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第45話 リオネル襲来

 模擬戦が終わると、私たちは更衣室に併設されているシャワーで、軽く汗を流して着替えを済ませた。留学生や地方から通う生徒たちとは違って、私は王都に住んでるので屋敷へ帰ろうとすると、いきなり呼び止められた。


「おい女!」


「そこの女!」


 なんか叫んでる奴がいると思いながら歩いていると、私たちを数人の男たちが取り囲んだのだった。早く屋敷へ戻ってのんびりしたいのに、行く手を遮られ少し『イラッ』としたのだった。


「おい、平民! リオネル殿下がお呼びなのに、なぜ足を止めないのだ。無礼だぞ!」


 私を取り囲んだうちの1人が、怒鳴りながら話しかけてきたので、呼び止めたのがリオネルと取り巻きたちだと理解した。ただ、私の名前は『女』ではなく『アリス』なのと、早く帰りたいことを伝える。


「えっと、女って私のことだったの? 私にはアリスと言う名前があるの、女と呼ばれても自分のことだと思わないでしょ? それより早く家に帰りたいからどけてくれない?」

「はぁ? 生意気な平民だな。世界で最も高貴な存在であるリオネル殿下が、平民の名を呼ぶ訳がないだろう! 殿下が声が聞こえたのならひれ伏せば良いのだ!」


 意味不明なことを言ってくる。話すだけ無駄だと思ったので、嫌味を言ってからもう1度帰りたいと伝えることにした。


「運良く王家に生まれただけでしょ? もう1度言うけどさ、私は屋敷へ帰りたいからどけてくれない?」

「リオネル殿下のお言葉をきいてないのだから、ダメにきまっているだろう! お前は馬鹿なのか?」


 うん、これは本当に面倒臭い。私はリオネルたちを無視して、馬車が待っている正門へ向かおうとすると、苛立った取り巻きたちが完全に前を塞いで声を荒げた。


「リオネル殿下を無視するとは不敬だぞ!」


 取り巻きの1人が『不敬』と言ったあとに、全員が腰に帯剣している剣に手をかけた。するとゼシカが私の前に出て、怒りの形相で取り巻きたちに覚悟を聞く。


「アリス様に剣を向けるということは、斬り捨てられても文句はないと言うことだな?」


 ゼシカの言葉とともに、アナとリューネの2人も私の前に立った。そして、ゼシカの隣に並ぶと取り巻きたちを威嚇する。


「ほほぅ、学生ごときの分際で、リオネル殿下の近衛騎士である私の命を奪うだと? 舐めるなよ!」


 取り巻きたちはリオネルの近衛騎士だったのね、ゼシカの言葉に激昂した近衛騎士たちは剣を抜いて、今にも斬り掛かろうすると、ブルース先生が私たちと衛騎士たちの間に入って来たのだった。


「ほぅ、俺の教え子に剣を向けてるってことは、それ相応の覚悟はあるんだよな?」

「ア、アーバイン隊長!」


 リーダー格の騎士がブルース先生のことを隊長と呼び、私を庇ったことに戸惑っているようだ。


「今の俺は近衛騎士団の隊長ではなく、グリエル英傑学園の教師だ。もう一度言うぞ? 俺の教え子に剣を向けるってことは、相応の覚悟かあるんだな?」


 ブルース先生は、私たちへ剣を向ける近衛騎士たちに対し、怒りをを露わにしながら話しかけたのだった。

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