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第54話 ルミナス商会 設立①

 マリアンヌとは、グリエル英傑学園の正門前で別れて、屋敷へと戻る馬車の中で今日の出来事について話をする。


「しかし、貴族社会のしがらみって面倒くさいね。生まれた家の身分で人の優劣を決めるとかさ、そんなことを私は認めることはできないよ。だからルミナスの森では、貴族制度のような身分制度は導入せずに、本人の能力で判断をするべきだと思うの」


 人の優劣は生まれでなく、本人の努力による結果で決めるべきだと思い、ルミナスの森で貴族制度は不要だと伝えるとミネバが応える。


「それがよろしいですね。適材適所に良い人材を配置するのが良いと思います」

「うん、政治的な難しいことは、ミネバとフランシスコに全て任せるよ。私は楽しい毎日を過ごせればいいからね」


 私は楽しい時間を過ごしたいだけなので、難しいことはミネバたちに丸投げする。本当に自分勝手だと思うけど、ミネバは両手を胸に当てると頭を下げながら返事をした。


「仰せのままに」


 話が終わる頃に屋敷に到着する。出迎えたメイドたちに大浴場へ連れて行かれ、湯浴みをして着替えを済ませると、見計らったようなタイミングでペイトンが屋敷を訪れてきた。


 私は三姉妹とともに商談の行われるサロンへ向かうと、既にミネバとフランシスコの2人が、ペイトンの相手をしてくれていた。


「ペイトンさん、忙しいなか時間を割いてくれてありがとう」

「いいえ、学園生活で忙しいにも関わらず、貴重な時間を頂き感謝します」

「アリス様が来られるまでの間に、私たちが大方の内容は伝えておきました」

「ありがとう。じゃあ、商談を始めようか」

「「かしこまりました」」


 今回の商談内容は、ルミナスの森で生産される食料の販売についてだ。米、小麦、芋類などの栽培方法が確立したことで、大量の収穫が可能となった。そこで住民たちだけでは消費しきれない食料を、ペイトン商会を通して販売をしてもらうということ。


「かなりの規模の取引になりますね。流石にこれだけの大量の食料を、我がペイトン商会だけで取り扱うには規模が大き過ぎて、厳しいかと思われます」


 ペイトンは取引の規模が大き過ぎるので、中規模商会のペイトン商会では厳しいと切りだしたが、ペイトンの表情から悔しさが滲み出ていて、商いを志すものとしては大きなチャンスだったからね。


「こちらとしては、信頼できるペイトン商会以外と取引するのは、好ましくないのですが、これは困りましたね」


 ミネバは信頼できるペイトン商会以外とは、取引をしたくないという本音を伝える。


「王都で代理販売をすると、どうしても大商会に睨まれてしまいす。ペイトン商会のような中規模商会が睨まれると、利権を渡さないと潰されてしまいます」

「そんな所にもしがらみがあるんだね。1つ聞きたいんだけど、私達が新たなに商会を立ち上げたらさ、ノウハウなどのアドバイスをしてもらうことは可能かな?」

「アリス様が商会を立ち上げるのですか? ノウハウを教えることは可能ですが、結局は利権が絡んでくると、大商会に睨まれて商売ができませんよ?」


 私が商会を立ち上げると伝えると、ペイトンは最終的に利権が絡むと応えた。まぁ、そんなしがらみは拒絶を使えばなんとかなるので、適当に嘘をついて大丈夫とだけ伝える。


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