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第39話 模擬戦②

 ブルース先生は次々と模擬戦で勝利をあげて、残ったのは私を含めた十傑のみとなった。入学したばかりの生徒を相手に、大人げないと思えた。


(ゼシカたちまで負けたら、少し懲らしめちゃおうかな?)


「新入生なんだからこんなものか、次から十傑だから少しは楽しませてくれるよな? マリアンヌ上がれ!」

「はい!」


 緊張した面持ちで闘技場へ上がったマリアンヌは扇を構え、ブルース先生が双槍を構えたところで、ブルース先生と十傑との模擬戦が始まった。


 マリアンヌが扇に風の魔力をまとわせると、そのまま扇を水平に振った。すると風の刃が発生してブルース先生を襲ったけど、右手の槍を軽く振って風の刃を打ち消すと、同時に左手の槍に魔力を込めて突く動作を取る。


『ドッ!』


「きゃっ!」


 ブルース先生の槍から衝撃波が放たれ、マリアンヌさんは扇を広げて防御の姿勢をとったんだけど、威力を見誤ったようで受け止めきれずに、場外まで吹き飛ばされてしまい、尻もちをついたところで勝負あり。


「参りました。防げると思ったのですが無理でした……、見極めが甘かったですね」

「ははっ、これでもこの学園を次席で卒業してるからな、新入生なら受け切れなくて当たり前だ。扇から発生させた風の刃は見事だった。次は九席のリオネルだな、闘技場へ上がれ!」


 マリアンヌさんを一蹴したあと、休憩を取ることなくリオネルを呼ぶ。リオネルは自信満々な表情を浮かべながら闘技場へあがり、豪華な鞘から剣を抜くと、天にかざしてからブルース先生に剣を向けて声をあげた!


「ふん、これは聖剣ラムダだ。俺の一撃を防げるなんて思うなよ?」


 おぉ、なんとリオネルは聖剣の所持者だったみたい。流石はグリエル王国の第一王子だね! 授業が終わったら、聖剣を見せてもらえないか聞いてみようかと思った。


 ところが、ブルース先生は面倒くさそうな顔をしながら、聖剣ラムダを構えるリオネルに向かって、ダルそうに開始の声をかけたところで模擬戦を始める。


「面倒くせぇ〜、始めるぞ」

「行くぞ!」


 リオネルは聖剣を上段から振り下ろすと、剣先から衝撃波が飛んだ。聖剣ともなると、魔力を込めなくても衝撃波が飛ぶものなのかと感心していると、ブルース先生は右手の槍を前に突き出して、マリアンヌの時と同じように衝撃波を相殺した。リオネルは自慢の一撃を簡単に相殺されて驚くと、ブルース先生は一瞬生まれた隙を見逃さず、一気に間合いを詰めてリオネルの首元へ槍を寸止めすると、呆気なく決着がついたのだった。


「馬鹿な! 聖剣ラムダの一撃だぞ? そんなことありえん!」


 ブルース先生は、悔しがるリオネルに『はぁ~』とため息をついてから、本当に面倒臭そうに話しかけた。


「あのな〜、ラムダは聖剣ではなく魔法剣だろうが! 本来の魔法剣は、魔力をまとわせることで威力を増強させる代物なんだ。今のお前には使いこなす技量が圧倒的に足りていない。訳の判らない言葉を口に出す前に、もっと鍛錬に励めよ!」

「ぐぬぬ……」


 リオネルは歯を食いしばりながら悔しがっていた。ただ圧倒するだけではなく、ちゃんと的確なアドバイスもするんだと感心していると、次の生徒に声をかけたのだった。


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