それからも次々と測定は行われて、いよいよリアの番になった。
俺はリアにエールを送りながら、検査員に誘導される。
そしてリアが魔力測定器の上へと手をかざすと水晶が輝き始める。
「魔力量600です、Aクラスの基準を満たしています。」
そう検査員はリアに伝えると、リアは安堵の表情を浮かべる。
そしてそのまま測定所を出ていき、俺の元にやってくる。
「私は大丈夫でした、ロランお兄様」
リアは嬉しそうに俺にそう報告をしてくる。
俺はリアの頭を撫でながら言う。
「リアなら絶対Aクラスになれると思ってたよ」
「ロランお兄様にそう言ってもらえると、なんだか自信がつきます」
リアはそう言って俺に笑顔を向けてくれる。
本当に可愛い妹だ。
そんなリアに見とれていると、今度はクレハの番になった。
「120番、クレハ、中に入りなさい」
「は、はい」
そう呼ばれると、クレハが緊張した面持ちで測定所の中に入っていく。
(聞いた? あの子、平民らしいわよ)
(平民の分際で入学なんて、身の程を弁えないわね)
(間違いなくCクラスよ)
そんな陰口が貴族達から聞こえてくる。
だが、俺はそうは思わない。
セシルには才能があり、努力もしている。
だから俺はそんな陰口を叩く貴族達を睨みつける。
するとその貴族達は慌てて視線を逸らして、何事もなかったかのように振る舞った。
まあこれで少しは大人しくなるだろう。
「ではこちらの魔力測定器の上に手を」
クレハは緊張しながらも、言われたとおりに測定器の上に手をかざす。
そして水晶が輝き始めた。
その輝きが止まった瞬間、計測員が驚きの声をあげる。
「魔力数、1500です! Aクラスで間違いありません!」
計測員の驚きの声に、会場がざわつく。
(う、嘘!? あの平民が!?)
そう驚く貴族達。
だが俺は驚かない、だってセシルは原作でも魔力数1000ぐらいだったからな。
まあ、この展開は予想できた。
そして測定が終わったのか、クレハがこちらに戻ってくる。
「ロラン師匠、褒めてください」
クレハは嬉しそうに俺にそう報告してくる。
俺はそんなクレハの頭を撫でてやる。
「流石はクレハ、俺の自慢の弟子だ」
俺が褒めると、セシルは顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
うんうん、やはり俺の弟子は可愛いな。
そんなやり取りをしていると、俺の番が回ってくる。
「121番、ロラン、中へ入りなさい」
そう指示され、俺は測定所に入る。
(あの怠惰な王子のことよ、Bクラスが関の山ね)
(ええ、今までサボってきた報いよ)
そんなヒソヒソ話が聞こえてくるが気にしない。
俺は検査員の指示に従い、魔力測定器に手を乗せる。
そして水晶の輝きが消えるとともに、計測員が驚いた声をあげる。
「魔力数、5000……? え、えっと、Aクラスです」
(5000? あの怠惰な王子の魔力が?)
(ま、まさか、何かの間違いじゃないの?)
再び会場がざわめき始める。
まあ、そうなるよな。
俺はそう思いながらも、測定所から出て行く。
すると俺の後を追ってくるように、リアとクレハも出てくる。
「やっぱりロランお兄様は凄いです!!」
そう言って腕に抱きついてくるリア。
ぐほぉ……う、我が妹よ……あ、当たってるよ!
柔らかい物が当たってるよ!
俺は心の中でそう叫びつつも、顔には出さずに紳士的に振る舞う。
「ロラン師匠は、やっぱり凄いです」
そう言って尊敬の眼差しを向けてくるクレハ。
「はは、まあ、たまたまさ」
「本当にたまたまなの?」
俺がそう答えていると、横から会いたくなかった人物が現れる。
第二王女のアリスだ。
アリスは俺に近づいてきて、ジロジロと俺の顔を見る。
「あの怠惰なロランに、なぜ突然魔力が付いたのかしら?」
俺の耳元で囁くように話してくるアリス。
「別に、俺が書庫で魔法書を読んでいたから、その成果が出ただけさ」
俺がそう答えるとアリスは、『ふーん』と言いながら俺から離れていく。
そして俺の横を通り過ぎる時にこう呟いた。
「もし今後私の脅威になるのなら、容赦はしないわ」
そう言い残し、アリスは会場の中心へと歩いて行った。
俺はそんなアリスの背中を見ながら、少し不安になる。
アリスの魔力測定は見ていないが、原作だと確か6000ぐらいはあった筈だ。
「目を付けられると厄介だし、うまく立ち回らないとな」
そう自分に言い聞かせて、俺はリア、クレハと一緒にAクラスに向かうのだった。