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第4曲目(3/?) バンド回キター!ヤバい!ギターが無い!……え?話そこから?

 カン・テイシーが、私の部屋に居候して、早くも1日が過ぎた。


 〝アイツ〟に追い出されるように部屋を飛び出した後、半日くらいかけてギター復元に必要な材料である〝長さ1メートルの木の枝10本〟と〝空き缶50個〟は揃えられた。


 木の枝は、近所の☓☓山公園で簡単に集められた。


 空き缶の方は〝それ〟の回収を生業とするホームレスの方に『てめーら!人のシマを荒らしてんじゃねー!』と怒鳴られた事もあったが、町中を回って何とかなったわ。


 しかし、3つ目の材料の〝近所の和菓子屋『女豹屋』で1日10箱限定の「辛子明太子キムチ和え大福」〟は、既に売り切れだったので入手出来なかったの!


 名前聞くだけで食欲失せそうな商品なのに、よく10人も買うお客さんがいたわね?


 現在の時刻は、そんな翌日の午前5時。私とミラが『女豹屋』で、限定大福を買うために並んでいる所から、今回の話はスタートよ!


 「はあ。世間には『ぼっち・〇・ろっく!』とか、『ロックは〇女の嗜みでして』とか、ガールズバンド作品は数多くあるけど、のは、この作品くらいなんじゃないの?……他にあったら、ごめんなさい」 


 「ライ様。何をブツブツ言ってるのだ?」


 「あ、いや何でもないわよ。ミラ悪かったわね。朝早くから付き合わせちゃって」


 「ううん!気にしないで大丈夫なのじゃ!」


 ミラは笑顔で答える。うう!私の曾孫とは思えぬくらい出来た子だわ!ひいおばあちゃん、泣きそうよ!


 本当はミラをこんな時間に連れ回したくは無かったが、あのカン・テイシーと2人きりにさせておくと〝事案になりそうな何か〟が起きそうな気もしたので、迷ったけど連れて行く事にした。


 こんな時間にも関わらず、女豹屋の前には限定商品目当ての先客が並んでおり、私達の順番は10組目だった。


 開店まで5時間もあるけど、このまま並んでればギリギリ買えるわ。


 「あーあ。5時間も暇潰しするのも大変だー!うん?」


 ふと、ミラを見ると周囲の様子や歩いてる人々を楽しそうに眺めてる。


 「ミラ、やけに楽しそうね?退でしょ?見てて楽しい?」


「うん!とっても楽しいのだー!確かにミラのいた2110年と比べたら、人が自分で車を運転していたり、コンビニもセルフレジはあるけど、人が店員さんとして品出しやお金の管理しなきゃいけないとか不便そうな所はあるけど、その分人間味もあって、暖かく見えるのじゃ!」



 「ふーん。85年後は、車の運転やコンビニは完全自動化になってるのか。まあ、この時代でも車の自動運転化とかは、少しずつ進んでるみたいだしね。2110年は快適そうで楽しそう!羨ましいわー!」


 「それは違うのだライ様。過去や未来の良い所を羨むんじゃなく、んじゃないか?と思うのじゃよ」


「う!ご、ごもっともでございます」


 ミラの大人な話を聞いて、私は思わず敬語で答える。


 現在と未来の2つの時代を行き来してるから、こんな風に考えられるのかしら?


 ……それから私達は、他愛もない話をしてる内に7時になった。後、3時間か。


 その時、杖をついたお婆さんがフラフラと歩いてきたと思ったら、私達の近くで倒れた。


 え?ち、ちょっと大丈夫?


 前に並んでる人達は、手を貸すどころか、お婆さんの事を見ようともしない。


 まるで〝お婆さんの事なんか見えてない〟かのようだったわ。


 ううん!そんなわけない。(きっと、自分以外の〝誰か〟が何とかしてるから、関わらないようにしよう)と考えてるんだ!


 何か!(この人達と同じ真似はしたくない!私が〝その誰か〟になる!ここで、!)と思った瞬間、私は列を離れてお婆さんに向かって走り出していた。


 「ライ様、ミラも行くのだ!」


 ミラも私に付いてきた。私達は、お婆さんに話しかける。


 「お婆さん!大丈夫!?」


 「お婆ちゃん、しっかりするのだ!」


 「うう、急に目眩がしてきて……」


 「立てますか?」 


 お婆さんは立とうとしたが、無理そうだった。私はスマホを取り出し119番に掛ける。


 「動かないで!今、救急車を呼びますから!……もしもし、救急車1台お願いします!場所は和菓子屋の『女豹屋』の前です」


 ふと、女豹屋の方を見ると、私が抜けた列には新しいお客さんが並んでいた。これで、今日の分の限定大福は買えなくなったね。練習時間が1日分減るから、皇たちには迷惑をかけることになるのかな?


 私って、本当に勢いで動いてばっかりね。全然学習しないな。……初代ウルトラマン、仮面ライダー1号。でも、これで良かったんだよね?


 お婆さんの事が心配だった私とミラは、駆けつけた救急隊員に頼んで病院まで付き添う事にした。


 その後、お医者さんの話によれば、お婆さんの目眩の原因は脱水症状によるものらしく、少し休めば大丈夫とのことだった。


 「お婆さんも心配ないみたいだし、ミラ家帰ろうか?」


 「うん」


 私たちは、病院を出ることにした。


 「ライ様。ギターの材料の大福買えなかったのだ」


 「いいのよ!また明日並んで買えば……な、何よ?人の顔見てニヤニヤ笑って気持ち悪いわねー」


 「ウフフ。ライ様って酒癖悪かったり、がさつな所もあるけど、やっぱりのだ!ライ様だーい好き♡」


 な、何、き、聞いてる私が恥ずかしくなるようなことを突然言い出すのよー!!


 「よく言うわよー!あんた、この間は私のことを〝Queenクイーン Ofオブ Kuzuクズ〟呼ばわりしてたじゃない!」


 照れ隠しに、私はゲンコツでミラの頭を叩くフリをした。


 「アハハ!ごめんなのじゃ」


 「味蕾さん、ちょっと待ってください」


 玄関に辿り着いた所で、看護師さんに呼び止められる。


 「はい?何ですか?」


 「すみません。お婆さんの息子さんが今到着しまして、味蕾さんにお礼を言いたいそうです」


 「ああ、君たちが母さんを助けてくれたんですか!ありがとうございました!」


 そう言って、看護師さんの隣にいた40代くらいの男性が頭を下げてお礼を言ってきた。


 「いえ、当たり前の事をしただけです……あれ?」


 ?どこだっけ?


 「うん?もしかして、この間の夜中に××山公園で姉妹喧嘩してた子じゃないか?やっぱりそうだ!味蕾来夢さんだよね?ほら、あの時の警官だよ!」


 あー!思い出した。華印かいんがタイムワープした直後、私たちを職質してきたお巡りさんじゃないのー!(※)


 「お巡りさん、あの時はお騒がせしてごめんなさいなのだ」


 ミラが、お巡りさんにお辞儀をする。


 「妹ちゃん、礼儀正しいなー!相変わらず姉妹仲良さそうだね。あんな時間に「女豹屋」の前にいたって事は、もしかして限定大福買うために並んでたのかい?」


 「ええ。まあ、そんな所です」


 お巡りさんに対して嘘は言いにくかったので、私は正直に話す。


 「そうか。母さんのために悪かったね」


 「いいんですよ。お婆さん大した事無さそうで良かったですね」


 「……もう1度原付の免許証見せてくれるかな?」


 「え?わ、私、何も悪い事してませんよ?」


 「分かってるよ。ダメかな?」


 相手はお巡りさんな上に、1度見せてる相手だから、まあいいか。


 私は、免許書を見せる。


 「うん。やっぱり住所は××山公園の近所だね。ありがとう!」


 「??じゃあ、私はこれで」


 ……病院を出た私たちは、カン・テイシーが留守番してるアパートに帰ってきた。


 「た、ただいま……です。あのー、も、戻らせて頂きました」


 玄関を開けた私は、小声で呟く。うう!何で私が、居候のアイツに気を使わなきゃいけないのよー!


 「こらぁぁー!!おどれら!大福買うのに何時間かかってんじゃー!このバカたれー!!」


 扉を閉めた瞬間、居間からカン・テイシーの怒鳴り声が聞こえてくる。


 「ひいぃー!い、色々とありまして。そ、そんなに怒らないでくださいよー」


 「……寂しかったやろがい」


 「はいぃー?」


 「話し相手がおらんくて、寂しかったって言うとるんやろうが!!ボケー!!擬人化システムを寂しがらせて壊れたら、どう責任を取るんじゃい!?ホンマにしばくど!!」


 カン・テイシーは、私の胸倉を掴んで怒鳴る。


 「ごめんなさい!ごめんなさい!そんな顔して寂しがり屋なんて、意外ですねー。ウサちゃんみたい♡」


 「ああん?俺をバカにしてんのかーい!!」


 「してませんよー!うえーん!」


 ああ、!早くギターを復元して消えてくれないかしら?


 カン・テイシーの前では、ミラも委縮してしまってるのか、黙ってこのやり取りを見てるだけだった。


 そんな不毛なやり取りをしてる内に、あっという間に夕方になった。


 あ、そろそろ夕飯のおかず買いに行かなきゃ。


 〝ピンポーン〟


 「え?誰かしら?」


 ドアスコープを覗くと、あのお巡りさんが制服姿で立っていた。


 何で、お巡りさんが私の部屋に?ちょうどいい!カン・テイシーを逮捕してくれないかしら?……無理か。


 そんな事を考えながら私は、玄関を開けた。


 「やあ!今朝はありがとう!味蕾さん!これ、母さんを助けてくれたお礼を届けに来たよ」


 そう言って、お巡りさんが渡してくれたのは、ギターの材料に必要な「辛子明太子キムチ和え大福」だった!


 「え?これもらっても良いんですか?」


 「もちろん!そのために持ってきたんだし」 


 「これは1日10箱限定だから、今日の分は売り切れなのでは?」


 「あの店の若大将は本官の同級生でね。事情を話して、特別に作ってもらったんだよ」


 私のために、そこまでしてくれるなんて!このお巡りさん、良い人だなぁ!


 「ありがとうございます!これでギターが戻ります!」 


 「え?ギター?限定大福と何の関係があるの?」


 「あ、いえ。こちらの話です。アハハ!」


 「それじゃ本官は夜勤があるので!失礼しました!」


 そう言って、お巡りさんは敬礼をすると帰っていった。


 さーて、これで1!もう少しでギターが戻ってくるわよ!




※第2曲目(5/5)参照






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