ブルース先生とアナの模擬戦が始まった。
開始早々にアナは左手でナイフを投げて、ブルース先生の不意を突く行動に出た。
『ビュッ』
「おわっ! いきなり仕込みナイフかよ……、暗殺術の使い手なのかよ?」
ブルース先生の言葉なんて聞いてないのか? 無言のままレイピアで高速の突きを放つ。
「シュッ、シュシュンッ!」
「カッ、カッ、シュバッ」
「くっ……、なんて速さの突きだ! 捌き切れねぇ……」
アナの目にも止まらぬ素早い連続の突きに、流石のブルース先生も全てを捌くことはできずに、小さな傷を負ってしまうが、アナは突きの速度をさらにあげていく。
『シュッ、シュシュン、シュシュシュン!』
「ぐっ……、なんて速度なんだよ。これを捌くのは不可能だ!」
ブルース先生は手数で不利だと理解し、捌くのを諦め槍を高速回転させることで、超高速の突きを防ごうとした。
『ブン、ブンッ、ブンッ……』
高速回転する槍が、アナの突きを全て跳ね返それると、アナはレイピアに魔力を浸透させると、ここにきて初めて口を開いた。
「
『ボワッ!』
アナのレイピアから炎の獅子が現れ、ブルース先生を囲みながら襲いかかっていく。
「何だと! 武器に魔法を纏わせたのか!?」
炎の獅子がブルース先生に届くと思った瞬間、アナはレイピアに魔力注ぐことを停止すると、瞬時に炎の獅子は消えていった。
「あちっ、これは完全に俺の負けだな……。まさか、新入生相手に一方的に押し切られるとは思わなかったぜ」
「反撃の隙を与えると、技術戦に持ち込まれますからね。そうなると分が悪いので、最初から全開で押し切ることを考えていて、止められれば私が負けたと思います」
「それでもだ。軍隊や騎士団の猛者でも、俺を押し切るなんて普通はできないんだぞ? 学生なんて辞めてどちらかに入隊すれば、すぐに英雄になれるんじゃないか?」
ブルース先生は、アナの強さは学生の範疇を超えていると言って、軍隊や騎士団に入ることを勧めた。普通なら喜ぶところなんだろうけど、アナは冷めた表情で返事をしたのだった。
「私の力は、アリス様をお守りするためのものであって、それ以外のために使うつもりはありません」
「そ、そうか……、最後は首席のアリスだな」
ブルース先生が私を呼んだけど、アナとの模擬戦で小さな傷を負っているのと、従者3人を相手にしたことで疲れが出ているようだった。私は万全の状態の先生と模擬戦をしたいので、回復をしてもらうことにした。
「は〜い、模擬戦を始める前に、これを飲んで元気になってくださいね」
私は返事をしながら闘技場に上がると、
「お、おい、ハイポーションだぞ? 本当に良いのか? かなり貴重な物なんだぞ?」
「大丈夫ですよ、ハイポーション程度ならいっぱいあるんだから」
「ハイポーション程度って……、では、遠慮なくいただくからな『ゴクゴク』ぷはぁ~、すごい効果だな!」
「そうでしょ! 私の自信作なんだよ。先生も元気になったみたいだし、模擬戦を始めちゃおう!」
「おう、最初から全力で行くぞ!」
私が双剣を構えたところで模擬戦の最終戦が始まったのだった。