「それじゃ、ベガタブちゃん!〝カムバック!キュンキュンメモリアルアイテムセンター〟を発動頼むのじゃ!」
ミラは、ベガタブに超科学アイテム発動の指示を出した。
やった!これで、ギターが戻ってくるのね!
「ラジャー!〝カムバック!キュンキュンメモリアルアイテムセンター〟ヲ ハツドウシマス!」
ベガタブから、電子音声が鳴り響く。
〝ボン!〟
次の瞬間、部屋一面を覆うような煙が立ち込めてきたわ。
「ゲホゲホ!な、何?これ?」
……煙が晴れると、スキンヘッドに色黒で、サングラスを掛けてスーパーマ〇オみたいな髭を生やして黒いタキシードを着た男が立っていた。
更に、ジェンダーレス生春巻よりもマッチョな体格をしていたわ。あと、靴を履いたままなんですけど!ここ私の部屋の中なんですけどー!?
??……っていうか、この人誰よ?ヤクザ?マフィア?どこから入ってきたの?そんな事よりも私のギターはどこ?
「おどれか?俺を呼んだのは?ああーん!?はよ、用件言わんかい!
タキシード男は、ドスの効いた声で私に話しかけてきた!
な、何なのこの人!?も、物凄く迫力あって怖いー!……あれ?復元って言ってなかった?もしかして!?
「あ、あのー。ひ、ひょっとして、超科学アイテム関係の御方でしょうか?え、エヘヘへ」
「そうじゃ!最初から言っとるだろう!ボケー!俺は〝カムバック!キュンキュンメモリアルアイテムセンター〟の
「ヒィィー!あ、ありません!ありません!」
な、何でギターを復元させる超科学アイテムを発動させたら、こんなヤクザみたいな怖いオジサンが出てくるわけ?全然意味分かんないわよ!
「わ、私のギターを復元してもらいたくて超科学アイテムを発動させて頂いたつもりなんですが、どうして貴方様のような御方が、こんな汚い部屋にいらっしゃったんでしょうか?ア、アハハハ!」
カン・テイシーと名乗るタキシード男を怒らせないように、出来るだけ丁寧な言葉を選びながら、質問した。
「おどれ!なめてんのか!俺は〝カムバック!キュンキュンメモリアルアイテムセンター〟のプログラムが〝擬人化〟した存在じゃい!」
カン・テイシーは、再び私を怒鳴る。怖ーい!結局、何て言っても怒るんじゃないの。
「プログラムが擬人化した存在?それじゃ、貴方様が私のギターを復元してくれるんですか?」
「ああ。まずは証明出来るもん見せんかい」
「証明出来る物?」
「そうじゃ!おどれが復元してもらいたいちゅうギターの写真と、それが間違いなく〝おどれの物〟である証明を俺に見せろ言うとんやろが!」
「ライ様。ここは言う通りにした方が良いのじゃ」
ミラが、私に耳打ちする。……あんたが、この超科学アイテムの使用を躊躇ってた理由が、やっと分かったわ。
証明出来る物か……。あ!そうだ!アレがあったわ。
私は、スマホに保存してあった写真をカン・テイシーに見せる。
それは、ギターを買った日に嬉しくて実家の玄関前でギターを持ってる所をお姉ちゃんに撮ってもらった写真であった。
「あ、あの。これじゃ証明にならないでしょうか?」
「……まあ、いいじゃろう。んで
「は?ざ、材料ですか?……それって何の?」
「おどれ!ホンマに俺の事をなめとんの!!
えー?ギターを復元してもらうのに材料を用意しなきゃいけないの!?そんな話は聞いてないわよー!
ここまで来たら他に方法も無いので、言う通りにするしかない。それにしてもギターの材料って何を用意すりゃいいのかしら?
「あのー。カン・テイシーさん。ギターの材料って、何でしょうか?」
「そんな事も知らんのかい!しかたないのう!大サービスで教えてやるから、よーく聞け!復元するのに必要な材料は4種類じゃ!1つ目は〝長さ1メートルの木の枝10本〟、2つ目は〝空き缶50個〟、3つ目は〝この近所の和菓子屋「女豹屋」で1日10箱限定の「辛子明太子キムチ和え大福」〟じゃ!……最後の1つは、この3つを集めてきたら教えてやる」
「な、何ですかそれー!?いや、どれもギターに関係ない物ばかりじゃないですか?大福に至っては食べ物だし!しかも、何で今発動したばかりの貴方様が近所の和菓子屋の限定商品を知ってるんですかー??」
カン・テイシーのツッコミどころ満載の回答に、私は遠慮なくツッコミを入れる。
「……いかんのか?」
「え?」
「ギターの材料が、木の枝や空き缶に、大福じゃいかんのか?と聞いとるんじゃい!そんなもんおどれら地球人の偏見だろうが!喧嘩売っとるんか?ワレ!」
カン・テイシーは私の胸倉を掴んで、そう言って怒鳴ってくる。
「いいえ!いいえ!問題ありません!だから、そんなに怒らないで!ヒィーン!!」
「あ!そうじゃ!言い忘れておった。
「はあぁー?わ、私の部屋に住む?あ、貴方様が!?」
それって、居候が増えるって事じゃない!しかも、こんな怖い人が?
そんなの嫌ぁぁぁー!
「おどれのテストが終わるまで、俺は擬人化システムを解除出来ないんじゃ!安心せい!今、言ったように俺は擬人化プログラムじゃから、飯は食わなくても大丈夫だから食費の心配はいらん!」
「……わ、分かりましたよ。どうせ断ってもダメなんですよね?それじゃ、せめて靴を脱いでくれませんか?」
「ダメじゃ!一体化してるから脱げん」
「え、それじゃ部屋が汚れる……」
「……拭けばええやんけ」
「はい?」
「汚れが気になるんなら、おどれが拭けばいいだろうが!ボケー!」
「ええええええー!!まさかの逆ギレですかー!?」
何なのコイツ?言ってる事が無茶苦茶じゃない!
ああ、こんな事なら酔った勢いで、ライブハウスで喧嘩なんてするんじゃなかった!そしたら、こんな超科学アイテムにも頼らなくて良かったのに!バカバカ!私のバカー!
「それじゃ、俺は休憩させてもらうかの」
そう言って、カン・テイシーは部屋の冷蔵庫を勝手に開けて缶ビールを取り出し、更に台所に置いてあるポテチを取ると、居間のテレビを点けた。
……って、冷静に解説してる場合か!私!せっかく今夜のお楽しみに買ってきたビールとポテチに何する気よ!?
次の瞬間、カン・テイシーは胡坐をかいて、テレビを観ながらポテチ食べて、ビールを飲み始めたのだ!
「ち、ちょっとー!何するんですか!それ、私のビールとポテチですよ!何勝手に飲み食いしてんの?さっき、食事はしなくても大丈夫って言ってましたよねー!!」
今夜のお楽しみに手を付けられた私は、我慢できずに少し強めの口調でカン・テイシーに文句を言った……怖いけど。
「……口元が寂しいやんけ」
「はぁ?」
「ただ黙ってテレビを観てるなんて、口元が寂しいやろうがー!ビールとポテチのお供があったってええじゃないか!あれか?擬人化システムは、ビールやポテチを飲み食いしちゃいけないなんて誰が決めたんじゃい!無駄口叩いてないで、さっさと材料を探しに行かんかーい!」
「は、はーい!分かりました!ミラ行くよ!」
カン・テイシーに怒鳴られた私は、ミラの手を引き部屋を飛び出した。
「むうぅー!ミラ、今回ほとんど出番無かったのじゃ」