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第13話 これが原因かも?


「あのさー、なんか最近あった?」



 放課後、荷物を纏めながら千隼は陽平と直哉に問う。今日は風吹に勉強を教えてもらう日ではなかったので寮まで二人と帰ることにしたのだ。


 原因は友人にあるということだしと千隼は早速、探りを入れる。そんな千隼の行動など知らず、陽平は何かってと首を傾げ、直哉も思い当たる節がないような仕草を見せた。



「ほら、意外なことがあったーとかさ。思わぬことがあったんだよとか」


「何それ」


「何かやってしまったとかない? 僕みたいに風吹先輩と仲良くなったみたいな」


「それを超える話をおれらが持っていると思うわけ?」



 千隼の言葉に陽平は「超えられる話題とかないって」と答える中、直哉が視線を泳がせた。


 様子がおかしいことに気づいた陽平がすぐに「何かあっただろ」と突く。直哉は別にと目を逸らすも、「それ隠せてないよ」と千隼が追い討ちをかける。


 暫くそうやって突いていれば直哉は諦めてはぁと溜息を吐いた。



「この前、告白された」



 直哉の言葉にはぁっと二人は声を上げた。その反応に「だから言いたくなかったんだ」と彼は眉を下げる。


 告白してきたのは同じクラスの宮永修二という宮永製薬の社長令息だった。放課後に呼び出されて告げられたらしい。


 宮永修二といえば、綺麗な金髪を短く整えている美形な生徒で、少々上から目線で態度が大きいという印象だ。千隼自身はあまり話したことがないクラスメイトである。



「どうしたの、それ」


「断ったに決まってるだろ。そしたら、取り巻きに掴みかかられてちょっとした喧嘩になった」



 興味ない相手の告白など同性異性関わらず、断るのが普通だろと直哉は言う。だというのに、取り巻きたちは怒って掴みかかってきたのだと。


 これはこの学園特有のものかもしれないなと千隼は思った。ファンクラブやら、取り巻きやらがいるのは当然みたいなところがある。


 自分が慕っている人間を否定されて怒りを覚える生徒は意外にも多いのだ。



「そこで喧嘩しちゃうのは直哉っぽいなぁ」


「掴みかかられたら、やり返すだろうが」


「いや、普通はやり返さないよ?」



 千隼の突っ込みに直哉は何故と言いたげに首を傾げる。それを見た陽平が「駄目だこりゃ」と呆れていた。これだから喧嘩して教師に注意されることが多いのだろうと察して。


 喧嘩っ早いのはやめなよと千隼が注意するけれど、当の本人は納得がいっていない様子だ。


 これには陽平も溜息を吐き出したので、千隼はまたやらかすだろうなと苦笑するしかない。



「まぁ、好きでもない相手の告白は男女関係なく断るよな」


「千隼と同じく、おれもそう思うわ。直哉、好きな人とかいないわけ?」


「……いるいない関係ないだろ、断るのに」



 いるいないに関わらず、好きでもない相手の告白は断る。直哉の主張に陽平が「その間は好きな人がいるだろー」と指摘した。


 それに彼は黙ってしまったので、千隼は分かりやすいなと思ってしまう。


 そこで千隼は直哉と仲が良いので勘違いされたのではないかという考えに至った。


 直哉とよく話をしているのを同じクラスの彼が知らないわけがない。けれど、それだけでは修二がやったことだと断言はできなかった。


 だが、原因らしいのはそれぐらいしか思い当たらないわけで。仮に修二だとして、嫉妬にかられての犯行という事になるのならどうやって止められるのか。


 直哉とはただの友人です、恋人ではありませんと伝えればいいのかとも思ったが、それはそれでまた問題が起きそうな気がする。


 うーんと考えても纏まらないので、千隼は一旦、それを置いておくことにした。



「まー、直哉の恋が実るかどうかは置いておくとして」


「何だよ、それ」


「だって、アドバイスできるほど僕には恋愛経験はないし」



 恋愛経験がないのに恋のアドバイスなどできるわけないだろう。千隼の主張に陽平は確かにと頷いた。


 経験を元にしたアドバイスのほうが為にはなるだろうからだ。



「僕は直哉の恋を応援することしかできないね」


「だなぁ。おれも応援してるわ」


「お前ら、他人事だと思って……」



 他人事ではあるしという陽平の言葉に千隼が「それは酷い返しでは」と突っ込む。


 とはいえ、自分にできることはないので、頑張ってと応援するしかない。そんな千隼たちの声援に直哉は何とも言えない表情を見せていた。



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