ダニエルは有益な情報を一切持っていなかった。ジャミアが直接仕掛け出来なかった時点で、襲撃が失敗する可能性を考慮していたはずだ。捨て駒から自分にたどり着く情報を与える訳がない。向こうは私が学園に通っていることを知っているから、今回の襲撃は失敗に終わったけど、まだまだ優位にたっていると思ってるはず。ただ、呪魂の首輪が効かなかった理由が判らない間は、迂闊に手を出すことはない。向こうは、私から仕掛けてくることはないと、油断しているはずなので、不意を突いてやろうと思った。
(ジャミア、私に手を出した時点で負けなんだよ)
一気に倒してしまうと、いきなり唯一神になってしまうことになりそうなので、今のうちに永遠を過ごそうと思っている者に伝えておくことにした。
「クソ邪神を倒しちゃうとさ、直ぐにこの世界の唯一神になっちゃうと思うの。だから、これだけは伝えておくね。私と永遠の時間を過ごしてもらうのは、ゼシカ、アナ、リューネ、ミネバ、フランシスコに、メイドと守衛の側近たちってとこかな?」
「「はい、それでよろしいかと思います」」
気心の知れた者を指名すると、その場に居た者は賛同の声をあげた。ルミナスの森となる前の拒絶の森時代から長い時間を過ごしてきた者なので、主従関係というよりも大切な家族という感覚を持っている。これからの生活を考えると、誰かを外すなんて考えられなかった。
「みんな、これからもよろしくね。さぁ、邪神ジャミアを葬っちゃおうか!」
「「はい!」」
「あっ、アリス様!」
私がジャミアを葬りに動こうとした時、マリアンヌが声を上げた。何事かと思いながら顔を向けると、その表情はかなり緊張した様子で、大きく深呼吸をしてから真剣な眼差しで声を発した。
「私も側近の方々と共に、アリス様のお傍に置いていただけないでしょうか。アリス様と触れ合う中で、これまでの生き方が一変しました。必ずお役に立ってみせますので、お傍に置いてください!」
マリアンヌが私を慕ってくれていることは、十分に理解しているけど、私の中ではあくまで友人枠であって、永遠を共に過ごす側近には含まれていなかった。なので気持ちは有り難いけど、断ることにした。
「そのことなんだけどさ」
「アリス様! マリアンヌを傍に置くことをお許しください。長期休暇の間、必死に努力する様子をシオンから聞きました。今は未熟かも知れませんが、必ず我々三姉妹と肩を並べてくれると思いますので、どうか末席にお加えください」
私が断りの言葉を伝えようとすると、ゼシカが会話に割り込んできて、マリアンヌを加えるように懇願した。普段ならそのような行為を絶対にしない。そのことに少し驚きながらも、自分の思いを伝えてくれたことを嬉しく思い、ゼシカの思いを尊重することにした。
「ゼシカの思いは判ったよ。マリアンヌ、直ぐに側近という訳にはいかないけど、期待通りの成長を確認できたら側近として迎えるから頑張るんだよ」
「はい、必ずアリス様とゼシカ様のご期待に応えてみせます」
「うん。じゃあ、今度こそジャミアを葬り去りに行っちゃうからね!」
永遠を共にする側近が決まった。後は邪神ジャミアを葬って私の思う世界を作るだけだ。