「……ご馳走様でした」
「ご馳走様なのだ」
「おう!この〝カップラーメン〟とかいう食い物、不味くは無かったのう」
私達3人は、夕飯を食べ終えた。私のメニューはライスと野菜炒め。……お金が無いので、具はスーパーで100円以下で買ったモヤシしか無いんだけどね!だから、正確に言うとモヤシ炒めなのよ!はあー、貧乏が憎い!コンチクショー!
ミラは、未来から持ってきた超圧縮保存食品の中からレンチンした親子丼だ……。う、羨ましい!私より良いもの食べてるな〜。
カン・テイシーは、『おどれ!俺だけ晩飯を食わせんつもりかい!』と怒鳴ってきたので、私の明日の朝食用に買ってきたカップラーメンを仕方なく与えた。
最初は『擬人化システムだから、飯の心配はいらん!』と言ってたくせに、結局ご飯食べるんじゃないの!こんなの詐欺よ!チクショー!
このまま居候されたら、食費の方が、新品のギターを買うお金よりも高くなるんじゃないのかしら!?
そうなる前に〝コイツ〟には、ギターを復元させて早く消えてもらわないと!
「もう20時か。チーム
ギターを復元させるのに必要な〝最後の材料であるチーム総長の
私は、気合を入れるため白いジーンズに〝ウルトラ警備隊〟のエンブレムがプリントされた青いTシャツの上に黒の革ジャンを着て、首元には〝仮面ライダー1号〟を彷彿とさせる紅いマフラー、腰には仮面ライダーV3の変身ベルト〝ダブルタイフーン〟を巻いた。
このベルトは、本来子供向けの玩具だけど、大人でも巻けるように改造した私の秘蔵の品よ!
よーし、準備完了!これでヒーロー達が守ってくれるような気がして心強いわ!
後は、ミラの事か。気は進まないけど、カン・テイシーに留守中は任せるしかない。
「あ、あの~、カン・テイシーさん。私、これから音鳴果音ちゃんを探してきますので、ミラと一緒に留守番してもらえませんか?」
「ああん?おどれ、俺に子守をしろって言うんかい?ええ度胸しとるのう!?どこまで擬人化システム使いが荒いんじゃ!」
カン・テイシーが私の胸倉を掴んで怒鳴る。
また、このパターンなの!?いい加減、リアクションするのも飽きてきたわよ!
「歯を食いしばれ!その腐った根性叩き直してやるー!」
カン・テイシーは、そう言うと同時に私の顔面を殴った!
「ゲドン!」
私は、殴られた勢いで『仮面ライダーアマゾン』の敵組織ゲドンの名前を反射的に叫んでしまった。我ながら、特撮バカだな。
それはともかくコイツ信じられない!女の子の顔を思い切り殴るなんて!……
まるで、
もしかして、コイツ怖いのは見た目だけで、弱っちいのかしら?
よーし、もう一度試してみよう。
「フッ!今、何かしたんですか?蚊が刺した程にも感じなかったんですけどー!?」
くー!1度で良いから『蚊が刺した程も感じなかった』って少年漫画の強キャラみたいな台詞を言ってみたかったのよ!
「ライ様、大丈夫なのか?」
ミラが、心配そうな顔をするが、私の予想通りなら
「や、やるやんけ!よーし、俺の本気を見せたるわいな!くらえ!〝カン・テイシースペシャルグレートデリシャスマックスボンバーグレートハリケーンファイナルファンタジーマッスルパーンチ〟!」
〝ポフン〟
カン・テイシーは、やたら長い技名を言った後に、
ハッ!やはりコイツとんだハッタリ野郎だったわね。今の技名も〝グレート〟って2回言ったり、どさくさに紛れて有名RPGの名前を入れたりしててセンス無い!
「その程度なの?よくも、今まで好き放題やってくれたわね〜!たっぷりとお返ししてやるわよ」
〝デコピ〜ン〟
「ぶべら!い、痛ーい!な、何すんのさー!ぼ、暴力反対よ!」
私は、カン・テイシーの額に軽くデコピンをしてやっただけなのに、大袈裟に吹っ飛んだ。
なぜか指1本触れてないのにサングラスは真っ二つに割れて、カン・テイシーの素顔が露わになった。
プッ!コイツ、少女マンガみたいなキラキラした目をしてるじゃん。グラサンキャラのお約束かましてんじゃないわよ!
「……今のデコピンは、アンタに飲み食いされたポテチとビールの恨みよ!」
〝ペチーン〟
私は2割くらいの力で、カン・テイシーの頬に平手打ちを食らわせると、再び室内を大袈裟に転げ回る。今度はなぜか、タキシードがボロボロになっていたわ。
「ぐ、ぐはあー!つ、強い!強過ぎる!ハァハァ!ま、まさか、おどれは伝説の超サ〇ヤ人なんかい!?」
「フッ!私は地球育ちの〝ただの来夢ちゃん〟さ!……今の平手打ちは、アンタに土足で汚された部屋の床の恨みよ!」
「うわー!ライ様!強い強い!まるで〝ハゲのサイ〇人〟をぶっ飛ばしてる時の孫悟〇みたいにカッコいいのだ」
ミラ、それは違うわ!
「……これは!この一撃は!ギターを無くした私の恨みよー!!」
〝ポコン!〟
私は、やはり2割くらいの力でカン・テイシーの頬にパンチを食らわせた。
「はうあ!そ、それを
カン・テイシーは、そう叫びながら玄関先まで吹っ飛ぶのだった。
あー、スッキリした!最後の1発は完全に八つ当たりだけど、これくらいで勘弁してやるわよ!
……1分後。カン・テイシーはボコボコになった顔とボロボロのタキシード姿で、私の前に正座していた。
「あ、あのー。今まで調子ぶっこいてスンマセンでした。自分、ベガ星から来た擬人化システムだし、初めての地球だったので〝舐められちゃアカン〟と思ってイキってました。ヤンチャしちまいました。本当スンマセンしましたっすー!ミラお嬢様は、責任持ってお預かりしますので、どうか安心して出かけてきてください」
カン・テイシーは、そう言って床に額を擦り付ける。
「じゃあ、任せるわよ!でも、そんな弱くて何かあった時にミラを守れるの?」
「大丈夫っす!自分は、こんな見た目なんで、空き巣とか来てもビビって逃げると思うっす」
頭を上げたカン・テイシーの顔と服装は、いつの間にか元に戻っていた。便利な体してるやっちゃなー。
でも、確かにコイツ
「ライ様、もしも泥棒が入ってきたら〝ベガタブ〟を触らせてやるのじゃ。高圧電流でビリビリなのだ!」
うっ!た、確かに〝あの電流〟は私も死ぬかと思ったからな。ベガタブには、そんな使い方もあるのか〜。
「じゃあ、明日の朝までには帰ってくるから!
「はい!行ってらっしゃいませ!」
「ライ様、気をつけてなのだ!」
アパートを出た私は原付に乗って、チーム喪慧喪慧怒無羅威巣を探すため、夜の街へ出発するのだった!