リューネに勝利したブルース先生は、真顔のまま大きく深呼吸してから口を開いた。
「驚いたな。例年の新入生なら余裕で首席だっただろうに……、それが四席とは運が悪いとしか言いようがないな」
「問題ない。アリス様の居ない学園になんて興味はないもん」
ブルース先生がリューネに『例年なら余裕で首席だ』と伝えたけど、本人はそんなことに興味がないようで素っ気なく返事した。
「ははっ、首席に興味はないか……、次は三席のゼラーシュカだな」
「はい、よろしくお願いします」
ゼシカはゆっくりと闘技場にあがると、刀弓を構えたところで模擬戦が始まった。
ブルース先生は、ゼシカが弓を射る動作に入る前に間合いを詰めると、軽い突きを放つことで矢を射ることを封じられる。弓使いにとって近接戦闘は圧倒的に不利で、刀弓のリムブレード部分を使ってなんとか突き捌いていく。
「この模擬戦で弓は相性が悪かったな」
「そのようですが、私は弓を射るだけではありませんので、全く問題ありませんよ」
ブルース先生の言葉に動じることなく、突きを捌きながら身体を瞬時に回転して、刀弓のリムブレード部分で回転斬りを放った。
『シュッ』
『ガキッ!』
「なるほど、弓だけじゃなくて刀としても使えるのか、油断してたら危なかったかもな」
ブルース先生は油断することなく、ゼシカの一撃を槍で受け止めた。ゼシカはすぐに矢を手にして、弓で射るのではなくそのまま矢で突きを放つも、ブルース先生のバックステップにより躱された。回避行動はゼシカの予想通りだったようで、距離が離れたことで弓を構えて矢を3本射った。
『シュババッ!』
『ガッ、ガッ、ガン!』」
ブルース先生は左右の槍で矢を防ぐが、ゼシカは既に上に向かって矢を射っていた。
『ヒュン、ヒュン、ヒュン……』
『ガッ、ガッ、ガキィ!』
ブルース先生は、上から降り注ぐ矢を防ぐことに気を取られていると、ゼシカは腰のホルダーに収めていた短剣を投げる。
「そこっ!」
『シュッ』
「うぉっと、危ねぇ!」
ブルース先生は瞬時に上体を反らし躱したけど、上からは大量の矢が襲ってくる。
『カッ、カッ、カキィ!』
咄嗟に槍を回転させて、降り注ぐ矢を防ぎきったところへ、ゼシカは間合いを詰めてリムブレードで斬りかかる。
「これで!」
「甘いっ!」
この動作は予測していたようで、槍を思い切り振り上げリムブレードを弾くと、ゼシカの首元へ槍を寸止めしたところで決着がついた。
「参りました」
「ふぅ~、近接戦闘でここまで戦える弓使いを、俺は見たことがないな。冗談抜きで見事な戦いだったぞ」
「そうですか。次は必ず勝ってみせます」
「おぅ、すぐにでも勝てるようになるだろう。楽しみにしてるからな! 次は次席のアナスタシアだな!」
「はい、お願いします」
アナは落ち着いた様子で闘技場へ上がり、レイピアを構えたところで模擬戦が始まったのだった。