「馬鹿野郎! こいつが高レベルのくせにダンジョンにも行かねえ飲んだくれのアヘアへおじさんなんていうじゃんねえ!」
「ヌマさん、微妙に言い回し変えてもフォローになってないです」
そもそも、おれは飲んだくれじゃないし。
飲んだくれじゃないし。
「ご、ごめんなさい!」
いや、謝られても困るんだけど。
とりあえず彼女自身に悪意はないのだろう。素直に聞いたことを言っただけかもしれない。だとすれば誰が言ったかになるが、まぁ、どう考えてもキミさんだろうな。
というか、関係性から言えばヌマさんが一番怪しいのだが、
「つーか、お前まだあのカスんとこ行ってんのか。やめとけ、やめとけ。またぞろ配信のネタにされるだけだぜ? 飯の種になってやることもねーだろ、くだらねえ」
ヌマさんとキミさんは正直ウマが合わない。ヌマさんの方はキミさんのことを名前で呼ぶことすら億劫だと言わんばかりの態度である。そんな人がキミさんの話題を出すはずもないし、先ほどの発言から考えてシロと判断していいはずである。
「飯の種っていうならおれにとってもキミさんは飯の種なんですよ」
「そりゃそうだろうけどよぉ。銀行員なんだから金貸したらあとは付かず離れずでフェードアウトするのが鉄板なんじゃねえのかよ」
「そんな鉄板はないです。完済してくださるまでお客さんですから」
「そうかい。ま、それならおれもお客さんってことだ」
「だから、いの一番でコーティング依頼したんじゃないですか」
「そういう抜け目ないとこは大したもんだと思うがね。相手は選んだほうがいいぜ?」
「選んだから
会話の間もタブレットの操作は進む。
補助金のお陰でこちらの財布は傷まないが、よくもまぁここまでと言わんばかりのオプションの数々。やはりここに来て正解だった。
いくら補助金がつくと言っても、これだけの
「あ、あの…!」
「あ、ごめん。…さっきの話だけど、よくキミさんのとこに飲みに行ってるから俺のことだと思うよ」
「やっぱり…っ!」
決して無視していたわけじゃないが会話の流れでこの娘を置き去りにしてしまっていた。正直に答えると、彼女はなぜか嬉しそうな表情を浮かべた。分厚いレンズの向こうに輝く瞳が見てとれる。
…いや、おかしくないか?
どう考えてもこんな歓迎ムードの反応されるような会話の流れじゃなかったはずなんだけれども。
少女はそんなおれの思いをかけらも斟酌することなく、とても明るい表情で、
「お願いしますっ! 私たちを探索者失格にしてください!」
そんなわけのわからないことを言い出した。
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