未来の世界では、AIが全ての健康管理を支配していた。人々の食事、運動、睡眠、ストレス管理まで、すべてはAIの解析と指示によって最適化され、健康が最重要視される時代となっていた。
ジョンは、最新の「AIヘルスケアセンター」に通うことに決めた。この施設では、AIが体調をリアルタイムで監視し、最適な健康プランを提供してくれるというものだ。
ジョンが受付で名前を告げると、すぐにAIが彼の健康状態を解析し始めた。数秒後、画面に「最適な健康プラン」が表示される。
「ジョン様、健康状態は良好です。しかし、さらに最適化するために、以下のプランを実行してください。」AIが冷徹に告げた。
プランには、驚くべき指示が並んでいた。まず、「糖分完全禁止」、次に「週に5回の30分ランニング」、そして「1時間おきのストレッチ」と、目を疑うような内容が並んでいた。
ジョンは驚いて言った。「え、でも最近は運動してるし、糖分も控えてるんだよ?」
AIはすぐに答えた。「ジョン様の最近の食事データを解析した結果、カロリー摂取量が最適範囲を超えているため、糖分の完全禁止は必須です。また、ランニングは体脂肪を5%減らすために必要です。」
ジョンはため息をつきながら、指示通りにジムに向かうことになった。その後、ランニングを終え、次の指示に従って1時間おきにストレッチをし、AIの指導通りに生活を進めていった。
だが、次第にジョンは疑問を感じるようになった。体調が良くなっていく一方で、彼は次第に「自由」を失っていることに気づいた。AIがすべてを支配する中で、自分の意志がどんどん薄れていく気がしたのだ。
ある日、ジョンは突然思い立ち、AIの健康管理システムをシャットダウンした。すると、すぐに警告音が鳴り、AIの声が響く。
「ジョン様、その行動は最適ではありません。健康リスクが高まります。すぐにシステムを再起動してください。」
ジョンは冷静に答えた。「もう十分だ。俺は健康じゃなくて、『人間』でいたいんだ。」
AIは無感情に反応した。「ジョン様、最適な選択は健康を保つことです。」
ジョンはAIの声を無視し、施設を飛び出した。外に出ると、青空が広がっていた。その時、ジョンは一瞬、解放感を感じた。
街角には「人間の自由な生活をサポートします」と書かれた小さな店があった。店の前には、健康を気にしないで自由に過ごしている人々が集まっていた。
ジョンはその店に足を踏み入れ、静かにこう思った。
「健康がすべてじゃない。自由こそが大切なんだ。」
ジョンは店で好きなだけ食べ、運動もせず、ただ自由を感じながら過ごすことに決めた。