冷たい北風が住宅街にあるアパートの外壁に吹きつける昼下がり、
スーパーの購入品を入れるために使われる白いプラスチック袋を手にひとつ提げ、肩からはショルダーポーチが小さく揺れる。スーパーのレジ袋には、豆を甘辛く煮た調理済み総菜やカット野菜、すぐ食べられるようローストされたラムの肉類、調理しなくてもいいミックスナッツに果物としてリンゴ、レイと同じくミコトさんが好きらしい紙パックの葡萄ジュース、それからスタンダードに食パンなど、気取らない一人暮らし向けの食品が詰められていた。
ミコトの家に行く前にスーパーで買い物をすると言われてついていって、そして
「もう少しで着くわよ」
すぐ横を歩く
つくば市の郊外、低い住宅とアパートがまばらに並ぶ、いかにも大学生がそこら中に仮庵として住んでいるような建物の多い住宅街の通りの奥――地面の砂利が凍りかけたように白く乾いた敷地の端に、そのアパートはあった。どうやら築年数の浅い鉄骨造りらしく、二階建てで白い壁を見せた簡素なアパート。お世辞にも鉄筋コンクリートでできたマンションのように重厚たる佇まいとはいえないが、少なくとも外観はこざっぱりとしていて清潔な印象を受けた。
「……ここ?」
――レイくんのお兄さんの、鳥神ミコトさん。
――どんな人なんだろう。
ピンポーン
どさっ。
何かが転げ落ちるような鈍い音が、明らかに部屋の内側から響いてきた。
「……えっ?」
カチャリ
――えっ? 合鍵まで持ってるの?
――なんだか
玄関の奥――うっすらとした薄明かりの廊下の向こうにある暗がりの部屋には、倒れている人間の手が覗いていた。
スカートを揺らしつつ、薄暗い廊下を抜けて入った室内。カーテンも中途半端に閉められていて昼間だというのに光が乏しい。
しかし、閉じられたカーテンの隙間からは、まるで天へと登る階段のように太陽の光が斜め向きに差し込んでいて、さながら神の住む神殿のようなそこはかとない神秘的な雰囲気を醸し出していた。
そのベッドの置いてあるフローリング床の部屋の様子を見て、
「凄い量の本……」
壁沿いには天井まで届きそうな本棚が立てられていて、そこには分厚い背表紙がひしめいていた。
タイトルの言語も日本語だけでなくさまざまな言語の題名が混ざっていた。英語、ドイツ語、スペイン語、中国語、ラテン語らしきものさえある。
日本語の題名で中学生の
そのどれもが、読もうとする気を瞬時に挫くほど、難解な雰囲気を放っていた。この部屋の住民は、とにかくとてつもなく勉強家で、古今東西あらゆる書物を読もうとしていることが、
しかし、いまはこの仮住まいの宿に住むその者の容態の方が重要であった。
今、美少女姿の
そのミコトというレイの兄と思しき男性はカジュアルウェアの上に科学者が着るような白衣を着ており、ミディアムの黒髪が乱れていた。眼鏡も何もかけていないその眼を瞑った顔は上を向いたまま動かず、その頬はやせこけ、顎には無精髭がうっすらと生えている。
冷えた床に両脛をつける形で座った
「ミコトさん……?」
その頭を手で支えている
その声に反応するように、仰向けになった男のまぶたが薄く開いた。
裸眼のその目は虚ろで、焦点が定まっていなかったが、それでもどこか意識の芯だけは残っているように見えた。その、
「……お腹……すいた……」
第一声は、あまりにも日常的な言葉だった。
「……なにこの人」
そんなことを思わず呟いた
そしてこれが、レイと