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第4曲目(7/?) バンド回キター!ヤバい!ギターが無い!……え?話そこから?

!?


「……………」


  音鳴果音おとなりかのんは、腕組みして無言で私を睨みつけたままである。


 そりゃそうよね。いきなり喧嘩腰で話しかけてきた見知らぬ女の子が、自分の巻いてるサラシを頂戴なんて言ってきたら、怒ったり不審がるのは当然か。


 もしも私が男の子だったら、今頃は〝チーム喪慧モエ喪慧モエ怒無羅威巣オムライス〟の連中全員に、袋叩きにされてたんじゃないかしら?


 カン・テイシーの奴め!今更だけど最後の材料に、とんでもない物を指定してくれたわねー!


 「なんで、アタイのサラシが欲しいんだよ!?」


 「そうすヨ!総長のサラシを手に入れて匂い嗅いだりしたいんすかヨ?それとも、その手のマニアに売るつもりなんかすヨ?」


 「チヨコうるせーぞ!アタイが、このオバサンと話してんだよ!」


 「す、すんませんすヨ。総長」


 音鳴果音の一喝で、私に絡んできたチヨコが黙る。


 「だから、オバサンじゃないわよ!私の名前は味蕾来夢なんだから!……あのさ、私は〝スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズ〟ってバンドのギターボーカルやっててさ、今度の〝ちょう鳴井ないかいちょう祭り〟のミュージックフェスに出演する事になったんだけど、今のままじゃ出演が出来ないの!フェスに出るためにアンタのサラシが必要なのよ。だから、お願いサラシ頂戴!今度のミュージックフェス絶対に出演しなきゃいけない理由があるの!!」


 私は、自分でも(そんな説明じゃ伝わるわけないでしょ!)と思いながらも、音鳴果音にサラシが必要な理由を話す。


 でも、1から説明した所で、カン・テイシーやベガ星の話なんてコイツら信じるわけないだろうな〜。


「何スかそれ?意味分かんねースよ!お前は〝アンパン〟でもキメてんスか?」


 アンパンなんて、また古い言葉出してきたな〜。確か〝シンナー〟の事よね?


  私ゃ、シンナー中毒者じゃないわよ!そう言えば197210319が、登場してたわ。


 


 現代じゃ、地上波での放送はもちろん、配信とかでも無理なんだろうな〜。


 ……って、今はそんな事を考えてる場合じゃないだろ?私!


 「サユリ!何回も同じ事言わせんじゃねーよ!アタイが、オバサン……ってたっけ?と話してんだよ!今度口挟んできたらヤキ入れるぞ!オヤツも奢ってやんねーぞ!?」


 「ご、ごめんなさいス総長。もう良い子にしてるんでオヤツの件はマジ頼んまス」


 先程と同じく、今度はサユリが黙った。そんなにオヤツ抜きは嫌なのかしら?


 「サユリが言ったように、お前の話は全然アタイには意味分かんねー。アタイのサラシと町祭のミュージックフェスに何の関係あんだよ?」


 「そりゃ、そう思うよね。でも、信じられないかもしんないけど、本当なのよ!」


 音鳴果音は、私に近付きジッと顔を見つめる。


 な、何よ!?喧嘩するヤル気?ま、負けないわよ!私だって仮面ライダーV3の〝ダブルタイフーン〟を装着してるんだから!


 「どうやら、ウソは言ってねーをしてやがる。バンドにタマ張ってるってのはマジみてーだな……別にいいぜ!そんなに必要ならサラシくれてやっても☆」


 〝ズコー!〟


 音鳴果音の予想外の一言に、私やサユリ達チームメンバー全員が盛大にズッコケる。


 「え?う、ウソ?本当にくれるの?」


 「そ、総長〜、こんな奴の言いなりになって良いんスか?」


 「この変態女にサラシを〝クンクン〟されたり、〝ペロペロ〟されちゃいますヨ?」


 「別にアタイがペロペロされたり、クンクンされるわけじゃねーだろ?このサラシも、大分傷んできたからな。ちょうど新しいのに買い替えようと思ってたし」


 「やったー!ありがとう!早く頂戴、頂戴♡」


 私はニコニコ笑顔で、音鳴果音に近づく。これでやっと全部の材料が揃う!ギターも戻ってくるわ!


 ……多分、今の私は端から見たら、ド変態に見えるんだろうな


 それにしても、コイツ意外と話が分かるんじゃない!ビビって損しちゃった♪


 「おっと!タダでもらえると思ってたのか?人の話は最後まで聞けよ来夢!


 「総長!もしかして〝アレ〟で勝負スか?」


 「〝アレ〟で勝負なんて久しぶりすヨ!」


 「おお!勝負ってたら〝アレ〟しかねーだろ!」


 !?


 あちゃー!なんてテンプレ通りな展開!話が上手すぎると思ったわよ。


 サユリ達の言う〝アレ〟って、どんな対決方法なんだろう?


 ヤンキー漫画だと〝素手ゴロのタイマン〟か、崖や港で落ちるギリギリまでバイクのブレーキを我慢する〝チキンレース〟がパターンよね?


 タイマンの場合、夕焼けの河原で思い切り殴り合った後は、お互い倒れたまま空を見つめて『やるじゃないのアンタ?』、『へっ!オメーこそな!』って言い合うのがお約束よ♡


 ……って、今は夜じゃない!その展開が出来ないじゃん!?


 「分かったわよ。それで勝負って何?やっぱし素手ゴロのタイマン?河原へ行くの?」


 「はあ?素手ゴロのタイマンだぁ?女の子の顔を傷つけるマネなんか出来っかよ!お嫁さんに行けなくなるだろーが!ナメてんのか!オメー!」


!?


 音鳴果音は、そう言って私にガンを飛ばしてくる。


 「それじゃ、チキンレースなの?崖へ行くの?それとも港の方?」


 「バカヤロー!そんなマネして大怪我したら色んな人に迷惑かけるし、オトンとオカンが悲しむだろーが!ボケがぁぁー!」


!?


 また音鳴果音はガン飛ばしながら、私の予想を否定する。


 さっきから、何なのコイツ~?見た目はバリバリの昭和レディースなのに、発言が〝良い子ちゃん〟じゃない?……もしかしたら悪い奴じゃないのかしら?


 「それにしても、オメーは素手ゴロのタイマンとか、チキンレースとか言う事が過激じゃねーか?もしかしたら、学生の頃はマジモンのヤンキーだったのかよ?コスプレオタクのクセに気合入ってるじゃねーか、人は見かけによらねーじゃねーか」


 「アンタに言われたくないわー!!……それじゃ勝負方法はどうすんのよ?」


 「来夢!この公園まで、どうやって来た?自転車チャリか?」


!?


 「え?原付だけど?すぐ近くに置いてあるわ」


 音鳴果音の質問に、私は答える。


 「へっ!ちょうど良かった。なら、オメーのカスタム単車マシンで、アタイらに付いてきな!」 



 「いや、私の単なる原付で、カスタムなんかしてないんだけど」


 「うっ!ご、ごちゃごちゃ言ってねーで、早く単車マシン持ってこいや!サユリ、チヨコ、!チーム喪慧喪慧怒無羅威巣!出発デッパツすっぞ!オメーらも単車マシンの準備を夜露死苦よろしく!」


 「「「押ー忍!総長!!」」」


 〝パラリラ~♪パラリラ〜♪〟


 暴走族定番のラッパ音を鳴らしながら、音鳴果音を先頭に、9台の原付は芽火悟磁羅めかごじら公園を出発した。


 「ち、ちょっと待ってよー!どこに行くのー!?」


 私も慌てて原付に乗って、連中の後に付いていく。


 ……チーム喪慧喪慧怒無羅威巣と一緒に走ってると、町を歩いてる人や対向車線の運転手たちの視線を物凄く感じる。


 何か、これって少し快感♡暴走族に入る人の気持ちが分かる気がする!


 20分ほど走って、私たちが辿り着いたのは超鳴井界町でも心霊スポットと噂され町の人が滅多に近寄らない廃病院であった。


!?


 チームの原付が、その玄関前で止まったので私も停車する。


 「着いたぜ来夢。ここが勝負の場所〝呉棲都ごーすと刃栖蛇摩ばすたーず病院〟だ!」


 原付から降りた音鳴果音が、目の前の廃病院を指差して言う。


 改めて聞くと、この廃病院って色んな意味で凄い名前だなぁ。何となくマシュマロの塊みたいなオバケが出てきそうな気がするわね。


 「音鳴果音、こんな所で何の勝負すんのよ?」


 「決まってるじゃねーか!肝試し対決だよ!!あと、フルネームで呼ぶんじゃねーよ!アタイの事は果音と呼びな」


 「ええー!?き、肝試し~??」


 !?


 の予想外な提案に、私は驚きの声を上げる……。


 !?





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