昼食を済ませると第5闘技場へ向かう。闘技場に併設されている更衣室で着替えようとしていると、同じ十傑のマリアンヌがやってきたので、声をかけてみた。
「マリアンヌさんも授業に出るんだね」
「……、えぇ、先生から直接指導を受けれる良い機会なので」
「そうだよね! 楽しみだよね」
「そうね」
私が平民だからなのか、素っ気ない態度で接してくるように感じた。アルフォンスが言ってたけど、グリエル王国の平民への差別は酷いのかな? いちいち気にしても仕方ないので、私は両手を広げて従者たちに着替えを任せていると、さっきまで興味を示さなかったのに、なぜか私の着替える様子を『ガン見』してきた。
「ん?」
「あっ」
私が見られていることに気づいたので、マリアンヌさんに顔を向けて首をかしげると、『プイ』と視線を逸らしてそそくさと着替えを済ませて、第5闘技場へと向かっていったのだ。
(平民なのに自分で着替えなかったことが、気になったのかな?)
§マリアンヌ視点§
午後の武術の授業を受けるために、第5闘技場に併設された更衣室へ入ると彼女が居た。グリエル英傑学園の長い歴史のなかで、初めて平民からの首席合格者となったアリス.フェリシアだ。この世界では見たことのない艶のある黒髪に、吸い込まれそうな金色の瞳をした、美の女神ヘルメス様かと思うような、超のつく美少女に思わず見惚れてしまう。
「マリアンヌさんも授業に出るんだね」
「……、えぇ、先生から直接指導を受けれる良い機会なので」
「そうだよね! 楽しみだよね」
「そうね」
向こうから話しかけてくれたのに、緊張してまともな会話をすることができなかったため、かなり悪い印象を与えたかも知れない……。
会話が途切れると、アリスは両手を広げて従者たちに着替えを任せたのだけど、服を脱いだその姿が視線に入ると、その美しさに息を飲んで固まってしまった。
透き通るような白い肌に、整った双丘とくびれたウエストに張りのあるヒップは、とても同級生には見えないものだった。
(ヤバイ! 同性なのに鼻血が出そう……)
思わず『ガン見』してしまったことで、私の視線に気づいたアリスはこちらを向いて首をかしげた。惚ける顔を見られたと思って、すぐに視線を逸らして慌てて第5闘技場へと向かったのだった。
§メインストーリー§
着替えを済ませてから第5闘技場に向かうと、既にブルース先生が軽装備姿で生徒の到着を待っていた。余裕を持って来たつもりだったけど最後だったみたい。セイレーンさんは更衣室で見かけなかったけど、いったいどこで着替えたんだろう?
なんて思っていると、ブルース先生が午後の授業の開始を告げる。
「よし、全員揃ったみたいだな。参加は自由と言っても、俺と模擬戦ができるのだから十傑たちが来て当然だな。では、これより模擬戦を始めるぞ!」
「「よろしくお願いします」」
ブルース先生との模擬戦は序列の下から順番に行われたけど、打ち合うことはなく一瞬で勝負がついた。教師の威厳を見せつけることで、優位に立とうとしてるのかな? もっと打ち合ってあげれば良いのになんて思えたのだった。