あちーとみんな口々に言っている。甲子園はとにかくあちーのだ。
俺は、陽炎で波打ってるマウンドを見てやっと戻って来たと心臓がドクンドクンとした。
洋は、初戦から躍動した。
球のキレが良い。
面白いように球がミットに吸い込まれていく。
野球の神様に祈りを捧げた。
最高だよ!この景色。
この瞬間は、誰にも譲らない。
あっという間に甲子園は終わった。
優勝した。
夏を制した。
俺は、神様、まだまだ投げたりないんだ。
今の瞬間の俺を目に焼きつける。
「終わっちゃうのか。」
と俺は寂しげに呟いて甲子園のマウンドを去った。
俺は、ドラフト会議でヘリウスから指名されなかった。
メジャーリーグからオファーが全球団から来たが断った。
野球浪人という孤独な道を選んだ。
来年こそ、ヘリウスに指名される事を待ってフリーターになってビデオショップでバイトしながら地元の草野球チームに入った。
毎日が、楽しかった。
みんな、それぞれの未来という道を選んだ。
白球を追いかけ映画を観る一年間を過ごした。
再びドラフト会議が開かれてプロ野球全球団から洋は一位指名を受けた。
見事にクジで、ヘリウスが洋を勝ち取った。
俺は、記者会見で笑顔を見せた。
ここから始まる新しい野球人生。