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第4曲目(4/?) バンド回キター!ヤバい!ギターが無い!……え?話そこから?

 「カン・テイシーさん、これ3つ目の材料「辛子明太子キムチ和え大福」です」


 私は、カン・テイシーにお巡りさんから貰ったばかりの大福の箱を渡す。


 「おう!やっとかい!待たせたのー!それじゃ、早速頂くとするか」


 受け取ると同時に、カン・テイシーは限定大福をムシャムシャと食べ始めた。


 「うわー!これ不味いのう!ホンマ不味いわぁ」


 「ち、ちょっと何食べてんですかー!?いや、確かに〝辛子明太子キムチ和え大福〟なんて聞いただけで不味そうではありますけども!……じゃなくて!その大福はギター復元の材料に必要なんじゃないんですか?」


 せっかく、お巡りさんがお店の若大将にまで頼んでくれた大福に何てことしてくれてんのよコイツ!


 「……取り込んでるんやろがい」


 「はい?……って、またこのパターンですか?どうせ、逆ギレして私の事を怒鳴るんでしょ?」


 「そうじゃー!ようやく、おどれも学習したのー!!文句あるんかいボケー!」


 もはや、お約束のようにカン・テイシーは、私の胸倉を掴み怒鳴る。


 「びえーん!やっぱりこのパターン!そ、それじゃ、〝木の枝〟や〝空き缶〟も食べて材料として取り入れるんですよね?」


 「そんなモン食えるかー!バカタリがぁぁー!お腹ポンポン壊しちゃうだろーが!」


 カン・テイシーは、私の胸倉を掴んだままブンブン私の体を揺らしながら怒鳴る。


 ああーん!こんな面倒くさい超科学アイテムを作ったベガ星人にクレーム言ってやりたい!


 どさくさに紛れて〝ポンポン〟なんて呼び方してるけど、全然可愛くないんだからね!


 こんな怖そうな奴じゃなければ、私も反撃してやりたいんだけどなー!


 「まあ、よく3つの材料を集めてこれた。おどれもやるやんけ。約束通り最後の材料を教えてやるかの。おどれは、〝チーム喪慧喪慧モエモエ怒無羅威巣オムライス〟は知っとるか?」


 私から手を離したカン・テイシーは、そう言った。


 チーム喪慧喪慧怒無羅威巣というのは、この〝ちょう鳴井ないかいちょう〟を縄張りとしてるレディースの事だ。


 週末の夜になると、近所の公園やコンビニの駐車場で、背中に金色の糸で「チーム喪慧喪慧怒無羅威巣」って刺繍されてる真っ赤な特攻服を着て、お約束のウンコ座りしてたむろしてるのを私も見かけた事がある。


 多分、令和の東京都内で昭和のヤンキー漫画に登場するようなバリバリのレディース暴走族がいるのって、私達の住む〝ほっ戸怒とどっ〟くらいなんじゃないかしら?


 そのチーム喪慧喪慧怒無羅威巣が、最後の材料とどんな関係あるのかな?っていうか、何でコイツが近所の暴走族事情に詳しいのよ?……どうせツッコミを入れたら逆ギレするから言えないけど。


「はあ。まあ、知ってますけど」


 「そうか。なら話は早い。その総長である音鳴果音おとなりかのんちゃんが。それが〝〟じゃい」


 「はあああー!?喪慧喪慧怒無羅威巣の総長が巻いてるサラシですかぁぁー?」


 今までの材料も空き缶や限定大福など、ギターに関係ない物ばかりだったけど、最後の最後に言ってきたのがサラシだなんて??


 今まで以上にギターに関係ないじゃない!本当にコイツに任せて大丈夫なのかしら?


 「ライ様。サラシって何じゃ?」


 「あー、サラシってのは、レディースの女の子が胸やお腹を隠すのに巻く白い布のことよ」


「レディースって、何なのだ?」


 「え?話そこから?」


 「うん!そこからなのだ♪」


 「そこからかぁ~」


  まあ、よく考えたら私は実家でパパの持ってたヤンキー漫画を読んでたからレディースの事を知ってたけど、この時代の若い子ですら〝暴走族〟自体の事を知らない子もいるだろうから、85年後の世界から来たミラが知らないのも当然か。


「あのね。ミラ、レディースってのは〝かくかくしかじか〟……ってなことよ」


 私は、ミラにヤンキー漫画で得た知識を元に、暴走族やレディースの事を説明する。



 「ふーん。そうなのか。そのレディースの女の子のサラシが、ギターの材料になんかなるのか?本当は、この……あっ!」


 ミラが(しまった!)って表情をして慌てて口を閉じる。


 今の言葉はヤバい!またコイツ逆ギレするかしら?み、ミラの胸倉を掴んできたら、わ、私が守らなくちゃ!こ、怖いけど!


「……嬢ちゃん!オイちゃん、その子のサラシが無いとギターを復元出来ないんやでぇー。決してオイちゃんがサラシを欲しいから言っとるわけやないんや。分かっとくれや!……ホンマは少しだけ欲しいけど♡」


「はーい!分かりましたのだ」


 カン・テイシーは、子供のミラ相手だからなのか、引きつった笑顔をしながら、いつもより優しい口調で話す。


 いつもに比べると、ホンのチョッピリだけどね!


 「……今さり気なく『少しだけ欲しいけど♡』って言いませんでした?やっぱり、自分が女の子のサラシ欲しいだけなんでしょ?」


 少し態度が違うカン・テイシーに、私はここぞとばかりツッコミを入れてみた。


 「うっさいわー!悪いんか!?こっちはベガ星から、地球みたいな田舎星まで来てやってんだぞ!可愛い女の子のサラシを少しだけ欲しいと思って何が悪いんじゃい!ボケー!」



 私は、再びカン・テイシーに胸倉を掴まれて怒鳴られる。


 「ぎゃびえーん!私とミラとじゃ態度が違い過ぎませんかー!?後、どうして会った事もない総長の女の子が〝可愛い〟って分かるんですかー?」


 「そんなの俺の直感じゃい!レディースの総長の娘は、みんな可愛いと相場が決まっとるんじゃーい!」


 「は、はいー!分かりましたよ!私が悪かったでーす!あ、あの一応聞きますけど、その子のサラシじゃないとダメなんですか?同じような物をドン〇ホーテとかで買ってきたんじゃダメでしょうかー?」


 「ダメに決まっとるやろうが!音鳴果音ちゃんが巻いてるサラシ以外は、材料にならないんじゃ!言っとくが、俺は手伝うの面倒くさいからこの部屋から出んからな!」


 もう、これ以上話しても無駄みたいだ。ここは言われた通り、音鳴果音って子のサラシを手に入れるしかないみたいね。……物凄く嫌だけど。


 幸い、今は金曜日の夕方だ。もう少し経てば喪慧喪慧怒無羅威巣の連中と会える可能性が高い。


 でも、流石の私も1人きりでレディースの元へ行くなんて怖い!


 それに、今度ばかりは危険だからミラを連れていく事も出来ないわ。


 どうする私?バイトも休みなのに、甘子かんこさん達にミラを預けるのも悪い気がする。


 ……そうだ!レディースの所に行くのは皇に付き合ってもらおう!


 アイツがいれば、心強いわ!


 そう思った私は、皇に電話を掛ける。


 〝プルルル!〟〝プルルル!〟


 「あーん?来夢か?どうした?『電撃戦隊チェンジマン』の再放送でも始まったのか?」


 数回のコール音の後に皇が電話に出た。


 「えー!本当に?観たい!観たい!……って、そうじゃなくて!あのさ、皇。今夜、少し私に付き合ってくれない?」



 「悪りぃ!今、借金取りに捕まってさ、どこかの金持ちの地下シェルターを作る地下労働施設にいるんだわ。2日後には帰れるから今夜は無理!キャハハ!」


 「カ〇ジかよー!アンタ、帝愛グ〇ープから借金してたの?」


 「何を訳分かんない事を言ってんだよ?ここ思ったより働きやすい環境だぜ?1日働くとペロカって通貨をもらえるし、それで買う焼き鳥とビールは悪魔的な美味さなんだよー!ちょうど今、ってるところさ!かぁー!美味ぇー!」


 「やっぱり、カイ〇の地下労働施設じゃないのー!2日後には超鳴井界町に帰ってこれるんでしょうね?」


 「大丈夫!それは間違いないからさー。じゃあ、またな!」



 皇は、そう言うと電話を切ってしまった。まあ、今の感じだと電話も通じるし多分大丈夫だろう。そういえば、地下労働施設ってスマホの電波届くのかしら?……ま、そんな事はどうでもいいか。


 これで今夜、チーム喪慧喪慧怒無羅威巣の所に乗り込むのは、私だけで行くしかないってわけか。


 いいわよ!元々は私が悪いんだし、対バン決闘まで時間も無いから、1人でもやってやろうじゃないの!!


 さて、私が出かけてる間にミラを預けられるのは……え?カン・テイシーだけ!?コイツに「ミラと一緒に留守番を夜露死苦よろしく!」ってな感じで頼んで本当に大丈夫なのかしら???




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