サンドラに身支度を手伝ってもらうと、優れなかった気分も多少は楽になり、朝食を取るために食堂へ向かった。
「おはよう」
「「!?」」
私が食堂に入って挨拶をすると、ファビオを含めた全員が驚いた様子だった。今日の武術試験への参加は無理だと思っていたのかな? 私のことを心配そうに見るファビオ達に対して、全く問題ないことと武術試験を受けると伝える。
「どうしてそんな顔をしてるの? 一晩寝たら落ち着いたから大丈夫だよ。早く食事を取らないと試験に遅れるわよ?」
「リディ、本当に大丈夫なのかい? 僕が目には、まだ顔色が良くないよう見えるんだけど……」
「それは、お腹が減ってるからだよ」
そう、私は昨晩から何も食べていない。お腹に手を当てて『くすっ』と笑みを浮かべながら伝えたけど、それでも不安なのか表情は曇ったままだった。
「リディが大丈夫と言うのだから、大丈夫に決まっているでしょう? 学園内のことはあなた達に任せるけど大丈夫よね?」
私から少し遅れてお母様が食堂にやって来て、試験へ向かうことを伝える。私とお母様の決めたことに周りが反論できるわけもなく、5人は『はい』と返事をしたの。
そして、朝食のあと高等科学園へ向かう為にエントランスへ向かうと、そこには昨日までは居なかった一人の女性が馬車の前に控えていた。私が出てくるのが判ると、その女性は両手を広げたまま近寄ってきて『ギュッ』と抱きしめられたの。
「リディ、大きくなって別人かと思ったぞ! 昨日のことは義姉上から全て聞いた。私が護衛に付かなかったことで、怖い思いをさせてしまい済まなかった」
「えっと、アンジェラ叔母様なの?」
「そうだよ。前に会ったのは赤子の頃だから覚えてなくて当然だね」
「叔母様、宮廷騎士団の任務があるのに、貴重な時間を割いて頂いてありがとう」
「ふふっ、リディは本当に天使のようだ。レイバック辺境伯家の至宝より大切なものはない。王家が相手でも必ず守るからね」
宮廷騎士団第二師団長を務めるアンジェラ叔母様の護衛もあって、高等科学園へは何事もなく到着。そして2日目の武術試験に臨んだの。
§アンジェラ視点§
レイバック辺境伯家から連絡が入り、義姉と姪が襲われたことを知った。高等科学園の入学試験で王都に来てると聞いたが、辺境伯家に手を出す者は居ないと思い、護衛に向かわなかったことを後悔した。
翌朝、姪を護衛する為に別邸へ向かうと、兄様から手紙で聞かされた通りの天使が、いや姪のリディアーヌが現れた。この天使に怖い思いをさせたのかと思うと、王家への怒りが込み上げると同時に、護衛に付かなかったことを深く後悔した。
(二度とリディに怖い思いをさせない!)
そして、私はリディの入学試験を終えたら、宮廷騎士団を辞めることを決意したのだった。リディを怖がらせる王家に仕えるなど絶対にありえないことだからだ。