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第34話 一夜明けて

§サンドラ視点§

 別邸に戻る馬中の姫様は、ずっと奥方様に抱き着いたままで、決して離れられることはなかった。


 別邸に着いてからも夕飯にも手を付けられず、食事の後もご自分の部屋へ戻らず奥方様の部屋へ、そのまま部屋から出ることはなかった。私は付き人なので傍に控えていたけど、震えながら塞ぎ込む姫様を見ると、あの場で動けなかったことを悔やんでしまう。


(私達が不甲斐ないから……)


 ベッドに入って暫くすると、奥方様が私に視線を向けてから『コクリ』と頷かれたので、一礼をしてから部屋を後にする。


 部屋から出ると、ファビオ様と4人の護衛が私に気づいて近寄ってくる。5人はずっと出てくるのを待っていたようだ。


 ファビオ様が慌てて話しかけてきた。いつも冷静なお方がこれほど動揺しているとは……、本当に姫様は大切な存在なのだと思った。


「サンドラ、リディの様子は?」

「姫様は、たった今眠られました。奥方様が居てくださって良かったです」

「そうだな。守ることもできず情けない限りよ」


 姫様を守る役目を果たすことができず、下を向き落ち込むファビオ様に、アンドレアスは『ポン』と肩に手を置いた。


「領地へ戻ったら鍛え直しだな」

「あぁ、戻ったら厳しく鍛えてもらおう」

「「おぉ!」」

「さぁ、私達は明日に備えましょう。試験で結果を残すことが今の私達の任務です」

「「だな」」


 今の自分にできることに集中する。それが未熟な私達にできる唯一のことだから……


§メインストーリー§

「ママッ!」

「ママはここに居るわよ」


 目を覚ますと、お母様に抱きしめられていると判って安心した。


「良かった……」


 お母様が無事だったことを心から安心すると、昨日の出来事を思い出した。


(私のせいで、ファビオは人を傷つけてしまった……)


「リディ? 気分はどう?」

「大丈夫。寝たら少し楽になったよ」

「昨日はごめんなさいね。辺境伯家に手を向ける者がいるとは思わなかったから……、リディに怖い思いをさせた王家には、キッチリと責任を負わせるわね」

「う、うん」


 お母様も昨日のことを気にしているようだ。まさか、王家の使いの者が辺境伯家にあの態度を取るとは、貴族に疎い私でも思ってもいなかったから仕方がない。お母様はかなり怒っていことから、あの場にお父様が居なくて良かったのかも知れない……。


「もし気分が優れないなら、今日の試験を先延ばしにしてもらうわよ?」

「ううん、大丈夫だよ。特別扱いはされたくないから、ちゃんと試験を受けるよ」

「そう、それなら試験の準備をしないといけないわね。サンドラを呼びなさい」

「かしこまりました」


 私が試験を受けると伝えると、お母様のメイドがサンドラを呼び、入学試験に向かう為の準備をしたのだった。



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