「肝試しで対決って、どういう事よー!?」
私は、チーム
「何だぁ?そんな簡単な事も分かんねーのか?この
果音は自信満々の顔をしながら、私にそう言う。
「そうスよ!こんなシンプルかつ、度胸が試される対決方法が他にあるんスか?あー!ひょっとしてビビってるんスかー?」
「アハハハ!ここは
サユリとチヨコが、私を挑発する。
くー!ムカつく!!ス〇夫ポジションのキャラのくせしてバカにすんじゃないわよ!誰がビビってるって!?……いや、そりゃ正直言うと怖いけどさ。
でも、ここまで来たらギターを復元してもらうため、ミュージックフェスに出演するために後には引けないんだから!
「び、ビビってなんかいないわよ!う、受けてやるから、は、早く〝肝試し対決〟のルールを説明しなさいよ!」
「よーし、よく言った来夢!この廃病院は見ての通り4階建てだよな?」
果音に言われて改めて見ると4階建てで、例えるならハーモニカみたいな横長の造りとなってる。
「
なるほど、そういうルールか。果音やサユリ達が余裕綽々の表情をしてる所を見ると、コイツら何度もこの肝試し対決をしてきたんだろうな。
……
「果音、ルールは分かったわ。でも、1つ聞いていい?」
「あんだよ?まだ何か質問あんのか?」
「アンタさ、この廃病院で肝試し対決するのは初めてじゃないんでしょ?」
「ったりめーだろ!この勝負でアタイは負けた事がねーんだよ!」
「……てことは、
「え!?ほ、
果音は、急にしどろもどろになって、訳わかんない事を言い始めた。
「おーい!おい!今、『ホンマや!』って言ったよね?もしかして、今私に言われて初めて気がついたの?その辺の事は何も考えずに、こんな所まで来たわけ?」
「あー!アハハー!そ、そんな訳無いじゃねーか!そ、そんな事はお前に言われるまでもなくアタイには、わ、分かってたさ!」
果音の目が泳ぎ過ぎて、水泳大会始めちゃってるわよ!……私の予想通りなのね。コイツ勢いだけで行動してたのか。
「あのね、果音。何でも勢いや感情に任せて行動すりゃ良いってもんじゃないよ。時にはちゃんと考えて動かないと痛い目に遭うからね」
「うぐ!」
私に図星を突かれた果音は、そう叫ぶと黙ってしまう。
もしも
〝人の振り見て我が振りなおせ〟とは、よく言ったもんね。私もマジでこれから気をつけるわ。
「そ、総長、確かにコイツの言う通りフェアじゃないス。自分も今まで気がつかなかったスよ〜」
「こんなハンデ特盛りメガMAXの状態で、勝っても自慢にならないすヨ。逆に、チームの看板に傷がつくかもすヨ」
サユリとチヨコはアタフタしながら、無言の果音に話しかける。
「だー!!わーったよ!!それじゃ少しルールを変えるぜ!まずアタイが先に行く。そしてアタイのタイムより+10分以内に戻ってこれたら、来夢の勝ち。これで文句ねーだろ?」
「つまり、アンタが10分で帰ってきたとしたら、20分以内に戻れれば私の勝利ってことか」
「その通り!それじゃ、早速おっ始めようじゃーねーか!」
「すいません。総長、ちょっといいですか?」
果音が廃病院に突入しようとした瞬間、チームメンバーの1人が呼び止めてきた。
そういや、コイツら全部で9人いたのよね。
さっきから果音とサユリ&チヨコしか喋ってないから、3人しかいないと思っちゃったじゃないのよ!
「あー?えーと、お前の名前なんだっけ?〝モブキャラA子〟でいいか!それで、何なんだよ!?」
モブキャラA子って、いくらなんでも、そりゃあんまりじゃないの!?この子が可哀想じゃん。
「押忍!私の名前は、
「その名前で合ってるんかーい!!」
私は、思わず藻部伽羅 永依子にツッコミを入れる。
「総長。これから『機動〇士Gun〇am GQuu〇uuuX』の放送が始まるので、ウチら6人は帰らせてもらいたいのであります!」
「何ぃ〜?」
果音は、藻部伽羅 永依子を睨みつける。
そりゃそうよね。総長が体張って勝負しようとしてる矢先に、アニメ観たいから帰るなんて言い出したら怒るか。
「バカヤロー!早く言えよ!アニメはリアルタイムで観るのが1番良いに決まってんだろーが!特に『機動〇士Gun〇am GQuu〇uuuX』は面白過ぎるしな!そういう理由なら早く帰んな。そういや録画予約すんの忘れてたぜ。今日の放送回をBlu-rayに焼いてアタイに寄越せよ?」
〝ズコー!〟
私は、果音の言葉を聞いてズッコケる。
「帰るの許してやるんかーい!!アンタはホンマに暴走族の総長かいなー!?」
ズッコケたまま、私は果音にツッコミを入れる。
「押忍!ありがとうございます!Blu-rayもちろんであります!お先に失礼します」
〝パラリラ〜♪パラリラ〜♪〟
藻部伽羅 永依子たち6人は、それぞれの原付に乗って帰っていった。
廃病院に残ったのは、私と果音にサユリ&チヨコの4人だけになった。
「あれ?そう言えば『機動〇士Gun〇am GQuu〇uuuX』って、
私は、果音に放送日の矛盾をツッコむ。
「来夢、オメー知らねーのか!?都内で、この超鳴井界町だけは金曜の深夜放送なんだよ!」
「な、何で、この町だけ放送日が違うのよ〜!おかしいじゃない?」
「そんな事、アタイが知るか!それじゃ今度こそ始めるぜ!サユリ、タイム測れよ」
「任せてくださいスよ総長!それじゃ行きまスよ?ヨーイスタートっス!」
〝ダダダダ!〟
サユリの合図とともに、果音は廃病院に突入する。
「おーい!お前ら見えてるかー!」
果音が、1階の端っこの窓から顔を出して手を振る。
って、随分早いな!まだ中入って2分も経ってないんじゃない?
これは、私も気合い入れていかないと負けるかも!?
……それから、10分くらいが経過したのかしら?まだ2階の窓から果音が顔を出さない。
「なあ、サユリ。総長、いつもこんなに遅くないすヨね?」
「自分もそう思ってたところスよ。変スね?」
サユリとチヨコも、おかしいと思い始めたみたいね。まさか、果音に何かあったのかしら?
「キャアアー!!た、助けてー!!」
その時、廃病院の中から、果音の悲鳴が聞こえてきた!
「え?え?そ、総長!な、何があったんスか!?ど、どどうすれば、い、いいんスかー?」
「あ、あわわ!わ、分かんないすヨ?お、お巡りさん呼んだ方がいいんすかヨ?」
今の悲鳴を聞いてサユリとチヨコは、すっかり動揺してるようだ。
警察を呼ぶ?今から連絡してもこんな町外れの廃病院まで、すぐに来れるわけないじゃない。
もしも、その間に果音が取り返しの付かない事になったら、どうすんのよ!?
「サユリ!果音を助けに行くわよ!」
私は、サユリに声をかける。
「え?自分ら達でスか?」
「今の悲鳴、ただ事じゃないの分かってるでしょ!警察来るまで待ってたら、果音が無事じゃ済まないかもしれないじゃない!だから、果音の所に早く行くためにも、アンタに中の案内してもらいたいのよ!」
「う、うー!わ、分かったスよ!来夢、自分に付いてくるッス!」
サユリは、玄関に向かって走り出す。
「チヨコ!アンタは何かのために、ここで待ってて!警察への連絡もお願いね!」
「了解すヨ!来夢、総長とサユリの事を頼んだすヨ」
「OK!何とかしてみせるわよ!」
私もサユリの後を追い、廃病院に突入する。
……サユリの先導で、私はあっという間に2階の廊下にたどり着いた。
「た、助けて!助けて!」
間近で果音の悲鳴が聞こえたので、スマホの懐中電灯を使い、その方向を照らす。
……私達が見たのは、涙ぐむ果音を羽交い締めにしてる〝長い黒髪の女性看護師〟であった!
な、何で、こんな廃病院に看護師がいるの!?
え?よく見ると、
それに、随分顔色が悪い……というより、ゾンビみたいに真っ青だ。
ま、ま、ま、まさか、こ、こ、こ、この、か、か、
だ、だから足が無いの?ま、周りの火の玉は〝人魂〟ってやつじゃないでしょーか??!!
う、ウソでしょー!!?
「……Youたーち、この女の
幽霊の女性看護師は、果音を羽交い締めしたまま私達にそう言った。
……っていうか、何で幽霊のくせに‶ルー語〟で喋ってんの!?
い、いや、そんなことよりも、ちょっと待ってよー!この作品は〝SFコメディー〟じゃなかったっけ?
いつから〝ホラー作品〟になっちゃったのよー!?
どうして、ギターの材料を探してだけなのに幽霊に遭遇しちゃうのー!!??こんなジャンル違いの展開は反則だわさー!!!