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第44話 私の名前はエトラです

「にしても速いな」


 俺は今、馬車の中に座りながらそう呟く。


 アルバラン王国まではかなり距離があるんだが、ギルドの馬は速めに移動をする事が出来る。


(おそらくアデルの軍だと、かなり時間がかかってしまうだろうな……)


 軍が1万も移動するんだ。


 アデルの軍では移動に何日かかるか分からない。


 だから俺は冒険者として、ギルドが用意してくれたこの馬車で移動をしているのだ。


 そんなことを思いながら俺は外の風景を眺めていると、俺の目の前に座っていた女性が話しかけてくる。


「あ、あの、何で仮面を付けているんですか?」


 俺に話しかけてきたのは、魔法帽子を深く被った桃髪の女性だった。


 そして女性の表情を見ると、少し不安そうな顔をしているように見える。


「まあ事情があるんだ、気にしないでくれ」


 俺がそう返答すると、女性は少し疑問に思ったような表情を浮かべながらも、小さく頷く。


 「あんたもアルバラン王国に行くのか?」


 俺はそう尋ねる。すると女性はコクっと小さく頷いた。


 そして女性は俺に向かって口を開く。


「アルバラン王国が陥落すれば、次はハーキム王国の城塞都市が狙われます。城塞都市には私の家族と妹がいるので、私はなんとしてでも守りたいのです」


 確かに最初狙われるのは城塞都市だ。


 王都が狙われる前に、アルバラン王国の城塞都市が普通狙われていく。


 すると女性は、俺に向かって口を開く。


「あの、名前は何というのですか?」


 俺は少し考える。仮面の男は呼びづらい。


 よし、ここは偽名を名乗ることにしよう。


「俺の名前は……カーメンだ」


「な、なんか分かりやすい偽名ですね」


 俺の偽名を聞いた女性はそう言って、苦笑いを浮かべる。


「私の名前はエトラです、よろしくお願いします」


 そう言ってエトラは俺に手を差し出してきた。


 俺はその差し出された手を優しく握る。


「よろしくな、エトラ」


 俺達はそうして握手を交わし、到着するまで雑談をするのであった。

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