃない!あ、あわわ!ナ、ナナ達、ど、どうすればいいの?」


 「あ、アハハ!今の話はアタシも予想外の超展開だわ!さすが、来夢!アンタ悪い意味で〝持ってる〟ねー!この状況は、特撮番組のサブタイ風に言うと『スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズ最後の日!』か、『さらば!スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズ!』か、もしくはかーなーりマニアックになるけど『あっ!スーパーヒーローもヒロインも氷になった!!』(※3)のどれかって感じじゃないか!?ここから、どうやれば特撮番組みたいに逆転勝利が出来るんだよ?アハハハハハ……」


 私の告白に、菜々子はパニック状態となり、皇は呆れ顔のまま乾いた声で笑うのだった。




 ※1…第1曲目(3/4)参照。


 ※2…映画『ゴジラ』(1954年11月3日公開)に登場したゴジラを倒した兵器の名前。


 ※3…意味が分からない人は『ウルトラマン80最終回サブタイトル』で検索してみてください(笑)

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