「あ、きたきた。おにーさん、こっちこっち!」
いつの間にかおにーさん呼びになったらしい。
ミキさんが大きく手を振っている。ここはダンジョン入り口近辺。周囲をモンスター対策の警備員がずらりと囲っている。
手には銃火器はもちろん、彼ら独自のデバイスを仕込んでいる。
どれだけ魔力だ妖力だなんだと言おうと近代兵器の需要は無くならない。モンスターはもちろん、低レベルの探索者に対しても有効なのだ。
どうでもいいが、さすがは高校生。おれが息切れしそうだってのに三人とも涼しい顔をしていた。いや、
「えっと、その、アオイちゃん?」
「…ふん」
そんな態度を見かねたのかシズクさんが声をかけている。アオイさんは拗ねたような表情を浮かべたが、すぐにおれと向き合った。
「…ごめんなさい。さっきはいきなりすぎた」
「いや、君の懸念はもっともだ。リーダーとして当然の仕事をしただけじゃないか」
「リーダーって。別にそんなんじゃないし…」
「リーダーでーす。アオイちゃんがリーダーでーす」
「で、でーす」
「ちょっと、今真面目な話してんのっ!」
「いやぁ、ほんとにいいパーティだな。おじさん、なんだか羨ましいよ」
掛け値なしの本音である。
こういう友達同士の気兼ねないやりとりをここ数年経験してなかったことに気づく。関わりあうのはほとんど仕事関係だし、親密になったとは言ってもそれ自体が仕事の延長線上のことだ。
なんだか眩しく感じてしまう。
「さっきも言ったけれど、装備の話は本当だ。君たちがダンジョンで生き抜くためにもっとも重要なものの一つにあたる。けれど、最高の装備にするには君たちの適性を見る必要がある。それは、訓練で見えたものと実体験とは全くの別物だからだ」
「だから、先にこのダンジョンで試すってこと?」
「そうだ。君らも知っていると思うが、この霞城ダンジョンはすでに
「で、でも、モンスターは出るんだよね? だから、気をぬくなって、先生が言ってた」
「もちろん、その心構えは大事だね。でも、それだけ安全性が確立できるなら挑戦もするべきなんだ」
「挑戦って具体的に何をするんですか?」
「難しいことじゃない」
「攻略者たちと同じルートを踏破するんだ。大丈夫、デバイスは過去よりも発展しているし、攻略当時にはなかったコーティングの技術もある。というか、DTUBEにもいくつも動画が上がってるルートだからね。ただし、気を抜かず、その上で自分たちのレベルアップも図っていこう」