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第14話 二人のスキルの現状は?

 マンドラゴラは、食べてみると苦みが強かった。


「つーか手足が微妙に痺れる」


「ッ? タク、タクっ。ごめんなさい、毒抜きする必要があるって話するの忘れてた」


 食べたのが少量だったので、少し休んだら痺れは取れた。


 その時間で毒抜きにゆでて置き、ゆで上がったものを食べると、苦みが薄れ、甘みが強く感じられた。


「ぼたん、毒抜きマンドラゴラ、一口食う?」


「じゃあ一口。んー……。コーヒー系の苦みが先に来て、ねっとりした甘さが後から……?」


「これステーキってかスイーツ系じゃね?」


「かも。でもステーキソースに砂糖とかみりんは良く入れるし、使えないこともないと思う」


「ソースに入れる感じで行くか。バター醤油をベースに……ちょっと待って、冷蔵庫のバターの消費期限いつ?」


「見てみるね。うわ、一昨年」


「あ~ダメだ、捨てよう。くっそ~、バター使えないのデカイ。ちょっとステーキサラダ案一旦やめよう。献立から見直そう」


 一人で鹿肉パクパク食ってた時は、全然消費期限とか気にせず使っていたのだが、流石にぼたんに食べさせるもので、一昨年の消費期限はマズイ。


 そうこう試行錯誤して、最終的に俺たちは、最適な献立案に辿り着いていた。


「カレーだろ」


「カレーだね」


 マンドラゴラの味、変わり種のチョコ感あったので、すりおろして隠し味に使うので行ける気がしたのだ。


 ということで、カレー作りである。ぼたんも手伝ってくれたので、俺は鹿肉解体道具探しのついでに拾ったルーで、カレーを作っていく。


 そうして無事できたカレーをちゃぶ台に並べ、俺たちはともに、両手を合わせた。


「いただきます」


「頂きます」


 二人して食べる。これは……


「……ぼた~ん」


「うん」


「こ~れよ~……」


「うん」


「だ~い成功じゃね~?」


「だね」


 うまい。カレーが美味い! 程よく主張し過ぎない程度に、隠し味のマンドラゴラが効いている感じもする。これはいい! 過去一美味いカレーかもしれない!


 俺たちは一心不乱にカレーを食べ、二人しておかわりを一杯ずつ食べた。


 そうして、食休みタイム。俺たちは並んでゲームしながら、ぽつぽつと話し始める。


「そういやさ、俺ちょっと、自分のスキルの検証したいんだけど、付き合ってくれるか?」


「いいよ。どこでもついてく」


「ぼたんは聞きわけがいいな……。今朝、早朝に起こした奴以外文句言わないじゃん」


「アレは文句と言うより説明書。吸血鬼スキルは、朝は少し弱体が入るから」


「嘘だゾ絶対文句だったゾ」


「ゾの言い方が嫌」


 シンプルな文句を言われたので改める。


「タクのスキル、日用品何とか、だよね。じゃあ近くの街に移動して、日用品漁る?」


「そうだな~。それで行こうか。でもその前に昼寝しようぜ」


「ふふっ、うん。ちょうど私もしたかった。ふぁああ……」


 ということで二人して昼寝する。くか~っと。


 何ともスローライフな行動だ。明日の保証もない代わりに、今の自由を謳歌している。











 ということで俺たちは、昼寝し過ぎて夕方まで寝過ごし、夜に出かけるのも危ないという事で、その日はゲームで一日を潰した。


 翌日。揃っておもっくそ寝坊した午後、自転車を飛ばして街へと移動していた。


「は~いきょだ~らけっ」


「タク、街の方はモンスターが多いから、静かにして」


「ごめんなさい」


 ぼたんから注意されて、俺はお口にチャックする。


 街の方は、見事に人気のない、廃墟だらけの土地になっていた。ビルが林立しているが放置され、草木がアスファルトや石畳から分け入って伸びている。


 俺たちは息を潜めて、マップに従いビルに入る。日用品でも携帯できそうなものがあれば、ありがたく拝借していく予定だ。


 そうして、俺たちは無事モンスターに出会うことなく、目的地の日用雑貨店に辿り着いていた。


「ほとんど手つかずで残ってるみたい。よかったね、タク」


「~~~! っ~~~~!」


「言いつけ守って騒がないの、偉いねタク」


 ぼたんに撫でられる。十一歳も年下の女の子にあやされているのどうなんだろう。俺は無言の喜びの舞いを踊るのをやめる。


 さて、俺はスマホを取り出し、久しぶりに『スキルステータス』画面を開いた。


『スキル名:日用品マスター

スキルレベル:2

スキル解説:日用品の扱いが上手くなります』


トップに出てくる説明表示は、相変わらずこのままだ。鹿で2レべになって以来、レベルも上がっていない。


 基本的にこのスキルは、俺が『この日用品なら、これできそうだな』と思ったことが大体できるスキル……というイメージなのだが。


 それだとどうしてもふわっとしているので、他に情報はないものか。


 と。そこでスクロールすると、下の表記が結構変わっていた。


『研究:包丁 状態:解析過程 Lv.0スキル【包丁致命】

研究:バール 状態:解析過程 Lv.2スキル【合わせ】

研究:クーラーボックス 状態:解析終了 Lv.1スキル【大収納】

???:研究不足

???:研究不足

???:研究不足

……』


「……何か色々追加されてる……」


 見る感じ、個別の日用品ごとで発揮されるスキル? についてが書かれているようだった。


 試しにタップしてみると、各追加スキルの説明が開く。


【包丁致命】

包丁による致命攻撃。対象の弱点を狙う際に発動する。対象の防御力を無効化し、どんなに固い対象でも突き破ることが可能。


【合わせ】

バールによるスタン攻撃。対象に短辺の先端を突き刺すことで発動する。対象に突き刺さっている間、以下の状態異常を付与する。

※スタン

※詠唱不能

※体重軽減

※分析中です

※分析中です

※分析中です

……


「『合わせ』が思ったより強いな」


 二撃必殺じゃん、と思う。バール刺したら相手がスタンするから、後は適当に引き寄せて包丁を刺すだけだ。わぁつっよーい!


 だが、細かい発動スキルの一つ一つが、こうして説明されているのは助かる。


 既存のスキルが分かるなら、新しい日用品探しに専念できるしな。


 俺は追加説明を閉じつつ、他にもどんな戦法があるか考える。


「それ、タクのスキルステータス?」


 そこで、追記部分がズラリと並んでいる画面を、ぼたんがひょこっと覗いてくる。すると「わ」と驚いた声を上げた。


「日用品スキルって、追加技能多いんだね。でもそっか。攻撃力が低い代わりに、日用品全部で色々なことができるスキルだもんね」


「みたいだな~」


「せっかくだし、私のスキルステータスも見て」


 ぼたんがスマホ画面を見せてくる。


『スキル名:吸血鬼

スキルレベル:32

スキル解説:吸血鬼の能力が使えるようになります』


「ぼたん、自分でこんな画像を作って……。いや、でも分かる。こういうの作るの楽しいよな! オリキャラの設定集っていうか」


「何も悪いことしてないのに惨めな気持ちになるから、フォローするのやめて」


 ぼたんの表情がすんっ、となる。いいぞ。この調子で茶化していれば、いつかは中二病も脱出できるはずだ。


「ちなみに追加技能はこんな感じだよ」


 そう言って、ぼたんは画面をスクロールする。


『研究:不死性 状態:解析過程 Lv.1スキル【即死回避】

研究:不死性 状態:解析過程 Lv.5スキル【止血自在】

研究:不死性 状態:解析過程 Lv.10スキル【末端再生】

研究:不死性 状態:解析過程 Lv.15スキル【仮死蘇生】

研究:不死性 状態:解析過程 Lv.20スキル【四肢再生】

研究:不死性 状態:解析過程 Lv.25スキル【内臓再生】

研究:不死性 状態:解析過程 Lv.30スキル【脳再生】

研究:怪力 状態:解析過程 Lv.1スキル【怪力/初級】

研究:怪力 状態:解析過程 Lv.5スキル【怪力/下級】

……』


 途中まで読んで、研究の種類が『怪力、特殊能力、エナジードレイン』と続くのを見て、俺は歯を食いしばった。


「……このレベルの中二病は、根深いぞぉ……!」


「欠片も信じてくれない」


 甘かった。こんな程度の対応では、まだまだぼたんの中二病は治らないだろう。俺は根気よく付き合っていくことに決める。


 ひとまず俺はスマホをしまって、適当な雑貨を触って感触を確かめ始めた。


 さぁ探すぞぉ! 新たな、マイ・フェイバリット・日用品は一体何になる~!?

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